デビュー25周年“聖闘士星矢の歌姫” 松澤由美はいかに左乳房全摘を乗り越えたのか

スマートフォン向けゲーム「Ragnarok M: Eternal Love」のテーマソング「ひとひら」のジャケット写真
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「聖闘士星矢」の歌姫として世界20都市でのライブ活動

 手術の直前には中国公演に参加することが決まっていた。

「手術をしたら、もうステージに立つことはないかもしれないと思ったから、ステージから(客席)に降りて歌っていましたよ。がんになってもし髪の毛がなくなったらスキンヘッドになって、ロックっぽくしても良いのかなとも思いました。結局、抗がん剤治療をしなかったので、髪の毛は変わらなかったんですけど…」

 まさかスキンヘッドも考えたとは。全てを前向きに捉える、とはこういうことを言うだろう。

「病気になると、それまで何かカラダに悪いものでも食べていたかなとか思ったりもしたけど、私は結構食べるものでも普段から気にしていたほうだったと思うんです。だから交通事故に遭うようなものだと思えば。遺伝もあるし。だから自分を責めるよりは、今後どうするか。そっちを考えたほうが前向きになれると思います」

 現在も定期的な検査は欠かしていない。

「実際、私がこうして公にしたことで、同年代の方で悩んでいたり、これから手術される方で不安な方がいても、松澤由美みたいな人間もいるから大丈夫かも、って思ってもらえるのはすごくうれしいし、私の勇気にもなっています」

 松澤は、03年にアニメ「聖闘士星矢 冥王ハーデス十二宮編」で自らが作詞・作曲した主題歌「地球ぎ」を歌い、06年には「聖闘士星矢 冥王ハーデス冥界編」のエンディング曲で原作者の車田正美が作詞を担当した「託す者へ」にも歌手として参加したことから、これまで数多くの「聖闘士星矢」関連の海外公演に名を連ねてきた。その数は実に世界20都市にものぼる。

「最初の海外公演はスペインだったんですけど、その後、サンパウロ、リオデジャネイロ、アルゼンチン、チリ、メキシコ、ペルー、パリ、香港、台湾、北京…、本当にいろいろな場所で歌わせてもらうことができました。ポルトガルには(歌手の)影山ヒロノブさんと一緒に行かせてもらったこともありますね」

 アニメファンの存在は、手術を経て、歌手として復帰する松澤の支えの1つになった。コロナ禍で、20年以降は開催されなかったが、18年、19年にブラジルで開催された「アニメフレンズ」では、数万人の観客の前で「地球ぎ」をはじめとする「聖闘士星矢」関連の曲を熱唱した。

 海外では日本語で主題歌を覚えて一緒に口ずさんでくれるファンも多かった。世界中に「聖闘士星矢」のファンがいることを実感した。

「普通は、今現在人気のあるアニメ作品の主題歌を歌っている歌手だったり、グループが呼ばれていくことが多いから、2、3年後に呼ばれるかどうかは分からないんですけど、『聖闘士星矢』に限っては“テッパン”なので、毎回、必ずブースもあるし、(アニメ化された時の最初の主題歌)『ペガサス幻想』は『アニソン界の国歌』とまで言われているくらいなんです」

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