カワサキ&ホンダを駆る63歳ライダーの悠々自適な半生 老後の夢は「カブの旅」

もう1台乗るとしたら…買いたいのは「ロータス・エリーゼ」

 仕事もバイク・車関連だ。大学在学中は、なじみのバイク店で知り合ったバイク雑誌の編集部員から編集のバイトを紹介してもらった。それに、別の人から同じバイク店つながりで「新車に乗れるよ、バイトしない?」と誘われたのが、バイク・車の撮影用ドライバー。CMやプロモーションビデオ、広告のモデルで、「これがまたすごくて。ある時、豊田市でトヨタ車の撮影のあと、『広島に行って』と言われて自分で運転して、翌日にマツダ車に乗って。そうしたら『今度は(京都の)舞鶴ね』と。驚いたんだけど、そこからフェリーに乗って、北海道の旅が始まって…」。あちこちを回った思い出は尽きない。

 撮影のバイトに明け暮れたが、無事に大学を卒業。映像の道と迷ったが、バイク雑誌の編集者として働くことに。仕事に猛進したが、30歳過ぎで一度立ち止まり。ライター業をこなしながら、得意の話術を生かしたメンタルトレーニング講師、企業研修の講師に軸を置くようになった。自分のペースで、自営業一本で仕事を続けている。

 ソロツーリングで日本中を駆け回り、フェイスブックのグループを主宰。カワサキに加え、7年前に知人から譲り受けた87年製の「ホンダCBR250R(MC17)」も愛車だ。「バブル期のバイクなので、ぜいたくなつくりなんです。当時のハイテク仕様で、速度も出てレース用と言ってもいい。それでいて、乗っていて振動が少なく、安全で怖くない」。相棒と言える存在だが、エンジンが故障してしまったのが悩みのタネという。

 現在は家族のためを思ってファミリーカーに乗っているが、これまでいすゞ ピアッツァを3台乗り継いだ。「国産車のイメージを覆すような個性派のデザイン。気に入ってました。でも、奥さんから『荷物が詰めない車はそろそろやめて』と言われまして…(笑)」。それでも、もう1台乗るとしたらスポーツカーの「ロータス・エリーゼ」を買いたいとのことだ。
 
「サラリーマンをやったことのない、思い付いたら直感で生きてきた人生なんです。ライダーズ神社は、バイク仲間と『千葉で大掛かりなツーリングイベントがあればいいよね、じゃあやってみようか』とお茶を飲みながら話したことがきっかけ。人生1度しかないので、まずはやってみるのが大事」。6年前にバイク運転時に交通事故に遭い、リハビリに約半年かかる大けがを負った。「悔いのない人生」をより強く意識するようになった。長引く新型コロナウイルス禍の中で、ツーリングの人気が高まっている。「バイクで出かけて、屋外の休憩所でライダー同士で、『同世代ですね、お互いに気を付けて行きましょう』と言葉を交わして、互いの無事を祈ってまた出発する。密にならないし、これぐらいの距離感がいいんですよ」。そこにバイクのよさがあるという。

 いつかバイクで訪れたいのは東北。近々、西日本を回るツーリング旅に出るそうだ。最後に、あこがれの老後のバイカー人生を教えてくれた。「ツーリングに出ていると、よくスーパーカブで旅をしている元気なおじいちゃんに会うんです。70過ぎても全国を走り回っている、そんな姿を見ていると、うらやましくて。最後はスーパーカブで走りたいですね」。

□矢野正人(やの・まさと)1959年、東京都生まれ。駒澤大学卒。バイク雑誌の編集者などを経てメンタルトレーニング講師に従事。最近は、SUP(サップ)とシーカヤックに夢中。

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