ウクライナ「反戦デモ」写真展 写真家が異例の修正前カット公開「彼女たちの思い伝えたかった」

日本で暮らすウクライナ人をモデルに反戦メッセージを伝える写真展が4日から、東京メトロ・表参道駅B2出入口付近の地下通路で始まった。展示された写真はツイッター上にも公開されているが、7枚が異なっている。展示用の写真は東京メトロ側の意向で修正を加えており、撮影した写真家の宮本直孝さん(61)が抗議の意思を込めて、ツイッターにはあえて修正前の写真を掲載した。「彼女たちの思いを伝えたかった。オリジナルを出さなきゃいけないと思いました」と訴えている。

左が展示された写真、右は修正前のオリジナル写真【写真:ENCOUNT編集部】
左が展示された写真、右は修正前のオリジナル写真【写真:ENCOUNT編集部】

表参道駅で開催中 7枚のオリジナル写真をネット公開

 日本で暮らすウクライナ人をモデルに反戦メッセージを伝える写真展が4日から、東京メトロ・表参道駅B2出入口付近の地下通路で始まった。展示された写真はツイッター上にも公開されているが、7枚が異なっている。展示用の写真は東京メトロ側の意向で修正を加えており、撮影した写真家の宮本直孝さん(61)が抗議の意思を込めて、ツイッターにはあえて修正前の写真を掲載した。「彼女たちの思いを伝えたかった。オリジナルを出さなきゃいけないと思いました」と訴えている。(取材・文=水沼一夫)

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 表参道の壁に30メートルにわたって並んだのは、男女23人の在日ウクライナ人の写真だ。「ウクライナでの戦争をやめて」「平和を」など、思い思いの自作ボードを持ち、ロシアの侵攻による怒りや反戦、平和への願いを伝えている。

 展示のテーマは「反戦デモ」。宮本さんは「実際のデモはニュースでもひとかたまりで、なかなか一人一人の顔が見えてこない。写真にすると、生身の人間を感じられ響くと思う」との意図で企画した。23人のモデルは3月、SNSを通じて募集し、宮本さんの思いに賛同して参加した。

 すべての撮影を終え、写真提出の締め切りを翌日に控えたとき、管理する東京メトロ側から注文が入った。

「7枚がNGで掲載不可です」

 モデルのウクライナ人が持ったボードのメッセージの内容や服装のデザインが公共の場にふさわしくないという判断だった。例えば、政治思想にかかわると判断され「STOP PUTIN(ストッププーチン)」はNGとされた。ロシアや日本の国旗を加工したように見えるものや血をほうふつさせるイラストも修正の対象になった。

 モデルの思いを否定され、時間的にも追い詰められた宮本さんは「もうできない、やめます」と一度は開催の断念を伝えたが、最終的には、審査に通るように写真をレタッチして提出した。

 そのことを協力してくれたウクライナ人に伝えると、写真の使用に難色を表す人もいた。

 撮影を通じて、宮本さんはウクライナ人の悲痛な思いを感じ取っていた。「撮影して10秒たたずに泣き始めた人もいました。大変な人っているけど、命にかかわっていない。彼女たちは命にかかわっている。そこの深刻度は、街を壊されて家族や知人が殺されるというのは、次元が違うという気がしましたね」。だからこそ、あるがままのメッセージを届けたいと思った。

 23人の表情は似ているようで、それぞれ違う。怒りや悲しみ、苦しみまでが浮かび上がった。

「撮影のとき、青と黄色のミサンガをプレゼントしてくれた女性がいるんですけど、『Think about your family』(家族のことを考えてください)と言ったら、泣いちゃいそうになって、それを一生懸命我慢した顔を収めました」

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