藤井2冠がストレートで棋聖戦防衛した強みはどこに? 真田圭一八段解説 藤井将棋の強さ

将棋のヒューリック杯棋聖戦5番勝負第3局が7月3日、静岡・沼津市の「沼津御用邸東附属邸第1学問所」で行われ、藤井聡太棋聖(王位、18)が渡辺明名人(棋王、王将、37)に藤井2冠が100手で勝利。3連勝で初防衛となった。この藤井2冠が2連勝でタイトル戦初防衛に王手をかけて迎えた第3局を振り返ってみたい。

藤井聡太2冠【写真:ENCOUNT編集部】
藤井聡太2冠【写真:ENCOUNT編集部】

苦しくなっても相手に分かりやすい勝ち筋を与えない

 将棋のヒューリック杯棋聖戦5番勝負第3局が7月3日、静岡・沼津市の「沼津御用邸東附属邸第1学問所」で行われ、藤井聡太棋聖(王位、18)が渡辺明名人(棋王、王将、37)に藤井2冠が100手で勝利。3連勝で初防衛となった。この藤井2冠が2連勝でタイトル戦初防衛に王手をかけて迎えた第3局を振り返ってみたい。

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 状況的には、藤井2冠にとってここから3局のうち1つ勝てばいいという圧倒的優位な状況。だが勝負に絶対はないし、藤井2冠はタイトル戦番勝負を同時進行で3つ抱えている。勝てるものなら早く勝った方がいい。

 一方、挑戦者の渡辺3冠は、実はタイトル戦でストレート負けをしたことがない。1つも勝てずにタイトル戦敗退することは許せないという、一流棋士としてのプライドを感じさせる。

 さて、第3局は矢倉の出だし。急戦矢倉を志向する藤井2冠に対し、研究範囲とばかり超ハイペースで指し手を進める渡辺3冠。第1局でも見られた展開だ。

 最初のポイントは42手目。王手に対して逃げずに△4二金右と金寄りで防いだ手だ。ちょっと指しにくい手で、渡辺3冠は熟考して▲同角成とその金を取る。これで藤井2冠の玉が薄く、不安定な形になった。玉の防御力が下がると、技を掛けられ易くなり気の抜けない展開となる。

 ここから難解な展開となるが、持ち時間を投入せざるを得ない局面が続き、藤井2冠は第2局に続き、少ない残り時間で終盤を乗り切らなくてはならなくなった。形勢は難解のまま終盤に。

 だが渡辺3冠が良くできそうな局面もいくつかあったと思う。一番腰を入れて勝利を模索したのは73手目。43分の残り時間の大部分の40分を投入して勝ちを読み切ろうとした。

 だが結果的に、はっきりとした勝ち筋を見極めるには至らなかったようだ。この辺りが藤井2冠の凄さで、難解か或いは少し苦しい位の局面になっても、相手に分かりやすい勝ち筋を与えない。形勢のバランスが決定的に崩れることが殆どない。

次のページへ (2/2) ギリギリの展開をものにする凄みを感じた棋聖戦だった
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