女流雀士・松嶋桃の“苦悩”と“矜持” Mリーグ公式実況としてのこだわりとは?

プロ麻雀リーグ「朝日新聞Mリーグ2021-22」のファイナルシリーズが18日から始まった。今季も数々の熱い対局が繰り広げられ、大きな盛り上がりを見せている。そんなMリーグに欠かせないのが実況の存在だ。今季も多数の試合で実況を務める、松嶋桃プロに、Mリーグの魅力や実況者としてのこだわりについて聞いた。

プロ麻雀リーグ・Mリーグの公式実況を務める松嶋桃プロ【写真:ENCOUNT編集部】
プロ麻雀リーグ・Mリーグの公式実況を務める松嶋桃プロ【写真:ENCOUNT編集部】

Mリーグ発足時から公式実況を務める

 プロ麻雀リーグ「朝日新聞Mリーグ2021-22」のファイナルシリーズが18日から始まった。今季も数々の熱い対局が繰り広げられ、大きな盛り上がりを見せている。そんなMリーグに欠かせないのが実況の存在だ。今季も多数の試合で実況を務める、松嶋桃プロに、Mリーグの魅力や実況者としてのこだわりについて聞いた。(取材・文=猪俣創平)

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 2018年のリーグ発足時から公式実況を務める松嶋。「Mリーグ史上に残る名シーンになった」と振り返るのが、Mリーグファンなら誰しもが胸を打たれた場面だった。

 セミファイナルシリーズ最終日となった8日に行われた第1試合。この日、敗退の窮地に立たされた「U-NEXT Pirates」の命運をかけた第1試合に起用されたのが石橋伸洋プロだった。しかし、期待に応えることができず、奮闘するも南3局5本場での放銃が響き、結果は4着。試合後のインタビューで石橋プロの涙が止まらなかった。

 この試合を実況した松嶋は、石橋について「いつもニコニコしているタイプで、感情を表に出す人ではないんです。優勝したときも泣かなかったんです」と明かしつつ、この場面について、言葉に詰まりながらも振り返った。

「麻雀上では責められないような放銃だったんです。見てる側も(放銃が)仕方がないってことが分かるじゃないですか。そういうもう……試合の過程を抜きにして、インタビューに入った瞬間、すごい号泣されているのを見たときに、麻雀のつらい面がパンと出たなあ……って」

 一方で、麻雀の「おもしろい面」も感じたようだ。

「麻雀って頭脳スポーツだと思うんです。そういうスポーツドラマ的な部分がすごく出たんじゃないかなと思います。インタビュアーの人も涙ぐんでいましたし、それぐらいMリーグ史上に残るシーンになったと思っています」

 そんな喜怒哀楽を伝える麻雀実況。松嶋は“プロ”としての矜持も見せた。

 いつも「どこのチームも負けてほしくない」というのが本心としながら、「すべてのファンがいるぞ! というのを背負いながら実況していました」と観戦するファンを常に意識している。

「石橋選手の放銃も、パイレーツファンの人に感情移入して悔しい気持ちになりました。でもその裏にはパイレーツに抜かされてはいけないという条件のセガサミーフェニックスのファンの人たちもいるわけです。そこを常に頭に置きながらも目の前のことに感情移入するように力を注いでいました」

 心を大きく動かされた第1試合だったが、その後に行われた第2試合でも実況の仕事を全うした。セミファイナルラストとなった一戦でも意識していたのはファンの存在だった。

「風林火山の勝又(健志)さんがすごいあがりをどんどんしていたときは、『あれ? これ奇跡起きちゃうんじゃない!?』という場面だったので、それを『すごいことなんだよ!』と盛り上げるように徹しました。でも、その後ろにパイレーツやフェニックスのファンがいることは『絶対に忘れないぞ』と思っていました」

 同じ麻雀プロだからこそ選手の気持ちも理解でき、同じ麻雀好きのファンも意識し続けているからこそ、Mリーグを盛り上げることができる。

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