華道界“30歳御曹司”池坊専宗の素顔 慶大理工から東大法に“文転”合格 華麗なる経歴と生き方

華道界で注目の存在である池坊専宗さん(30)は、驚きの学歴を持つ。慶応大入学後に理系から“文転”して、東大法学部に合格・卒業した才覚の持ち主だ。将来的に「華道家元池坊」を背負って立つプリンスの横顔とは。写真家としての信念とは。そして、多趣味なライフスタイルを聞いた。

将来的に「華道家元池坊」を背負って立つ華道家で写真家の池坊専宗さん
将来的に「華道家元池坊」を背負って立つ華道家で写真家の池坊専宗さん

「華道家元池坊」池坊専宗さん 家元は代々「生け花発祥の地」と呼ばれる六角堂の住職

 華道界で注目の存在である池坊専宗さん(30)は、驚きの学歴を持つ。慶応大入学後に理系から“文転”して、東大法学部に合格・卒業した才覚の持ち主だ。将来的に「華道家元池坊」を背負って立つプリンスの横顔とは。写真家としての信念とは。そして、多趣味なライフスタイルを聞いた。

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「子どもの頃は、皆さんが思われているよりは、そこまで家業を強く意識することはなかったです。両親は生け花を強制することはなく、『やりたいことをその時にやりなさい』と育ててくれました」。

 華道家元池坊の四十五世家元・池坊専永さんの孫で、次期家元の池坊専好さんを母に持つ。室町時代に池坊専応が華道の理念を確立。家元は代々、聖徳太子が創建したとされ、「生け花発祥の地」と呼ばれる紫雲山頂法寺(通称:六角堂、京都)の住職を務める。池坊が歴史上文献に記録されてから、2022年に560年を迎えた。由緒ある名家の出身だ。

 正真正銘の御曹司だが、意外なことを口にした。それに、中学高校時代に熱を上げたのは、野球だという。

 高校から理系で、当初は数学者を目指した。慶応大理工学部に進学したが、ここで“落とし穴”が待っていた。「いざ理系の大学に入ってみると、数学は良くも悪くも地味で堅実な学問で、入学してすぐに『これはちょっと難しいな』と気付きました」。ここから文転。持ち前の粘り強さで、独学で勉強を重ねた。「東大には後期試験で入りました。小論文と、数学と理科の複合科目と、英語でした。結局、数学がうまくできて受かったんです。慶応大では単位を取る目的もあって数学を粘って勉強していました。これが結果的に東大入試に効いたんです。世の中、どこで何が役に立つか分からないし、無駄なことはないと実感しました」。

 東大では打って変わって法哲学を学んだ。「人という存在をどう捉え、社会をどう良くしていくのか。こういったことを突き詰めて考えました。それに、数字では割り切れない人間という存在、人とのつながり、そういったニュアンスやアナログといった言葉で表現されることに関心があるんです」。

 官僚や弁護士になることも頭に浮かんだが、選んだのは、家族が代々受け継いでいる生け花だった。東大卒業後に本格的に華道を学び始め、厳しくも情に厚い“昭和のおじいちゃん先生”から薫陶を受けた。「不器用であっても誠実に花と向き合う。愚直に葉っぱ1枚の向きにこだわり、その命を見つめようとする。いろいろなことを学びました」と振り返る。

 命のあり方を考え続ける。そして、生け花は人間の生き方に通じる――。これが信条だ。

「生け花は、単なるアート、自己表現、ビジネスの枠を超えた魅力があります。日々忙しく働く方にとって、生け花をすることで心が癒やされたり、自分の時間を感じたりすることができます。これだけネットやSNSの普及で情報に忙殺される中で、自分自身の感覚に入り込んだり、目の前の植物の命だけに集中したりする時間は本当に貴重です。それに、いまの時代は、常に結果を求められ、立派になっていくことを強制されるような社会です。それとは違う軸で、ゆっくり時間を過ごすことで豊かな生き方を目指す価値観が浸透していけば、もっと生きやすい社会になるのかなと思っています。その一助になれたら」と、熱く語る。

池坊専宗さんは自身の生け花を前にやさしい笑顔を見せた
池坊専宗さんは自身の生け花を前にやさしい笑顔を見せた

得意の「断捨離」ポイントを伝授

 祖父と母の流儀をどう捉えているのか。「面白いのが、家族であっても花の内容はバラバラなんです。祖父は、私から見ても逆に新しいと言いますか、若い感覚で花を生けます。母はより華やかな表現です。私は渋い花が好きなもので、どうも“じじくさい”花を生けることで有名になっていて、祖父からはたまに、『あまりじじくさい花じゃない方がいい』と言われます(笑)。それもひっくるめて、生け花はさまざまな方向性を受け止められる、器の広さがあります。そこがいいところです」。

 写真家としての顔も。インスタグラムでは、華道家・写真家としての2種類を運用している。生け花の哲学と大きく関係しているそうで、「最初は、枯れていってしまう生け花を記録するために写真を撮り始めたんです。それがだんだんと、心に訴えかける写真があって、撮る人の感覚や人間性が写真に乗ってくることに気付きました。写真を撮る時も生け花と同じで、時間の流れや、衰えていったり盛り上がったりする命の移ろいを、より豊かに感じられるように。常に自分の感覚を磨いています。写真は、見る人の心を豊かにできます。人とのコミュニケーションにもつながります」。自身が生けた花の写真を撮ることを1つのセットとして取り組んでいる。

 趣味はたくさん。野球観戦で巨人ファン、甘党で和菓子大好きながらジム通い、友人の誘いで3年前に始めたボクシング。それに、断捨離だ。「ミニマムを目指して、そぎ落とすのが得意なタイプなんです。なるべく持ち物を少なくして暮らしています。ポイントは、1年間使わないものは整理することです」とアドバイスを教えてくれた。

 池坊では、若い世代へのさらなる華道の普及にも注力。花展で若者が生け花を出す場を設けたり、高校生によるコンクール「花の甲子園」を開催したり、アニメや映像とのコラボなどに取り組んでいる。

 未来を見据えた、後継ぎとしての心構えを聞いてみると、「池坊は人々の思いと歴史の積み重ねで今があると思っています。私自身も温かく優しい環境で見守られながら、いろいろ失敗しながら成長してきました。池坊を信じてくださる皆さんに喜んでもらえるように、生け花をやってよかったと思ってもらえるように。そうした中で、自分自身の活動も広がっていけたら、それは本当にいいことだなと思っています」。これからも自分自身が楽しんで、華道を突き詰めていくという。

□池坊専宗(いけのぼう・せんしゅう)、1992年1月20日、京都市生まれ。東大卒業時に成績優秀として「卓越」受賞。東京・日本橋三越本店、京都・高島屋などで生け花を多数出瓶し、自身の生け花を撮影するなど写真家としても活躍。華道教室で生徒たちに技術と心を教える傍ら、テレビ出演や文筆業など多岐にわたって活動している。

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