通勤車はまさかの国境警備隊パトカー 「冷やかし半分」が本気に…総額400万で仰天復元

神奈川県の男性JP_VicVetteさん(@P71VicVetteJP)の愛車は、2011年式のフォード クラウンビクトリア ポリスインターセプターという米国の国境警備隊のパトカーだ。なんと通勤車として使用している。昨年4月、並行輸入で手に入れたれっきとした本物で、全塗装やカッティングシートでカスタムし、細部まで復元した。日本では珍しいマニアックな車をなぜ購入しようと思ったのか。

愛車は米国境警備隊のパトカー。メキシコ国境付近に配属されていたという【写真:本人提供】
愛車は米国境警備隊のパトカー。メキシコ国境付近に配属されていたという【写真:本人提供】

当初、通勤車の購入条件は「客先にも乗っていける」だったが…

 神奈川県の男性JP_VicVetteさん(@P71VicVetteJP)の愛車は、2011年式のフォード クラウンビクトリア ポリスインターセプターという米国の国境警備隊のパトカーだ。なんと通勤車として使用している。昨年4月、並行輸入で手に入れたれっきとした本物で、全塗装やカッティングシートでカスタムし、細部まで復元した。日本では珍しいマニアックな車をなぜ購入しようと思ったのか。

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 男性は2020年12月に購入契約を結び、翌年4月に納車した。本体価格は220万円ほどだったが、「並行輸入にあたり、輸送費や排ガス検査費用、灯火類などの日本での保安基準適合化のための改造費用が別途100万円+αぐらいかかり、また故障箇所の修理やカーナビ等の取りつけなどを含め、納車時点での支払い総額としてはおよそ400万円ほどとなりました」と、初期費用はかさんだ。

 購入のきっかけは、通勤用の車を探していたためだ。

 ほかに2ドアのシボレーコルベットを所有していたが、足車には不向きとの判断があった。

 2台目の条件に設定したのは以下の5つ。

1)荷物がそれなりに積める
2)客先にも乗っていける(派手すぎないセダン or ステーションワゴン)
3)多少は汚れても構わない中古車
4)できれば他人と異なる少し面白そうな車
5)コルベットは大好きで売る気はないため、2台持ちとなっても維持できる車

「当初は国産のライトバンなどの現実的な選択肢を検討していたのですが、やはり車好きなため、いろいろと検討範囲が広がっていきました。そんななか、出張中に宿泊先のホテルでネットサーフィンをしていたところ、たまたまアメリカの払い下げパトカーの並行輸入を案内するアメ車屋さんのサイトを見つけました。もともとハリウッドのアクション映画が子どもの頃から大好きで、アメリカのパトカーに対する憧れは昔からあったため、すぐに興味をひかれました」

 計画は突如、あらぬ方向に。

「アメリカでは払い下げパトカーが手に入ること、また日本でもそれに乗られている愛好家の方が少数ながらいることは知っていたため、冷やかし半分でお店に問い合わせをしました。ただ、話が進んでいくうちにすっかり魅了されてしまい、当初求めていた足車の条件とはほとんど適合していませんが、購入をしてしまいました」

“プランB”どころか、思いもしない車両が手元に……。パトカーはパトカーでも、いわゆる市警のパトカーではなく、国家機関所属のパトカーだった。マニアにはたまらないお宝だ。

「アメリカ国土安全保障省の一部門である『アメリカ合衆国税関・国境警備局』所属のパトカーだったようです。車両の記録によると、メキシコ国境(ニューメキシコ州)のあたりに配属されていた車両のようですね」

 米国ではパトカーを払い下げるとき、偽パトカーの走行を恐れて、サイレンなどの装備は取り外し、外装のペイントも消す。そのため、男性の車も、「残っていたパトカー特有の装備としては、運転席側のピラーに付いているサーチライトと車両前方についているプッシュバンパー(体当たり用のガード)だけでした」と、シンプルだった。ボディーも真っ白で、実は通勤用にもそれほど違和感のない車だった。

 しかし、車両を細かくみていくうちに、“本物”をとことん復元したい衝動にかられたという。

 パトカーの名残は随所にあった。布シートの運転席に対し、後部座席はビニールシート。これは、米国のパトカーに多い仕様で、汚れを掃除しやすくする目的がある。

 さらに、犯人を収容していた後部座席は、窓枠に鉄格子を取りけていたボルトの跡が残っていた。また、後部座席は室内側からドアの開閉はできず、ドアの外側に隠されたノブを引くとドアが開く仕組みとなっている。屋根にはスピード違反取締用の機材の取りつけに使ったとみれるプラグもあった。

リアガラスの金網撤去跡(ボルト切断跡)【写真:本人提供】
リアガラスの金網撤去跡(ボルト切断跡)【写真:本人提供】

職場で上席社員を“後部座席”に乗せて送迎 「間違っても元パトカーだとは…」

「当初は通勤でも使用するため、真っ白な状態のまま乗るつもりだったのですが、オールペン(全塗装)前の車体に残る国境警備隊のステッカー(識別番号等)の日焼け跡を見ているうちに、せっかく何かの縁で遠い日本までやって来たのだから、オリジナルの状態に蘇らせてあげるのが、この車に対する最大のリスペクトかな、と思いカッティングシートでの再現を行いました」

 インターネットの画像検索で本物のパトカーの写真を探し、アメ車の専門店でカッティングシートを作成。識別番号も同じ番号にしてもらった。「各所の灯火類(パトランプ)については通販で本物のパトカーに使用されるブランドの物を入手し、見よう見まねで取りつけました」。少しずつ、愛車に新しい生命を吹き込むように完成させた。

 実際の乗り心地はどうだろうか。

「かなり大きい車なので、運転する前は非常に緊張しておりましたが、いざ運転してみると、パトカーだけあって非常に見切りがよく運転しやすく、普通に運転できることに驚きました。一方で、ハリウッド映画や海外ドラマで見覚えのある車内の雰囲気、また車内に残るパトカーの装備の跡などを見ると、子どもの頃に憧れていた映画のなかの存在を手に入れることができたという満足感と非日常的を通勤時であっても感じることができます」

 他の車にはない圧倒的な所有感が心を満たしているという。

 職場に乗っていくと、反響はすさまじかった。

「職場の同僚などからはやはり驚かれ(呆れられ?)ましたが、なんだかんだで面白がってもらえております。一定以上の年齢の方に非常に受けが良いです。ただ、上席の方を送迎する機会などもありましたが、後部座席に座っていただく際には、間違っても元パトカーだと言うことはできませんでした」

 ちなみに車体に「Police」等の文字は入っていない。日本の警察との“遭遇”はまだないが、「国境警備隊(Border Patrol)という表記かつ色もパトカーっぽくないことが幸いしているのかもしれませんが、いずれにしても目立つ車なので、安全運転を徹底しております」と心がけている。

 個性あふれる車は人生にもスパイスを与え、希少な車を持つオーナー同士で交流する機会も増えた。

「今までもアメリカ車には乗っていましたが、引っ込み思案な性格のため、イベントなどに出ることはほぼありませんでしたが、この車に乗るようになってからは同じ車種のオーナーさんたちとつながることができたこともあり、イベントなどに参加する回数が増えました。老若男女が興味を持ってくれ、いろいろな方々とおしゃべりすることができ、とても楽しいです。昨年の愛知県で行われたイベントでは会場に向かうまでの道中、同じ車種5台で連なって走ったのですが、日本離れしたフロントガラス越しの光景が今なお印象的です」

“通勤車”の常識を破壊する1台と言えそうだ。

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