【私の宝物】雅楽師・東儀秀樹の宝物は思い出詰まったクラシックカーAC・ACE、ギブソンのギター、絵の具

思い出の詰まったペリカン社の水彩絵の具セット【写真:乃木裕】
思い出の詰まったペリカン社の水彩絵の具セット【写真:乃木裕】

一番の宝物は東儀さん自身の中に…!?

 小学生の頃から愛用する、ドイツ起源の文具メーカー・ペリカン社の水彩絵の具セットも、大切な品だ。

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「小学校高学年の頃は絵描きになりたい、と言っていたほど絵を描くのが好きで、静物や風景をよく描いていました。そんな僕を見て両親は、長髪でベルボトルのパンタロンを履いたヒッピー風の芸大の油絵科の学生を、週1回、僕の遊び相手としてウチに呼んだんです。その人が勧めてくれたのが、この絵の具セット。プロも使う質の良い絵の具で、中学時代は美術の先生に『すごくいいものを持っているね』と言われ鼻高々でした」

 ブリキ製で固形絵の具とパレットが一体型になっていてオシャレだ。東儀さんは絵の具がなくなると買い足しながら、大事に使ってきた。

「その芸大生は『自分の手を描いてごらん。よく見ると、生物の身体ってどこも角張っていないんだよ』などと遊びながら教えてくれました。そんな思い出が、この絵の具セットには詰まっています」

 その大学生は東儀さん宅にあったギターで、反戦フォークなどをつま弾いてもくれた。その姿に魅力を感じ、絵よりも音楽に夢中になっていった東儀さん。宝物の思い出の中に、東儀さんを音楽の道へと導いたきっかけがあった。

 もしも今、天災に遭って何か一つしか持って逃げられないとしたら、東儀さんはどうするだろうか。

「何も持っていかないかもしれません。すべてを失っても、イチから面白いものを作れる自信がありますから。現に今、コロナでほとんどの仕事を失いました。危機感はありますが、悲壮感はありません。何とかなると考えられる幸せな性格です。この性格がどんな試練をも生き抜く力になっていると思いますね」

 この生き抜く力こそが、東儀さんの持つ最大の宝物のようだ。

□東儀秀樹(とうぎ・ひでき)1959年10月12日、東京生まれ。奈良時代から続く雅楽の家系で、高校卒業後、宮内庁式部職楽部に入り篳篥(ひちりき)をメインに担当。宮中儀式や皇居での雅楽演奏会などに出演していたが96年1月、宮内庁を辞め、アルバム「東儀秀樹」でデビュー。2000年、アルバム「TOGISM2」で日本レコード大賞企画賞受賞。その後もレコードディスク大賞を9度受賞するなど活躍し、舞台音楽や映画音楽も手がける。音楽以外でもCMや大河ドラマ「篤姫」(NHK)、映画「源氏物語 千年の謎」などで俳優としても活躍している。21年7月18日、「渋谷ストリームホール」で「東儀秀樹 with Shikinami コンサート」を行う。

次のページへ (4/5) 【画像】東儀秀樹さんがAC・ACEでミッレミリアに参戦した実際の写真
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