山田裕貴が語った苦悩時代 5年前に直面した衝撃の体験「この世界が嫌いになった」

主演映画「夜、鳥たちが啼く」(城定秀夫監督)が公開中の山田裕貴(32)。映画「東京リベンジャーズ」(2021年)のドラケン役で大ブレークし、23年もNHK大河ドラマ「どうする家康」やフジテレビ「女神の教室-リーガル青春白書-」など出演作が目白押しだが、つい数年前まで、“努力しても報われない時代があった”と明かす。

俳優生活について語った山田裕貴【写真:ENCOUNT編集部】
俳優生活について語った山田裕貴【写真:ENCOUNT編集部】

折れそうな心を支えたリトル山田の言葉

 主演映画「夜、鳥たちが啼く」(城定秀夫監督)が公開中の山田裕貴(32)。映画「東京リベンジャーズ」(2021年)のドラケン役で大ブレークし、23年もNHK大河ドラマ「どうする家康」やフジテレビ「女神の教室-リーガル青春白書-」など出演作が目白押しだが、つい数年前まで、“努力しても報われない時代があった”と明かす。(取材・文=平辻哲也)

 筆者が山田裕貴を知ったのは、初の主演映画「ライヴ」(14年、井口昇監督)だった。母親を誘拐されたフリーターの青年(山田)がデス・レースに参加させられるというサバイバルムービー。山田は、その年2月の「ゆうばりファンタスティック国際映画祭」に参加し、恒例の居酒屋懇親会で同席し、大好きだった野球や俳優としての思いを聞いた。あれから8年、山田は人気俳優の一人になった。

「井口監督に『何で自分を選んでくれたのか』と聞いたことがあったんですよ。そうしたら、『オーディションを500人以上見たけど、山田くんが一番主人公っぽくなかったんだよね』って。その言葉ってすごくいいなと思うんです。みんな、そういう人(主人公的な人間)たちばかりじゃないから」

 山田は11年、若手俳優の登竜門と言われる戦隊モノ「海賊戦隊ゴーカイジャー」(テレビ朝日系)のゴーカイブルー役でデビューし、今年で俳優生活12年となる。

「『ゴーカイジャー』の後はバーターでドラマにも出させていただき、自分はもどかしさも感じながら、『オーディションで主演を取ってやる』と息巻いていたんです。そこでつかんだ役が『一番、主人公っぽくなかった』というのが理由だった。それがすごく面白いなと思っています」と振り返る。

 21年には映画「東京リベンジャーズ」のドラケン役が高く評価され、女優の有村架純とともに日経トレンディの「今年の顔」にも選ばれた。しかし、その以前には悔しい思いもした。

「5年ぐらい前ですかね。年に十何本か出演したことがあったんです。年間映画出演ランキングというものがあって、絶対、1位は僕だろうと思ったら、別の人の名前が書いてあって、すごく衝撃を受けたんです。結局、知名度がないと、存在すらしないのか、悲しいなって。この世界が嫌いになった瞬間でした。だから、急にキャーキャー言われたりしても、僕はそんな人じゃないよと言いたくなってしまいます」

 山田は17年には主演する「闇金ドッグス」シリーズ3本、「HiGH&LOW」シリーズ2本を始め、「トモダチゲーム」「あゝ、荒野」前篇・後篇など13本に出演している。今ある活躍は、昨日今日に始まったことではない。

 この「夜、鳥たちが啼く」の主人公である作家の慎一は、売れないことにいら立ちを覚えるが、その気持ちは痛いくらいによく分かるのだという。

「僕が仲良くなって、今でもよくお話する人は、ちゃんと数々の大きな作品で主演をやっている人たち。もちろん、それは皆さんの実力あってこそ。(映画の)慎一じゃないけれども、『なんで、オレじゃないんだろう』『何が足りなかったんだろう』と思う毎日だったんです。つい2、3年前ぐらいまで慎一のような感情を常に抱えていたんです」と明かす。

 本人は謙虚に言っているわけではなく、本気でそう思っているのだ。

「僕は、自分の立ち位置が今、どこにあるかは、すごく冷静に分析しているんです。それって、バラエティーに出ると、一番分かりやすい。共演したタレントさんの反応でも感じるし、番組に出た後は『あれ見たよ』って言っていただくことも増えました」

 デビュー以来、12年間駆け抜けるように役を演じてきた。「休みたい」と思ったことはなかったのか。

「そりゃ、ありますよ。全部やめて、ボーっと海でも見ていたいです。正直つらいし、苦しいし、頑張ったとて、それが簡単に伝わる世界でもない。頑張っても、もっと頑張っている人がいるかもしれない。諦めたら、超楽なんです。でも、もうひとりの僕が言うんです。『やれよ』って。(サッカーの)本田圭佑さんみたいに言うなら、リトル山田が『お前やれ』って言うんですよね」と笑う。どんな役でも、人間の生々しさを感じさせる山田。それは自身が背負った生きた証が見え隠れするから、かもしれない。

□山田裕貴(やまだ・ゆうき)1990年9月18日、愛知県出身。2011年「海賊戦隊ゴーカイジャー」(テレビ朝日系)で俳優デビュー。22年エランドール賞新人賞を受賞。主な出演作に「HiGH&LOW」シリーズ(16~19)、「あゝ、荒野 前篇・後篇」(17)、「あの頃、君を追いかけた」(18)、「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」(21)、「東京リベンジャーズ」(21)、「燃えよ剣」(21)、「余命10年」(22)、「耳をすませば」(22)。「東京リベンジャーズ2」(23)の公開が控えている。

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