『リトル・マーメイド』アリエル役・豊原江理佳 ドミニカにルーツの27歳「直感的に『やりたい』と思った」

ディズニーの実写版映画『リトル・マーメイド』(6月9日公開、ロブ・マーシャル監督)の日本語吹き替え版の主人公アリエル役に抜てきされたのが、ミュージカル女優の豊原江理佳(27)だ。ENCOUNTが独占インタビューした。

映画『リトル・マーメイド』でアリエルの日本語吹き替え版を務める豊原江理佳が独占インタビューに応じた【写真:荒川祐史】
映画『リトル・マーメイド』でアリエルの日本語吹き替え版を務める豊原江理佳が独占インタビューに応じた【写真:荒川祐史】

実写版のアリエル役にはアフリカ系アメリカ人、ハリー・ベイリーが大抜てきされる

 ディズニーの実写版映画『リトル・マーメイド』(6月9日公開、ロブ・マーシャル監督)の日本語吹き替え版の主人公アリエル役に抜てきされたのが、ミュージカル女優の豊原江理佳(27)だ。ENCOUNTが独占インタビューした。(取材・文=平辻哲也)

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『リトル・マーメイド』は1998年に大ヒットしたディズニーアニメーションの実写版ミュージカルだ。アリエル役に新人のアフリカ系アメリカ人、ハリー・ベイリーが大抜てきされたことが話題になったが、豊原の起用もサプライズだろう。

 豊原はドミニカ共和国のミュージシャンの父と日本人の母の2つのルーツを持っている。12歳のときに『アニー』で主役を務めたのを始め、ミュージカルの世界で活躍。留学経験もあって、英語も堪能。今後も国や言語の枠にとらわれない活躍が期待される27歳だ。

「『リトル・マーメイド』は小さい頃から見ていましたし、CDも持っていました。小6のときにはブロードウェイ版も見ていました。たまたまYouTubeで海外版の予告編を見て、ハリー・ベイリーさんの声がとてもきれいで、歌もうまいので、アリエルがそこにいる、と思ったんです。直感的に『自分がやりたい』と思って、すぐに事務所に日本語吹き替え版のオーディションがあったら、受けさせてくださいとお願いしたんです」

 実はそのとき、事務所にはオーディションの告知も届いたばかり。まるで運命のように待っていた。

「オーディションはとても緊張しました。あんまり覚えてなくて、気づいたら終わっていました。いつものオーディションとは違って受かる、受からないっていうよりも、今までの自分をぶつける、私の今までの軌跡を見てほしい、という思いでした」

 では、どんな軌跡を歩んできたのか。父の祖国ドミニカ共和国で生まれ、1歳のときに母の故郷、大阪へ。高校時代はミシガン州への留学も経験し、高校卒業後は単身ニューヨークに渡り、名門演技学校テリー・シュライバーで演技も学んだ。

「まわりのみんなと同じになりたいと思っていました。20歳になって東京に来て、この仕事を始めてから、少しずつ自分の個性が分かってきて、自分はそのままでいいんだと思うようになりました。ですが、オーディションに合格し、収録のときに『リトル・マーメイド』の本編を見たときに、2つのルーツを持っていることにこだわっていた自分を思い出したんです。そして、実は自分にレッテルを貼っているのは自分自身なんじゃないかと気づいてはっとしたんですね」

 大阪での幼少期はいじめも経験した。

「大阪でも、ちょっと田舎というか、その当時は私のような境遇が珍しい存在だという町で育ったんですね。町を歩いていても、いろいろ言われたりして、傷つくこともありました。家族や近しい人がどんなに自分を受け入れてくれていても、子ども心に、『自分は周りの子どもとは違うんだ』とずっとコンプレックスになっていました」

 小学校3年生のときに通ったダンス教室で歌と芝居に目覚め、12歳になった2008年にはミュージカル『アニー』の主演アニー役を射止める。劇中では、アニーがブロードウェイ・ミュージカルを見に行くシーンがあったことから、ブロードウェイでも数々の作品を見て、刺激を受けた。

 アリエルのように外の世界に出たい、とは思わなかったそうだが、高校時代には米ミシガン州への留学も経験し、大きな世界も感じることができた。

「留学先ではどうしたらみんなと仲良くなれるかはよく考えました。いろんな人を観察して、歩き方や話し方、髪型を考えて、とにかく土地の人になじもうとしましたね。20歳で上京したときは解放された気持ちになりました。渋谷には本当にいろんな人がいて誰も私のことを見ないから」

 20歳のときにミュージカル『アップル・ツリー』(16年)に出演。以降、ミュージカル女優としての活動を本格化させ、21年の『ゆびさきと恋々』(21年、田中麻衣子)では『アニー』以来の主演も務めた。

「この作品はターニングポイントになりました。自分が作品を盛り上げないといけない責任感を初めて感じました。そのときにインスタライブで観てくださる方の声を初めて聴くこともできたんです。それまでは、自分がどんな役をやりたいとか、どういうキャリアにしたいか、このオーディション取るとかが全てだったんですけど、自分が誰に、歌を届けているのかが分かったこと、歌を聴いてくださる人たちの日々の生活や想いが分かったことで、初めてベクトルが外に向いたんです。自分の中で歌うことの価値観が変わったというか……」

 本作は、これまでのミュージカルの舞台とは離れて、声だけで人物を表現する新たなチャレンジだ。

「ディズニー・プリンセスはすごくかわいくて勇敢さも持っていて、みんなの理想や憧れのような存在だと思っています。今回のリトル・マーメイドを観たときに、アリエルの持つ弱さや恐れも感じました。私たちと同じ等身大です。この作品は、自分で自分に貼っていたレッテルから自由になって外の世界へ飛び出していく、そんな作品だと思っています。私がそう感じながら歌ったので、見てくれてる人にも届いたらいいなと思います。本当は自分は何をしたいのか、何が好きなのか、どこに行きたいのかを自分に問いかけ、考えさせる作品にもなったと感じているので、みなさんにも是非観てほしいです。私はみなさんの声にならない声になりたいと思っています」。その歌声は今一歩前に踏み出せずに立ち止まっている人たちにも届くはずだ。

□豊原江理佳(とよはら・えりか)1996年4月8日、ドミニカ共和国出身。2008年、ミュージカル『アニー』のアニー役でデビュー。以降、ミュージカルを中心にドラマ、映画で活躍。21年、舞台『ゆびさきと恋々』で主演、22年にはミュージカル『ザ・ファンタスティックス』でヒロインを務めた。今年は未来につなぐものIII『楽園』(6月8日~25日、新国立劇場小劇場)、せたがやこどもプロジェクト2023『メルセデス・アイス MERCEDES ICE』(8月、世田谷パブリックシアター)が控えている。身長156cm。

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