吉田類、放送1000回超の「酒場放浪記」 コロナ禍でも休まずの信念「こういう時だからこそ」

昨年上梓したエッセイ「酒場詩人の美学」【写真:山口比佐夫】
昨年上梓したエッセイ「酒場詩人の美学」【写真:山口比佐夫】

「酒場放浪記」は全部アドリブです

MOBY「類さんの言葉はいつも酒場の人たちへの敬意が溢れていて、うんちくを語るような番組とは一線を画す、まさに“一期一会”ですよね」

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吉田「やっぱり店も生業ですし、当然ですがみなさんプライドもあるし真剣ですよ。そういう人たちが出してくれるものにはそれだけの努力が隠れているし、やっぱり出てきたものにすべて答えが出ているんですよ。それを感じ取って、それに対する感謝がなければ、ただの“のんべえ”でしかないですからね。それと僕にはうんちくはありません。全部アドリブ(笑)。音楽だったらジャズかな。僕は思いっきりジャジーに生きているんです。だから世界中を旅できたのかもね」

MOBY「スウィングしているんですね?」

吉田「酔っ払ってもスウィングしてるからね(笑)。僕自身、番組があろうがなかろうが、基本は素のまんま、自分を作ったりしません。作ったらすぐに見抜かれますよ。僕が番組を通して視聴者に受け入れられているとするならば、そこなんじゃないかなあと思います。それは世界中どこを旅しても同じで、日本と同じように歓迎してくれますよ。どこの国だろうが、片言でもなんでも素のまんま『こんにちは!』って。そういうことも『酒場放浪記』が生まれるきっかけになったかもしれない。海外でもリラックスして飲み歩いていたから、よく地元の人に間違われて道を聞かれましたよ」

MOBY「僕も海外でよく道を聞かれるんです」

吉田「それはMOBYくんの風貌が日本人離れしてるからだよ(笑)」

MOBY「間違いないです(笑)。でもだいたい仲良くなるのは酒場なんですよ。僕はメジャーリーグが大好きで、シカゴの野球場の裏にあるパブで試合の後に飲んでいるとすぐに地元の人と仲良くなって、日本人は珍しいからどんどんお酒をおごってくれるんです。そこから連絡先を交換したらメジャーリーグの関係者だったりして(笑)。日本に戻ってからも交流が続いているんです」

吉田「それが『酒場放浪記』の原点なんですよ。格好をつけたり、お店に入って知ったかぶりをする人は絶対に周りには受けないよね。どこの国だって意識なんかせずに素のまんまで生きた方が楽しいんですよ」

MOBY「そう言っていただけるとうれしいです。ところで類さんが酒場を選ぶ時の基準みたいなものはあるんですか?」

吉田「基本的には『ここに入ったら楽しいだろうな』と分かっていないと入らないんですよ。特に最近はそんなに冒険をする時間がないので、ほぼ間違いない店に入ります。これは場数を踏んでいるからなんだけど、人間と同じで店も顔を持っていて、その顔と自分の相性が合うかどうかなんだよね。『ここはきっと入ったら面白いだろうな』と思って、実際に入ってみるとだいたい当たってます。街の雰囲気や例えば屋台から居酒屋になったお店とかね。それを見ていくと、必ずそこには長く通って店を支えるご常連たちがいるんですよ。そういうお店選びで外すことは、今はほとんどないですね」

MOBY「味が優先のお店もありますけど、やっぱり楽しそうな店というのが1番ですね」

吉田「そう。飲みに行って面白くなかったら意味がないじゃない? その楽しさっていうのは店の表からにじみ出ているんですよ」

MOBY「番組の最後に『じゃあもう1軒行ってきます』というお決まりのひと言がありますよね。実は本当にもう1軒行かれているとお聞きしました」

吉田「そうそう。収録が終わったらスタッフが店を予約して待っていたりね。そういうふうに楽しくできているから今も続けられているのかもしれませんね」

□吉田類(よしだ るい)高知県生まれ。BS-TBS「吉田類の酒場放浪記」、NHK「ラジオ深夜便」に出演。登山も続けており、2022年春から放送開始のNHK総合「にっぽん百低山」に出演。日本各地の低山の魅了を堪能している。また酒場や旅をテーマに講演も行う。俳句会を開催し俳人の顔も持つ。著書は「酒場歳時記」(NHK出版)、「吉田類の旅と酒場俳句」(KADOKAWA)、「酒場詩人の美学」(中央公論新社)等。近年は画家としての活動を再開し、7月には東京の銀座三越で個展を開催予定。

□オカモト”MOBY”タクヤ 1976年7月6日生まれ。ロックバンド「SCOOBIE DO」のドラマー兼マネジャー。ABEMA、SPOTV NOWにてMLB中継の解説・実況を担当。他にも酒場に関する執筆やクイズ作家など多方面で活躍。2021年、テレビ東京系ドラマ「生きるとか死ぬとか父親とか」で俳優デビュー。「SABR(アメリカ野球学会)」会員、「野球文化學會」会員。著書は「ベースボール・イズ・ミュージック! 音楽からはじまるメジャーリーグ入門」(左右社)。

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