「日産の工場で塗ったまんま」62年式国産旧車…25年前に声をかけられた“大学生”が継承「責任重大」
「師匠の形見みたいなもの」――。40代の男性会社員のオーナーが大切にするのは、1962年式の初代ブルーバードだ。黒い塗装も含めて、新車時のまま。昨年亡くなった前オーナーとは、大学生時代から約25年にわたって交流を続けてきたという。60年以上守られてきた愛車を受け継いだ男性に、車への思いを聞いた。

【愛車拝見#375】「近くなら遊びにいらっしゃい」偶然の出会いから始まった“師匠”との約25年
「師匠の形見みたいなもの」――。40代の男性会社員のオーナーが大切にするのは、1962年式の初代ブルーバードだ。黒い塗装も含めて、新車時のまま。昨年亡くなった前オーナーとは、大学生時代から約25年にわたって交流を続けてきたという。60年以上守られてきた愛車を受け継いだ男性に、車への思いを聞いた。(取材・文=平木昌宏)
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日産車の歴史や名車の魅力を伝える「プリンスの丘 自動車ショウ」が東京・武蔵村山市のイオンモールむさし村山 つむぐひろばで開催された。約138台が参加した会場で、ひときわ目を引いたのが黒の初代ブルーバードだ。
丸形ヘッドライトを囲むクロームメッキ、横一文字に伸びるグリル、艶を保った黒いボディー。1962年式とは思えないほど、端正な姿をとどめている。会場に並ぶ旧車の中でも、昭和の空気をそのまま残したような佇まいが目を引いた。
新車の登録時を維持しており、黒い塗装も同様で、「日産の工場で新車の時に塗った塗装のまんまです」と説明する。屋根付きの車庫にずっと保管されていたことが、良好な状態を保てた理由だという。
この1台が男性のもとへやってきたのは昨年。しかし、前オーナーとの出会いは約25年前にさかのぼる。
古い車に興味を持ったきっかけは、子どもの頃にテレビで見たクラシックカーだった。大学生の頃には自身も旧車に乗り、イベントに参加するようになった。するとある時、会場で「あなたの車、うちの近くでよく見かけるんだけど」と声をかけられた。
前オーナーから「近くなら遊びにいらっしゃい」と誘われ、自宅を訪ねると、そこにこのブルーバードがあった。男性は「そこからのお付き合いですね」と振り返る。
偶然にも、声をかけてきた前オーナーは近所に住んでいた。その後は一緒にイベントへ出かけ、オイル交換を手伝うなど、日常的に交流を重ねた。
大学生だった男性は、やがて結婚し、子どもも生まれた。年月が流れても、前オーナーとの付き合いは変わらなかった。妻や子どもにとっても、ブルーバードは以前からなじみのある特別な1台だ。
家族は旧車の趣味を一緒に楽しむタイプではないというが、妻も子どもも前オーナーとの付き合いをよく知っており、「この車に関しては、文句は言わないですね」と話す。

大きなトラブルはほとんどない
前オーナーは、60年以上大切にしてきたブルーバードの行く末をずっと考えていたという。家族の中に旧車を引き継ぐ人もおらず、業者へ売却すれば、その後どこへ渡るのか分からない。そこで、託す相手として選んだのが、近所に住み、長年交流を続けてきた男性だった。
前オーナーは、業者に売却すると「その後どこに行っちゃうか分からない」と考えていた。近所に住み、こうした車を大切にしてくれる男性のもとにあった方が「自分の気持ち的にもいい」として、「ぜひ引き継いでほしい」と伝えたという。
そして男性は昨年、ブルーバードを引き継いだ。前オーナーが亡くなったのも、その年のことだった。60年以上大切にされてきた1台を託された責任を、男性は改めて感じている。
「単に車っていうよりも、その方が60年以上持っていた車なんで。私が飽きたからって売っちゃうわけにもいかない。責任重大ですね」
現在は、旧車イベントに参加するほか、コンディション維持のため、月に1~2回ほど近所を走っている。高速道路に乗らなければ、「結構普通に周りの車の流れに乗って走れます」という。
八王子で開かれたイベントに参加した際、キャブレターが不調になり、来場者が見守る中でレッカー車に積まれたことはあるが、これまで大きなトラブルはほとんどない。
60年以上にわたって大切に維持されてきたブルーバード。男性は、これからもできる限りオリジナルに近い状態を保ち、走れる限り走らせていきたいと考えている。
「前のオーナーさんは、旧車のことをいろいろ教えてくれた師匠のような人です。この車は、師匠の形見みたいなもの。師匠が残した遺品を引き継いだ、というイメージです」
師匠から託されたブルーバードは、これからも男性の手で大切に受け継がれていく。
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