漫画家・矢口高雄さん追悼 こだわり反映した「釣りキチ三平」は釣り人をワクワクさせた

「釣りキチ三平」全65巻を愛蔵する世良康氏【写真:ENCOUNT編集部】
「釣りキチ三平」全65巻を愛蔵する世良康氏【写真:ENCOUNT編集部】

カジキを釣るためにハワイに3年通う

 拙著「釣人かく語りき」(つり人社刊)のインタビューで、矢口さんは次のように語っている。
「釣り漫画でね、星飛雄馬の“消える魔球”のようなことを描いていくと読者が信用しなくなるんじゃないか」と。

 一世を風靡した漫画「巨人の星」の消える魔球は、科学的に証明できないフィクションであり、漫画の健全な発展につながらないというのである。つまり、漫画といえどもリアリズムを追求しなければ未来はないという姿勢を貫いた。

 そのため、「釣りキチ三平」では釣りマニアが読んでも納得できるストーリーや描写に心魂を注いだ。具体的には、日本のフナ釣りからアラスカのキングサーモン釣りまで、あらゆる釣り方を研究し、実際に現地の名人上手に話を聞き、そして実際に釣って体験して、やっと作画に取りかかるという徹底ぶりだ。

 ハワイ・コナ島でのブルーマーリン(カジキ)釣りの場合、連載をいくつも抱えて超多忙な日々の合間を縫うように現地に飛んでトローリングを試みた。が、なかなか釣れず、4回目の釣行でやっと1メートル50センチをヒット。最初の渡航から3年以上経過していた。

 これが、連載の中でも人気の高い「ハワイのブルーマーリン編」として結実したのである。実際に体験しているだけに、巨大マーリンを釣り上げるシーンは迫力満点である。

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