園子温監督が映画主演に抜てきした無名女優の素顔 “鬼才”が認めた2人の生い立ち

鬼才・園子温監督が、初の本格ワークショップを経て完成させたのが、映画「エッシャー通りの赤いポスト」(12月25日公開)だ。今年、ニコラス・ケイジ主演の「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」でハリウッドデビューした園監督だが、本作は「選抜した51人が全員主役」という異色のインディーズ映画。その中で、ヒロインを射止めたのが藤丸千(ふじまる・せん=27)と黒河内りく(くろこうち・りく=22)。園監督は「このチャンスを使って、自身の人生をつかみ取ってほしい」とエールを送っている。

園子温監督について語った藤丸千(左)と黒河内りく【写真:舛元清香】
園子温監督について語った藤丸千(左)と黒河内りく【写真:舛元清香】

映画「エッシャー通りの赤いポスト」に出演、藤丸千&黒河内りくインタビュー

 鬼才・園子温監督が、初の本格ワークショップを経て完成させたのが、映画「エッシャー通りの赤いポスト」(12月25日公開)だ。今年、ニコラス・ケイジ主演の「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」でハリウッドデビューした園監督だが、本作は「選抜した51人が全員主役」という異色のインディーズ映画。その中で、ヒロインを射止めたのが藤丸千(ふじまる・せん=27)と黒河内りく(くろこうち・りく=22)。園監督は「このチャンスを使って、自身の人生をつかみ取ってほしい」とエールを送っている。(取材・文=平辻哲也)

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「エッシャー通りの赤いポスト」は園監督が2019年夏にワークショップに参加した無名の俳優たちと作った群像劇。ある映画に出演するため、さまざまな境遇の人々が思いを募らせて応募用紙をポストに投函し、オーディション会場に集っていく。登場人物は膨大だが、描き分けが見事で、監督らしい仕掛けに満ちた快作だ。特に、ラストに用意されたキャスト総出演の群衆シーンは見応えがある。2020年モントリオール・シネ・ヌーヴォー映画祭での観客賞受賞をはじめ、海外の映画祭で高い評価を得た。

 このワークショップでは2週間の募集で697人の俳優志望者らが応募し、計3回の審査で51人に絞られ、挙手制にしてやりたい役を募り、園監督が最終的に配役を決めた。

 絶えず殺気立っているワケありの女、安子役を射止めた藤丸は「自分とのシンクロ率では乖離(かいり)している人ですが、最初から演じたいと思っていました。私にとって、愛すべき運命の子。破天荒だし、感情を爆発できる。内には非常に繊細なものがたくさんあるので、きっちりと表現してあげたいという思いで演じました」。

 亡き俳優志望の夫の夢を実現するために、オーディションに応募する若き未亡人・切子役の黒河内は「あまりお芝居しているという感覚ではなかったです。良く見せようとかではなく、自分が想像する切子を素直に演じました。クライマックスはのどを痛めて体調を崩してしまい、のどあめと点滴で乗り切りました。体調はつらかったのですが、精神的にはかえって吹っ切れた感じがありました」と振り返る。

 原発、震災などタブー視されがちな題材を描く型破りな鬼才・園監督。2人からは、どんな人物と映ったのか。「まず『自由にやってみるか』とおっしゃってくれました。技術面の指示以外は本当に全部自由。大変リスペクトできる方」(藤丸)。「すごく無邪気な方でしたね。撮影初日が赤いポストに投函するシーンだったんですね。とても暑い日だったんですけども、園さんは近くにあった水路に飛び込んで、台本で足を拭かれていた(笑)。衝撃を受けましたね。でも、その台本はその後も使っているんです(笑)。自由な方でした」(黒河内)。

次のページへ (2/3) 27歳・藤丸は「アニストテレス」特別賞受賞、22歳・黒河内は不登校を経験
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