ブライダル業界“1兆円打撃”から復活のカギは? アナログからの脱却が焦点に

来年2022年で3年目を迎える新型コロナウイルス禍で、ブライダル業界が深刻な影響を受けている。コロナ流行後の損失として計約1兆円の試算も。周囲の反応を気にして結婚式をためらう人が増える中で、人生の晴れ舞台をサポートしようと、業界は“ウィズコロナ”の取り組みを加速化させている。導入の遅れていたデジタルトランスフォーメーション(DX)もポイントの一つ。結婚式の課題と今後について、株式会社リクルートが企画制作する「ゼクシィ」で営業部門の責任者を務める早川陽子氏に聞いた。

「ゼクシィ」営業部門の早川陽子氏はブライダル業界の今後の展望を示した【写真:ENCOUNT編集部】
「ゼクシィ」営業部門の早川陽子氏はブライダル業界の今後の展望を示した【写真:ENCOUNT編集部】

コロナ禍で結婚式事情は様変わり 式をキャンセル・延期した人は33万組と推計

 来年2022年で3年目を迎える新型コロナウイルス禍で、ブライダル業界が深刻な影響を受けている。コロナ流行後の損失として計約1兆円の試算も。周囲の反応を気にして結婚式をためらう人が増える中で、人生の晴れ舞台をサポートしようと、業界は“ウィズコロナ”の取り組みを加速化させている。導入の遅れていたデジタルトランスフォーメーション(DX)もポイントの一つ。結婚式の課題と今後について、株式会社リクルートが企画制作する「ゼクシィ」で営業部門の責任者を務める早川陽子氏に聞いた。(取材・文=吉原知也)

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 早川氏は「大打撃でした」と表現する。ショッキングな数字だった。ゼクシィと「公益社団法人 日本ブライダル文化振興協会」は今年6月、コロナ禍拡大の影響に関する試算を共同発表した。結婚式場各社の収益棄損総額は、20年度において「約9500億円(19年度比約32%)」との推計だ。早川氏によると、この2年間で婚姻件数は14、15万件減少。人口減の社会情勢もあり、もともと年1%程度減っていたが、20年は前年比約12%の落ち込みで例を見ない減少に見舞われた。式をキャンセル・延期した人は33万組と推測されるという。

 一方で、人々の意識を分析すると見えてきた構図がある。リクルートブライダル総研は緊急調査(全国20代~40代の女性4万人が対象)を実施。11月公表のデータでは、20年に婚姻予定だった人のうち、24.7%が延期・取りやめを決断。19年から15ポイント上昇した。理由については、1位が「双方の親にあいさつができない」(29.3%)で、「結婚式が予定通りの時期に実施できない」(15.7%)、「自分たちの望む結婚式ができない」(13.9%)となった。「親へのあいさつ」という既成の“規範意識”が重視されていることが分かった。

 早川氏が注目するのは、ゲスト側の満足度についての別の調査結果だ。「結婚式に出てよかった」の回答は、過去最大級の数値に。全年代で高く、特に60代以降の親・親戚世代にとっては、「コロナ禍にあって、ハレの日に親族が集まり、新たな家族を祝うことへの喜びをより大きく感じているのでは」と分析。「結婚式を『やってほしい』という周囲と、『この状況下でやっていいのか不安』『両家あいさつのけじめができていない』とあとずさりする本人サイド。このギャップをどう埋めるかが、今後の回復への大きなテーマになります。結婚式を希望するカップルに“応援している人がたくさんいるよ”という声を届けて、背中を押すことに取り組みたい」と話す。

 感染防止対策も重要だ。コロナ禍が始まってまもなく、ブライダル業界は感染拡大防止マニュアルを競合他社間で共有。全国2000屋号とのつながりを持つリクルートの営業が奔走し、他社が作成したマニュアルを見本として各式場の現場で感染対策を促す役割を担った。政府のガイドラインに従って業界全体で注力した結果、式場でのクラスター発生は1つもないという。

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