画鋲の絨毯を踏みしめる喜びをあなたは知っているか? 画鋲デスマッチの魅力とは

「これが体だったら…」こみ上げる恐怖

 王座を防衛したチャンピオンにベルトを贈呈し、握手した。力強く握り返してくれたが、その顔には、もちろん王座を守り抜いた喜びはあるが、命がけの戦いをともに戦い抜いた敗者へのリスペクトが浮かんでいた。大けがもなくリングを降りられる安ど感もあるだろう。それこそ神々しかった。

 感慨にふけりリングを下りたが、本部席に戻ると、違和感に襲われた。靴の裏をチェックすると、一面に画鋲がビッシリだった。

「わ! こんなに刺さっている!」

 これでは電車に乗って帰れない。ひとつひとつ抜いて行ったが、なかなか大変だった。デスマッチの凶器クリエイターでもある菊田一美に画鋲抜きを借りたところサクサク抜けた。無数の小さな穴の開いた靴の裏。「これが体だったら」と思うと…。

 激闘を終えた2人は、シャワーを浴びるのも、しみて大変だろう。リング上ではアドレナリンが出ているから、痛さも半減するのだろうが、クールダウンしてくるシャワー室では、現実の痛みを実感する。あるストロングBJの選手が「デスマッチファイターは、シャワーで絶叫しています」と、明かしてくれた。

 デスマッチ戦士は全身傷だらけ。闘う度に傷が増える。とはいえ「デスマッチを極めたい」という熱い思いは、増すばかり。そんな思いはファンにもしっかり伝わっている。

 以前に画鋲を募った時は、各所で品薄になったという。通販サイトでは「売切れ」の表示。文具屋で「何かあるんですか? 急に画鋲が売れ出して。普段はそんなに売れるものではないから、在庫もあまり置いてないので品切れですよ」と言われた知人もいる。

 今では虫ピンのようなカラフルな画鋲が多いが、大日本が募集しているのは「あくまで金色のオーソドックスな画鋲」。差し入れを考えているファンは、売り切れる前に入手した方が良さそうだ。

 剣山は華道で使う道具だが、こちらも品薄になりかねない。刺さって時間が経つと抜けなくなるというが、大日本のドクター水上リング・ドクターは剣山を抜くことに関しては世界的権威とされるゴットハンド。だからこそ選手たちも安心して激しい試合ができるのだろう。

 昔の映画のタイトルを思い出した。「傷だらけの人生」。それをまさに地で行くデスマッチファイターから目が離せない。

次のページへ (3/3) 【写真】8・28後楽園ホール大会に臨む伊東竜二
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