“女性専用”なくし炎上中の渋谷区トイレ 地元女性「歓迎されていない感じがします」

東京・渋谷区が2月に開設した公共トイレに、女性専用トイレがなかった問題が波紋を広げている。「トイレはデザイン性より実用性」との声は高まり、コンセプトに理解を示す賛同の声は少数派だ。地元住民はどう思っているのだろうか。現地で取材した。

議論を呼んでいる東京・幡ヶ谷の公共トイレ【写真:ENCOUNT編集部】
議論を呼んでいる東京・幡ヶ谷の公共トイレ【写真:ENCOUNT編集部】

「男性だって座ってできる」公平性に疑問も

 東京・渋谷区が2月に開設した公共トイレに、女性専用トイレがなかった問題が波紋を広げている。「トイレはデザイン性より実用性」との声は高まり、コンセプトに理解を示す賛同の声は少数派だ。地元住民はどう思っているのだろうか。現地で取材した。

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 問題のトイレは、2月22日から利用が開始となった「渋谷区立幡ヶ谷公衆便所(渋谷区幡ヶ谷三丁目37番8号)」。トイレは3つあり、男性用と共用トイレ(個室)2ブースが用意されている。しかし、女性専用のトイレはなく、渋谷区議会議員の須田賢氏が「渋谷区としては女性トイレを無くす方向性なのですが、私はやはり女性用トイレは残すべきだと思います。皆さんはどうお考えでしょうか」とツイートしたことで物議をかもしていた。

 渋谷区は「THE TOKYO TOILET」と題し、区内17か所の公衆トイレを2020年8月より順次竣工。先進的でデザイン性を重視したトイレにリニューアルしている。幡ヶ谷のトイレもその一環だった。

 場所は中野通りと水道道路の交差点にある。8日お昼ごろ、ENCOUNT編集部が撮影のため訪れると、ちょうど作業員が清掃中で、親子連れが共用トイレを利用していた。トイレは真新しく清潔感がある。また入口のスペースが広く取られているため、この親子連れは二人乗りの電動自転車をトイレの前に止めていた。子どもはヘルメットをかぶったままだ。日中であれば人目につき、防犯上の不安も少ないように見える。

 記者が滞在した10分ほどの間に数人が立ち寄ったが、いずれもトイレを物珍しそうに眺めるだけで、利用することなく立ち去った。スマホを構えて写真を撮る若い女性の姿もあり、別の意味で注目を集めているようだ。

 内部を見てみると、男性トイレは小便器のみで大便器がないのが斬新。目的が“大”なら、隣の共用トイレに移動する必要がある。タクシーや配送ドライバーの駆け込み利用も多い公共トイレで、瞬時にこのことを理解するのは難しいかもしれない。共用トイレの空間は広く、手すりやおむつ交換台、ベビーチェアなどを完備している。バリアフリーに対応し、車いす利用者も使いやすそうだ。一方で、非常用押ボタンは向かって左側の共用トイレにしか見当たらなかった。トイレの裏には公園があり、夏場は水が流れて子どもたちが水着姿で遊ぶこともあるという。

 実際に女性専用トイレがないということは、どのような影響があるのか。

 近くに住む30代女性は、「女性用がないということで入りづらいですよね。基本的に多目的トイレは入らないです。ほかに子連れの人とか必要な人が使うと思うと入れない」と、語った。渋谷区民として税金を納めているものの、「なんか歓迎されていない感じがします。どういう意図があるのか区民に説明する義務があると思います」と釈然としない様子だった。男性用は別に設置してあることについても、「男性用トイレは立ってするからということなんですかね? でも男性だって座ってできる。あえて立ちを用意する必要はないんじゃないか」と、公平性に疑問をつけた。

 ネット上には、「個室に入っている時、音も気になるのに、こんなの安心できない!」と心理的な不安を挙げる声もある。特に長時間の利用後に、ドア1枚を挟んで男性とはち合わせすることに抵抗を感じる女性もいるようだ。盗撮カメラの設置や使用済み生理用品の持ち去りなど、性犯罪のきっかけにつながるようならトイレの設置は暗転することになる。

 トイレにもジェンダーレスの流れが加速する中、防犯面を含めて女性たちの理解を得るさらなる努力が必要かもしれない。

次のページへ (2/2) 【写真】幡ヶ谷の公共トイレの内部
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