磯村勇斗「僕自身は常に真っ白でいたい」 カルト扱う作品で映画初主演

どのような役も自在にこなす俳優の磯村勇斗(29)が、初主演する映画「ビリーバーズ」で、カルトの世界にのめり込む男を怪演している。本名を隠しあだ名で呼び合う2人の同志と孤島で打ち込む精神修行。性欲や過度な食欲、物欲を禁止された生活の中で起きたある事件が、固く結ばれていた3人を揺さぶっていく。野外で臨んだラブシーンは、「心身が開放的され、いつでも脱げると精神的にも強くなった」と大きな手ごたえを感じている。濡れ場の撮影では、監督のアートとも思える演技指導に感動したという。

映画「ビリーバーズ」で初めて主演を務めた磯村勇斗【写真:小黒冴夏】
映画「ビリーバーズ」で初めて主演を務めた磯村勇斗【写真:小黒冴夏】

20代最後の時間を費やした作品で精神的に強く 「役者を辞めるときは、死ぬとき」

 どのような役も自在にこなす俳優の磯村勇斗(29)が、初主演する映画「ビリーバーズ」で、カルトの世界にのめり込む男を怪演している。本名を隠しあだ名で呼び合う2人の同志と孤島で打ち込む精神修行。性欲や過度な食欲、物欲を禁止された生活の中で起きたある事件が、固く結ばれていた3人を揺さぶっていく。野外で臨んだラブシーンは、「心身が開放的され、いつでも脱げると精神的にも強くなった」と大きな手ごたえを感じている。濡れ場の撮影では、監督のアートとも思える演技指導に感動したという。(取材・文=西村綾乃)

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 映画は人気マンガ家の山本直樹の同名作が原作。「ニコニコ人生センター」という宗教的な団体で修行に励む男女3人は、オペレーター(磯村)、副議長(北村優衣)、議長(宇野祥平)とあだ名で呼び合い、「安住の地」に向かう日を夢見て、孤島で共同生活を送る。

「僕が演じるのは、オペレーターと言う役です。孤島で修業をする設定なので、見た目にも説得力を持たせようと、食事制限をして体重を減らしました。お話をいただいてから原作を読んだのですが、1度では(物語を)理解できませんでした。やりたいと思ったのは、好奇心が大きいです。普通に生活を送っていた男が、ある瞬間に狂い始める。そのリアルさを表現したいと思いました」

 野外の撮影では雨にも悩まされた。現場では弁当も我慢し「3人とも、差し入れてもらったナッツで我慢していました」と苦笑いする。体力的にも精神的にも消耗したが、結束力は高まった。浜辺でのラブシーンでは城定秀夫監督自ら力の入った演技指導もあった。

「監督はたくさんの濡れ場を撮影されてきた方。『その瞬間に生まれたものを大切にしたい』とほぼワンテイクで撮影されるので、事前にご指導をいただきました。北村さんと宇野さんの場面では、『臨場感がない』と監督自ら実演してくださったり、本来女性なら躊躇してしまうシーンなども、監督がアート的な動きを見せてくださって、北村さんもそれを真似して。美しい場面になったと思います」

 多くの作品に出演してきたが、映画での主演は今作が初めてだ。一糸まとわぬ姿で臨んだハードな濡れ場では、大きな手ごたえを感じたという。

「やっているうちに、開放感がありました。人間的に開放されたとも感じて、裸で過ごすのも悪くないなって思いました。ひとつひとつクリアして怖いものがなくなっていく。ひとつひとつやっていくのが役者の仕事とあらためて実感しました。今は『いつでも脱げますよ』と言えるようになりましたし、精神的にも強くなったと感じています」

 役者を目指すきっかけは、中学2年生のときに作った自主制作映画だった。脚本から主演までこなし、その作品を見た同級生が「笑って拍手してくれたことがうれしかった」と目を細める。

「お芝居を学びたいと(出身地の)沼津市にある演劇研究所に入って、1週間に1回稽古に参加させてもらうようになりました。50~70代の方々に混ざって、台本の読み方から発声、早口言葉など基礎を教わりました。10代は僕だけでしたが、自分が作ったもので喜んでくれた、(中2のときの)感動を忘れられなくて。今もはっきりとその光景を思い出せるし、それが原動力になっています」

 公開中の映画「PLAN 75」は、第75回カンヌ国際映画祭で、「ある視点」部門に選出され、早川千絵監督がカメラドール賞の特別表彰を受けた。ほか「異動辞令は音楽隊!」(8月26日公開)、「さかなのこ」(9月1日公開)など話題作に多く出演している。

「役者はいろいろな色に染まることができるところが魅力。どんな色にも染まれるように僕自身は常に真っ白でいたいと思っています。主役でもそうでなくても、覚悟は変わらなくて。ひとつひとつの作品に、全力で真っ直ぐにぶつかって行けるかを常に考えています。大切なのは挑戦し続けること。毎日新鮮な気持ちでい続けられるように、努力していきたい。役者を辞めるときは、死ぬときです」

 今年の9月11日に30歳を迎える。20代最後の年、そして迎える30代をどのように過ごしたいと思っているのだろう――。

「年齢にこだわらずにいたいです。映画で初めて主演を務めたことは、オペレーターが特殊な役ということもあり、大きな経験になりました。でも29歳で映画に初主演というのは、役者を目指し始めたときに描いていた未来を思い出すと、『遅いかも』とも思います。でもこれがゴールではないので、俳優だけではなく裏方の仕事など、表現する幅を広げて行けたらと思っています」

 映画は7月8日よりテアトル新宿ほか全国で順次公開される。

□磯村勇斗(いそむら・はやと) 1992年9月11日、静岡県生まれ。2014年に俳優デビュー。翌年出演したドラマ「仮面ライダーゴースト」で務めたアラン役で注目を集めた。17年には、NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」でヒロインの夫役を好演。映画「ヤクザと家族 The Family」、「劇場版 きのう何食べた?」での演技が評価され「第45回日本アカデミー賞」で新人俳優賞を受賞した。趣味はサウナ。「エレガンス磯村」という熱波師ネームも持っている。身長176センチ、血液型A。

ヘアメイク  佐藤友勝
スタイリスト 齋藤良介

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