劇団ひとり「無言館」で初の地上波ドラマ監督・脚本を担当 明かした“使命”と舞台裏

日本テレビ系「24時間テレビ 45 会いたい!」内でスペシャルドラマ「無言館」が27、28日に放送される。このたび、同作で地上波ドラマ初の監督・脚本を担当した劇団ひとりのスペシャルインタビューが到着した。

ドラマ「無言館」で監督・脚本を担当した劇団ひとり【写真:(C)日本テレビ】
ドラマ「無言館」で監督・脚本を担当した劇団ひとり【写真:(C)日本テレビ】

主演の浅野忠信の演技は「想像以上」

 日本テレビ系「24時間テレビ 45 会いたい!」内でスペシャルドラマ「無言館」が27、28日に放送される。このたび、同作で地上波ドラマ初の監督・脚本を担当した劇団ひとりのスペシャルインタビューが到着した。

 本作は、戦争で亡くなった画学生の絵を集めた美術館「無言館」設立のために全国を駆け巡ったある男を、実話をもとに描くヒューマンストーリー。劇団ひとりが、地上波ドラマとしては初の監督兼脚本を担当し、浅野忠信が主演・窪島誠一郎(くぼしま・せいいちろう)役を演じる。劇団ひとりが同作の見どころや、実力派キャスト陣について語った。

――今回、「無言館」を題材にしたドラマの放送を決めた理由を教えてください。

「今回は、企画が決まっていない段階から作品に関わらせていただいたのですが、プロデューサーさんから『無言館』についての説明を受けて、僕自身、とても興味がわきました。僕は『無言館』のことを知らなかったのですが、実際に画集を見せてもらって絵を見たり、美術館の建物の雰囲気も含めて、とても魅力的だなと思いました。

 また、この企画を決めているときは、ちょうどウクライナの問題もあり、連日そのニュースばっかりで。僕みたいな世間知らずでさえ、戦争についてすごく考える機会があったことも影響していたと思います。ただ、主人公のモデルとなった窪島誠一郎さんの著書を読むと、『無言館』を『反戦をテーマにした美術館にはしたくない』と仰っていて。絵と戦争は、直接は関係のないことだから、あくまで作品を楽しんでもらいたいと。『美談にはしないで欲しい』とおっしゃっていたので、ドラマも『反戦』をテーマにした内容にならないよう気を付けました。

 絵に向き合った画学生の思いや、絵を守ろうとするご家族の思い、絵を引き継ごうとする窪島さんや野見山さんの思いは、ものすごく美しいものだと僕は思ったので、極力その思いに焦点をあてて、脚本を書いたつもりです」

――脚本を書く上で意識したこと、特に注目してほしいところはどんなところですか?

「主人公の窪島さんは、とても数奇な運命をたどられていて、ご両親のお話や、父親が小説家であることなど、過去にドラマにもなっているくらいすごい話なんですよね。でも、それを描いた上に、『無言館』設立のために絵を集めることを描くとなると、とてもじゃないけど2時間では描き切れないんですよね。なので、今回は『無言館』のみに焦点を当てて、窪島さんの過去のドラマチックな部分は、泣く泣く描かないことに決めました。

 そういう意味で言うと、戦没画学生の絵を大事にしている方々、その絵を預かりに行く2人に焦点をあてた、すっきりとした脚本になりました。その中で、窪島さんの著書を読むと、窪島さん自身、絵を集めることについて、『何でこんなことをやっているのかよくわからない』という風に書いていたんですよね。でも、『何だかわからないけど、使命感みたいなものを感じる』と。『意味があってから動き出すのではなくて、やりながら自分自身で意味づけをしていく』という。そういった部分も脚本に反映させていただきました」

――主演を務める浅野さん、寺尾さんなど、実力派俳優の演技を目の当たりにし、いかがですか?

「脚本を書く段階で、ものすごく想像を膨らませながら、いろんな可能性を考えているのですが、やっぱり現場で役者さんが演じると、自分が想像していた以上のものが見られますよね。浅野さんはそれが多分にあります。そんなに長く見せるつもりはなかったのに、浅野さんの顔があまりにも心情を語ってくれるので、想定よりも長くなりそうだなぁ……とか、そういうことは多いですね。

 今回も名優ぞろいなので、僕が『こういうお芝居をやってください』と押し付けるというより、微調整だけさせていただいています。おそらく、皆さんの得意ジャンルであるお芝居を見せてもらっていると思うので、画に困ることはないです。逆にちょっと『寄り』のシーンが増えちゃう。ベテランの俳優さんは、カメラが寄ったときの表情に、何とも言えない哀愁があったりするので。この作品は、役者さんの力が存分にみえる作品になっているのではないかと思っています」

――実際に「無言館」に訪れて、絵を見たときはどう感じましたか?

「絵は、日記や写真などとは違って、作品なんですよね。魂を込めて描くので、自分の分身のようなものなので、絵を目の前にするとすごく力を感じますよね。窪島さんの著書にも書いてあったのですが、絵を描いているときは、みんな絵を描くことがすごく好きで、よろこんで描いている。戦争に行かなくてはいけないという気持ちもあるんだけど、絵を描いているときは、『絵を描くことが楽しくてしょうがない』という気持ちが伝わってくるって。そんな特別なものだからこそ、『頭を下げられても、この絵だけは渡したくない』という、ご遺族の思いもすごくよくわかります。

 なので、今回の作品の中で、絵をただの小道具にしてはいけないなと思っていました。ものすごい数の絵があるので、全てにスポットライトは当てられないですが、扱う絵に関しては、ちゃんとしたライティングでお見せしないと失礼に当たるな、と思いました」

――今回の作品の中で、最も大事にしたことはどんなところですか?

「戦没画学生の作品を守り続けたご家族の思いや、絵を引き継ごうと思った窪島さん・野見山さんの思いですね。その思いとはとても尊いと思うので、ただこんな事実がありました、と並べていくのではなく、丁寧に描かないといけないなと思いました。無理やりドラマチックな話にしてはいけないな、と。ここでひと盛り上がり欲しいな、と思うことはあるのだけど、無理やり盛り上がりを作るのは、僕のゲスな思いのような気がしたので、なるべく純粋に、事実の輪郭をはっきりさせて視聴者に届けることが、僕らの使命なのかなと」

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