アントニオ猪木氏、車いす姿でも元気を発信「あるがままで」という生き方

2020年も挑戦の年…訪朝、プラズマ、YouTuber

 術後に比べれば体調は改善し、短い距離であれば車いすがなくても歩行できるようになった。一時期に比べ、顔色もよくなり「まあ、見てのとおりですよ」と、猪木氏に暗さはない。20年は昨年果たせなかった北朝鮮への訪問はもちろん、新たな挑戦も予定している。

 まずは九州大学の渡辺隆行教授とのタッグで進めるプラズマだ。1万度の高温でゴミや金属までも蒸発させる技術で、環境問題への実用化が期待されている。

「1つの役割というか、使命。これは健康じゃなきゃできないし、海外にも飛ばなきゃいけない。福島の原発の問題、世界のゴミ問題、自分の中で燃えるものに出会えたというのはすごくよかった。ゴミ問題は大変な問題だけど、それと同時に、今地球を守るというもっと大きなテーマで捉えてもらえるようなメッセージを送って、実際メッセージだけでなくて、行動で起こしていく」と意気込んだ。

 さらに、猪木氏はYouTuberにも興味を示す。

「昔から言ってたけど、なかなかみんなそこに行動を移せなかった。やっぱり発信というのは大事。今言ったようなことがどこまでみなさんが知っているか。猪木がプラズマ?、知らない人がほとんど。そうなんだという気づきを世の中に伝える意味でも、YouTubeをもっと利用できたらいい。ファンは本当にありがたいことで、いろんなスターが出てファンがいるんだけど、長嶋信者っていう人はいないでしょ。あるいは王信者っていう人はいない。信者ってつくのは猪木だけ。彼らが外へ発信してくれる」

 今年の漢字に選んだのは「道」だ。猪木氏にとって象徴的な文字だが、日本への風刺も込めている。最大の注目イベントとされる東京五輪は準備段階からドタバタ続き。国や政治がスポーツを利用し、伝統の武道は国際ルールの波に飲まれ、アマチュア精神も揺らいでいる。「思うことは、オリンピック精神ってどこいっちゃったの。あるいは日本の柔道とか、空手道とか、その道がなくなっちゃって。プロとかアマとかも混同して分からない。みんなプロでしょ、あいつら。コマーシャル出て」と語気を強めた。

 その中で、猪木氏は1本の揺るぎない「道」を示していくつもりだ。2月20日には77歳の誕生日を迎える。「喜寿がちょうどブラジル行く時に爺さんが死んだ年。1つの目標が77だった。そこから1つの世界に向けての発信を元気よくやっていきたいと思っています」。今年はデビュー60周年の節目の年でもある。「今さら体を動かしたくない自分と、いやいや頑張んなきゃいけないという自分との闘いなんです」。対極の感情が交差しつつも、猪木氏の目には闘魂の火がはっきりと宿る。それは消えることなく、ますます勢いを増していく。

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