【プロレスこの一年 ♯31】控え室の些細な誤解から生まれたプロレスと空手の抗争、三沢が5冠達成 92年のプロレス

三冠奪取の三沢光晴が川田利明と世界タッグも制し5冠王を達成(92年12月)【写真:平工 幸雄】
三冠奪取の三沢光晴が川田利明と世界タッグも制し5冠王を達成(92年12月)【写真:平工 幸雄】

専修大学レスリング部主将・秋山潤が全日本に入団

 WARは早くもビッグマッチを仕掛け、9・15横浜アリーナにリック・フレアーを招聘。天龍がフレアーのWWF世界ヘビー級王座に挑んだが、1-1のスコアで引き分け王座奪取はならなかった。しかし天龍は、10・23後楽園で越中&木村組を破ると新日本へ正式に宣戦布告。新日本11・23両国に乗り込み、天龍&石川敬士&北原光騎組が越中&木村&青柳組と対戦し勝利を収めた。

 試合後には、翌年1・4東京ドームでの長州戦を認めさせ、リング上ではアントニオ猪木とも対峙した。天龍が対新日本の姿勢をあらためて明確にしたのである。また、この大会では佐々木健介が変身したパワー・ウォリアーがホーク・ウォリアーとのコンビで日本デビュー。ニュー・ロード・ウォリアーズからヘルレイザーズに改名し、12・14大阪でスコット・ノートン&トニー・ホーム組を破りIWGPタッグ王座を奪取した。

 この年、全日本では2月3日に専修大学レスリング部主将・秋山潤の入団を発表、9・17後楽園で小橋建太を相手にデビュー戦を行った。8・22武道館では三沢光晴がスタン・ハンセンを破り、3冠ヘビー級王座に初めて到達。三沢は川田利明とのコンビで田上明&秋山組を破り、年末恒例の「世界最強タッグ決定リーグ戦」も初制覇するとともに世界タッグ王座も奪取、一気に5冠王を達成してみせた。

 この年、UWFインターナショナルが、前年4月の「八百長野郎」発言でSWSを解雇された北尾光司をリングに上げた。北尾は5・8横浜アリーナで山崎一夫にKO勝ち。しかし10・23武道館では高田延彦が出陣し、右ハイキック一発で爽快すぎるKO勝利、プロレスファン溜飲を下げた。

 インディーではデスマッチ系の団体が過激なデスマッチで勝負に出た。W★INGでは2・9後楽園で松永光弘が高さ6メートルのバルコニーダイブを敢行。8・2船橋では松永とミスター・ポーゴがファイヤーデスマッチで戦った。また、12・20戸田では松永がレザーフェイスと五寸釘ボードデスマッチ。松永が熱狂的信者を生み出した年でもあった。

 W★INGの誕生を許したFMWだが、ファイヤーデスマッチを実現させたのは大仁田厚の方が先だった。大仁田は5・6三田でターザン後藤と組み、ザ・シーク&サブゥー組とファイヤーデスマッチに臨んだ。しかし、あまりにも火の勢いがすさまじくリング上が酸欠状態となりノーコンテストの裁定に。しかし大仁田は5・24有明コロシアムでレオン・スピンクスに勝利すると、6・30関ヶ原でのノーピープル・ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチでタイガー・ジェット・シンを粉砕。9月19日には横浜スタジアムに進出し、ノーロープ有刺鉄線電流地雷爆破デスマッチでシンを返り討ちにしてみせた。同大会では全日本女子プロレスからブル中野と北斗晶が参戦し、FMW女子部の工藤めぐみ&コンバット豊田組に圧勝。女子プロ対抗戦ブームへの発火点となった。

 この年のはじめにはジャパン女子プロレスが解散。キューティー鈴木、尾崎魔弓らのJWPが4・3後楽園、風間ルミ、神取忍率いるLLPWが8・29後楽園で旗揚げ戦を開催した。11月26日には全女の川崎大会でFMWの土屋恵理子&前泊よしか組とJWPの尾崎&ダイナマイト・関西組が参戦。尾崎組は豊田真奈美&山田敏代組のWWWA世界タッグ王座に挑戦し、対抗戦時代の幕開けを告げる名勝負をやってのけた。

 また、ルチャ系ではユニバーサル8・15後楽園にザ・グレート・サスケが凱旋。サスケは11月27日、地元盛岡にて初のみちのくプロレス主催興行を開催した。ローカルプロレスの夜明けである。(文中敬称略)

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