小柳ゆき、苦悩を激白「仕事以外で歌えなくなった」 挫折乗り越え見つけた“自分”

デビュー当時は自分のことで精一杯だったという【写真:塩見徹】
デビュー当時は自分のことで精一杯だったという【写真:塩見徹】

みなさんの期待を裏切ってはいけない

――そしてようやくデビューしました。

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「うれしかったですね」

――そんな小柳さんが先ほどおっしゃったデビューしてまもなく感じた“ギャップ”。これは想像していた景色と現実の景色が違ったということでしょうか?

「そうですね。デビュー前ってもっとゆっくりいろんなことを一つ一つ吸収しながらクリアしていく。そんなイメージがありましたが、突然ワーッと動いていくその流れについていけなくて、ちょっと怖いと感じたんです。特に『愛情』(2000年4月)以降は、ものすごくタイトなスケジュールだったので、『ちょっとついていくのが……』という不安がありましたね」

――プロとはいえ、まだ高校を出たばかりですし、不安になるのも仕方がなかったのかなと。

「考え方も偏っていましたし、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いで客観視できなかったんだと思います」

――“小柳ゆきは歌がうまい歌手”というイメージがデビューからすぐに定着しましたよね。「本当に歌っているのは18歳なの?」と驚いた記憶があります。

「今振り返ってみると、そう感じてくださったことはとてもありがたいことなんですが、自分はまだまだ発展途上でうまいと言われるようなレベルに達していないと分かっていたので、そのギャップもありました」

――そんな葛藤を裏で抱えながら表では次々と出す曲がヒットしていきました。

「そうですね。そういった皆さんの期待を裏切ってはいけないと思ってどこかで自分を武装していましたね。だからうれしさに反比例して、さらに余裕がなくなり、周りに追いつけなくなっていきました」

――そうだったんですね。

「歌が好きで仕事でもプライベートでもずっと歌ってきたんですが、仕事以外では歌わなく……歌えなくなってしまったんです」

――それは知らなかったです。

「それで“このまま歌を続けていけるのかな?”と思って、少しだけお休みをいただいて、まったく歌と関係のない環境に身を置いて『もう1度自分を見つめ直したい』と事務所にお願いしてロンドンに行かせてもらったんです」

――小柳ゆきという存在はもはや「個」ではなく「集合体」にまで大きくなっていたと思います。そんな中での決断は、決してたやすいものではなかっただろうなって?

「確かに今考えるとそうなんでしょうが、でも当時は目の前のことに必死で自分のことで精一杯で、周りを考える余裕はなかったんです」

――それ以上に歌が歌えなくなってしまうことへの危機感があったと?

「歌うことが大好きな気持ちを持ち続けたいという思いと現実との板挟みで壁にぶち当たってしまい、自分では解決できなくなっていて。でも歌手は続けていきたいから、今の状況を変えたくて、自分を見つめ直す時間が欲しかったんです。きっと私の覚悟が足りなかったんでしょうね」

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