「カメ止め」はヒットしたけど…インディーズ映画の未来と課題…映画祭の役割とは

「ミドリムシの夢」
「ミドリムシの夢」

「ミドリムシの夢」は駐車監視員を描いた痛快な群像コメディー…ぜひ公開を

 実は今年、国内長編コンペ部門のノミネート審査員を務めました。本映画祭では、私のようなノミネート審査員が応募67本を観て、コンペ候補作を推薦し、事務局スタッフが最終的に選出するという形を取っています。確かにクオリティは上がっているように思えました。コンペ部門に選出されなかった作品にも優れたものは多かったと思います。コンペから漏れた作品にも、別の映画祭で賞を取ったものもありますし、コンペ受賞に至らなかった作品にも面白いものもありました。

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 たとえば、国内長編コンペ部門出品作の「ミドリムシの夢」(真田幹也監督)です。これは、駐車違反を取り締まる民間委託の監視員が事件に巻き込まれる群像コメディーでした。真田監督は「バトル・ロワイアル」(2000)や「アウトレイジ」(2010)などで俳優として活動しながらも、これまで20本の短編を監督し、本作が長編映画初挑戦。監督自身が違反切符を切られたという苦く悔しい経験を基に着想したそうです。ネット上で、駐車監視員が「ミドリムシ」と揶揄され、「日本一嫌いな職業」に挙げられているのを面白く感じたのだとか。こんな逆転の発想によって、痛快なコメディーに仕上がっています。劇場関係の皆様には、ぜひ公開をお願いしたいところです。

「ミドリムシの夢」
「ミドリムシの夢」

 ところで、皆さんは自主映画の長編がどれくらいの予算規模で作られているか、ご存知でしょうか? いろいろと取材をすると、300~500万円が多いようです。アルバイトで資金を集めるにしても、借金するにしても、運良くスポンサーを見つけられたとしても、この額が限界といったところでしょうか。それでも、スタッフ・キャストはほぼボランティアか最低賃金程度、ほぼ実費のみ。削りに削っての金額だと思われます。この金額は未来への投資としても、少ない額ではありません。

 今、映画の現場では、「若い人がどんどんやめていく」との声が聞かれます。昨今、働き方改革なども言われていますが、製作現場は拘束時間が長い割に、製作費のコストダウンもあり、賃金はけっして高くはありません。若い人は夢を見ることができず、去っていくというわけです。一方、チャンスが広がっている部分もあります。「カメ止め」の成功はもちろん、大手配信会社の台頭もあります。大手配信会社はドラマや映画にケタ違いの製作費をかけています。その名を知られることになれば、そうした大作に起用されるチャンスもめぐってきます。

「ミドリムシの夢」
「ミドリムシの夢」

 こうした状況を考えても、映画祭の役割は年々、大きくなっているのは間違いありません。国際コンペ部門の審査委員長を務めた三池崇史監督はクロージングセレモニーの最後に、こんなことを言いました。

「今日受賞された方はこのあとすぐ家族やスタッフに連絡し、そのことによって世界のいろいろな国に笑顔が広がっていくでしょう。我々映画を作る人間には、その喜び、その事実が苦しい時の支えになる。それは自分自身もありがたく感じることです。同時に、映画祭には重い責任も生まれます。この映画祭で賞をとったことがいつまでも誇りになるよう、高いレベルを保ち、あまり商業的にもならず、忖度もせずに続けてほしい。この映画祭は非常に優れていて、個性的、そして自立しています。埼玉県も川口市も誇るべきことです。どうか、この素晴らしい映画祭を続けていってください。次の世代の作品たちに出会えたことを幸せに思い、自分も引退まで頑張りたいと思います」

 この三池監督の願いが映画祭に届く限り、来年以降も新しい才能が「SKIPシティDシネマ映画祭」を目指してくれるでしょう。また、私自身もこの映画祭に関われるかは分かりませんが、新しい才能に出会えることを期待しています。

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