スケジュール管理、情報共有…「家元は全部分かってないとダメ」三代目藤間紫が痛感したこと

手拭いを使った所作が美しい【写真:舛元清香】
手拭いを使った所作が美しい【写真:舛元清香】

長距離マラソン並にハードな大曲「京鹿子娘道成寺」

 一部の「京鹿子娘道成寺」は、“女形舞踊の集大成”と評される大曲。一瞬にして衣装を着替える「引抜(ひきぬき)」の見せ場がある。また赤い振り出し笠や鼓の羯鼓(かっこ)など、小道具も多く使用する。

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「道成寺」は、若い僧の安珍と未亡人・清姫の恋物語「安珍清姫伝説」を舞踊化したもの。安珍に恋をして裏切られた清姫は大蛇になり、道成寺の鐘の中に隠れた安珍を追いかけ、鐘に巻きついて焼き殺す。「京鹿子娘道成寺」はこの後日譚。清姫により鐘を失った道成寺で新しい釣鐘が完成し、鐘供養が行われていたところに白拍子(しらびょうし)の花子が現れる。舞を踊り始める花子の正体は清姫の亡霊で、再び鐘に巻きついて執念をあわらにする。

――「道成寺」は「安珍清姫伝説」がベースとなっています。女性の一途な恋心と、蛇になってしまうほどの執念や怨念がありますが……。

三代目「この道成寺は、もちろん安珍と清姫の物語に基づいて作られている舞踊ですが、一番の見どころは、“段ごとにいろいろな踊りや姿形を見せていくところ”にあります。もちろん“鐘に思いを持って本性が現れる”という瞬間が舞踊の中で見え隠れするんですけど、振り出し笠や羯鼓など小道具も使います。そういったものを、舞台も照明もセットも何も変わらない状態の中で、“自分がいかに変化を見せながらもっていくか”っていうのが見どころです」

――1時間近く踊る大曲ですが、お稽古はいかがですか?

三代目「大変です。多くの方から、『本当に大変だから覚悟した方がいいよ』と何度も言われていました。先週、下ざらい(舞台稽古)で衣装と頭をつけてやったんですけど、ほんっっっとにこれは、長距離マラソンというか、ジェットコースターに乗っている気分。始まったら戻れない。ちゃんとペース配分を考えないと、一曲踊るのは大変です。でも、『女形歌舞伎舞踊の最高峰』と言われるくらいなので、やっぱり踊っていて楽しい。体力がないので、もっと筋トレすればよかった(笑)」

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