「僕の祖父も、二宮くんの祖父も抑留兵だった」 二宮和也主演作プロデューサーが感じた運命

俳優の二宮和也(39)が主演する映画「ラーゲリより愛を込めて」が12月9日から全国公開されている。二宮を筆頭に、松坂桃李、中島健人(Sexy Zone)、桐谷健太、安田顕、北川景子ら主役級が顔をそろえた同作には、いまを生きる人たちに「希望を持ってほしい」という平野隆プロデューサーの願いが込められている。「同じ志を持つ仲間が集まり完成した映画。たくさんの人に観てほしい」と呼びかけている。

平野隆プロデューサー【写真:ENCOUNT編集部】
平野隆プロデューサー【写真:ENCOUNT編集部】

二宮和也主演作「ラーゲリより愛を込めて」プロデューサーに聞く

 俳優の二宮和也(39)が主演する映画「ラーゲリより愛を込めて」が12月9日から全国公開されている。二宮を筆頭に、松坂桃李、中島健人(Sexy Zone)、桐谷健太、安田顕、北川景子ら主役級が顔をそろえた同作には、いまを生きる人たちに「希望を持ってほしい」という平野隆プロデューサーの願いが込められている。「同じ志を持つ仲間が集まり完成した映画。たくさんの人に観てほしい」と呼びかけている。(取材・文:西村綾乃)

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 映画は第二次世界大戦後、ソ連によってシベリアに抑留され、強制収容所(ラーゲリ)で、帰国の日を信じ仲間を励まし続けた山本幡男の半生を描いたもの。1989年に辺見じゅんの同名ノンフィクションを読んだ平野は「前を向く力をもらった」と振り返る。

「60万人もの日本人が収容所に連れていかれ、強制労働を強いられていた。戦争が終わってもまだ戦争が続いている人達がいた、というのが最初に本を読んだ時の感想でした。映画化に向けて動き始めたのは5年ほど前。社会全体が窮屈になったと感じたことがきっかけでした。ラーゲリは閉塞感の極致。その中でも生きようと自分を奮い立たせた山本さんの姿に、僕は前を向く力をもらいました」

 辺見の小説に自分を奮い立たせた言葉が記されていたこと。もうひとつ平野には深い思いがあった。

「僕の祖父はシベリアに3年ほど抑留されていました。撮影中に分かったことですが、二宮くんのおじいさんも抑留されていたと聞き、驚きました。さらに、この映画の宣伝担当者の祖父も抑留経験者と分かり、何か運命的なものを感じました」

 撮影に向けて、祖父が残した資料なども参考にしながら、台本の最終稿を作っていた平野。しかし2020年4月に緊急事態宣言が発出され、分断が加速した。

「誰も想像だにしなかったコロナ禍により閉塞感がますます強まり、今年2月のウクライナ侵攻にはもはや言葉を失いました。終戦後に起きた出来事ではない。いま目の前で他人ごととは思えない悲劇が繰り返されている。いまを生きる人たちにこそ、『どんな状況でも人間らしく生きることの大切さ』を伝えたいと強く感じました」

最新出演作で主演を務めた二宮和也【写真:(C)2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 (C)1989清水香子】
最新出演作で主演を務めた二宮和也【写真:(C)2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 (C)1989清水香子】

 今回メガホンを取った瀬々敬久監督とは、映画「MOON CHILD」(2003年)を皮切りに、「糸」(20年)など8作品でタッグを組んで来た。これまでも「希望」を持つことの大切さを作品に込めて来た。

「希望って、あるのかしらと思うときもあります。でも家族や恋人、妻や子供、仲間たちのためにも信じたい。信じていれば必ず光は見えてくると願うんです。二宮くんが演じた山本も『信じていればダモイ(帰国)の日は来る』と言い続けている。山本は他者を鼓舞しながら、自分に言い聞かせているんだと思います」

 映画の終盤。山本の思いを伝えようと、山本の妻と子どもたちのもとに同胞たちがやってくる場面がある。

「人との関係が希薄になっている今、命がけで約束を守ろうとする仲間たちの姿に多くの方が心を打たれると思います。心震わせる山本の言葉、「伝えなくては」という男たちの熱い想い。感情が爆発する感動的なシーンになったと思います」

 戦争の記憶を伝えるとともに、人間賛歌の映画だと力を込める。コロナ禍で沈みがちないま、過去の平野氏が受け取ったように、前を向く力になる映画になればと願う。

「誰もが自分らしく。前を向いて歩くことができる世の中になればいい。若年層に人気がある(ロックバンドの)Mrs. GREEN APPLEに主題歌をお願いしたり、抑留者の一人を中島くんに演じてもらったのは、若い世代に寄り添える作品になってほしいという思いがあったから。僕は雪深い撮影現場から編集の現場まで常にいましたが、演者、裏方などの隔てはなく、みんな同志という思いで作品を作っていました。これから、これ以上の映画を作ることができるのだろうかと思うほど、本当に素晴らしい作品になりました」

■平野隆(ひらの・たかし)大分県出身。一橋大学卒業後、TBSに入社。主な作品は 「黄泉がえり」(2003年)、「下妻物語」(04年)、「余命1ヶ月の花嫁」(09年)、「64-ロクヨン-」(16年)、「糸」(20年)、「老後の資金がありません」(21年)など。初めて監督を務めた「KAPPEI」(22年)が第38回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭で部門・最優秀作品賞を受賞している。

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