「腎臓をひとつ失いました」接客業の“美徳文化”に悲痛な訴え 店主が後悔する「あとで飲もう」
キッチンカーの営業中、トイレに行って客を待たせないよう、水分摂取を控え続けた結果、腎臓を一つ失った――。そんな男性の告白がSNS上で大きな反響を呼んでいる。男性は「この夏、『あとで飲もう』をやめてください!」と切実に訴える。腎臓の異変が発覚するまでの経緯や現在の生活、投稿に込めた思いを本人に聞いた。

「片方が抜ければ回らなくなる」沈黙の臓器にダメージ蓄積
キッチンカーの営業中、トイレに行って客を待たせないよう、水分摂取を控え続けた結果、腎臓を一つ失った――。そんな男性の告白がSNS上で大きな反響を呼んでいる。男性は「この夏、『あとで飲もう』をやめてください!」と切実に訴える。腎臓の異変が発覚するまでの経緯や現在の生活、投稿に込めた思いを本人に聞いた。
「腎臓をひとつ失いました。原因は水分不足、『お客様に迷惑をかけたくない』という気持ちでした。キッチンカー営業中にトイレに行けば、お客様をお待たせしてしまう。だから出店日は朝から水分を控える。それをずっと続けていました」
7月19日、こうXに投稿したのは、おにぎり専門キッチンカー「おにぎり屋かなたけ」を営む三平武範さんだ。三平さんは22年間パチンコ業界で働き、その後、介護職を経て、貯金をはたいてキッチンカーを始めた。店名の「かなたけ」は、愛する娘と息子の名前から取った。
現在49歳の三平さんは、妻の千恵美さんとともに、埼玉・八潮市を拠点に各地へ出店。さらに、貧しかった若いころに多くの人に助けてもらった経験から、「おにぎりでえがお」を理念に掲げ、子どもたちへの無償のおにぎり配布にも取り組んでいる。
自身の経験を踏まえて、三平さんは「この夏、『あとで飲もう』をやめてください! 仕事中でも、運転中でも。トイレに行く時間より、失うものの方がずっと大きいから。僕の右腎の分まで、水分補給してくださいね」と呼びかけた。
この投稿に対して、SNS上では「とても大切なメッセージ。健康は何より大事ですね」「どんな仕事をしている人に対しても『仕事中に水を飲むな!』とか言うのは絶対にやめてほしい」「改めて『水分を取らずにトイレを我慢する』ことの怖さを感じました」といった声が寄せられた。
「おにぎり屋かなたけ」がグランドオープンしたのは2024年9月。キッチンカーは暑い日だと車内がサウナのような高温になるが、三平さんは開店当初から、出店日は水分を控えていた。
「営業中にトイレに行けば、お客様をお待たせしてしまう。夫婦2人だけの現場なので、片方が抜ければ回らなくなる。そう思い込んでいました」
異変を知らせたのは、痛みや体調不良ではなく、健康診断の数値だった。23年8月には正常範囲だった血液中のクレアチニン値が、26年6月には「1.27」に上昇。腎臓の働きを示すeGFR(推算糸球体ろ過量)は「49.2」で、慢性腎臓病のステージG3aと診断された。また、精密検査の結果、右腎臓の萎縮、水腎症グレード2、尿管が狭くなっていることも判明した。
妻の言葉「おにぎりより、あなたの体が大事」
腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる。投稿では「腎臓をひとつ失った」と表現しているが、手術で摘出したわけではない。右腎臓の機能はすでにほぼ失われ、「手術で治す段階を過ぎている」と医師から説明を受けた。摘出する必要もないという。
「痛みも自覚症状もないまま、ここまで進行していました。体調を崩したというより、『気づいたときにはもう遅かった』というのが実感です」
何より胸にこたえたのは、妻の千恵美さんから言われた「おにぎりより、あなたの体のほうが大事」という言葉。絶句した。
「お客様のためだと思ってやっていたことが、一番近くにいる人を不安にさせていたと気づかされました」
幸い、左の腎臓は正常に機能している。医師からは「暴飲暴食をしなければ、このまま一つの腎臓で大丈夫」と説明され、現在は仕事や日常生活に支障はない。三平さんは6月以降、禁酒したうえで我慢せずに水分を補給し、水や麦茶を1日2リットルは飲むようにした。塩分やタンパク質の取り過ぎに注意するなど、食生活も見直した。
その結果、7月13日の検査ではクレアチニン値が「1.21」に、eGFRが「51.5」に改善。「失ったものは戻りませんが、『今からでも守れるものはある』ということが数字で証明されました」と希望をもって話す。
今回の投稿を受けて、三平さんのもとには、接客業や看護・介護職、運転業、保育・教育関係者などから「私も水分を我慢していた」との声が相次いだという。
「『30年前、コンビニを経営していた親戚が同じ理由で亡くなった』という声もいただきました。これは私だけの話ではなく、『お客様に迷惑をかけたくない』という善意が働く人の身体を削っている、日本中で起きている問題なのだと痛感しました」
最後に、三平さんは「『あとで飲もう』をやめて、『今、飲もう』。もう令和時代です。水分補給をしても、誰も文句は言いません」とし、「トイレに行く数分より、失うもののほうがずっと大きいです。どうか、今飲んでください」と訴えた。
あなたの“気になる”を教えてください