「小腸に穴があいた」SNS投稿の衝撃 糖尿病治療薬マンジャロに潜むリスク「低血糖症状に気づいていないケースも」

糖尿病治療薬マンジャロを巡り、ネット上で深刻な副作用が報告され、波紋を呼んでいる。6月に投稿されたのは、糖尿病治療薬として使用したものの、「小腸に穴があいた」という衝撃的なもの。体重減少効果が注目され、近年では「痩せ薬」として美容目的での利用も急増しているマンジャロだが、そのリスクはどれほどのものなのか。豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニックの澤口達也院長に聞いた。

糖尿病治療薬「マンジャロ」が若者の間で“痩せ薬”として流通している(写真はイメージ)【写真:写真AC】
糖尿病治療薬「マンジャロ」が若者の間で“痩せ薬”として流通している(写真はイメージ)【写真:写真AC】

マンジャロは2型糖尿病の治療薬として承認

 糖尿病治療薬マンジャロを巡り、ネット上で深刻な副作用が報告され、波紋を呼んでいる。6月に投稿されたのは、糖尿病治療薬として使用したものの、「小腸に穴があいた」という衝撃的なもの。体重減少効果が注目され、近年では「痩せ薬」として美容目的での利用も急増しているマンジャロだが、そのリスクはどれほどのものなのか。豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニックの澤口達也院長に聞いた。

 マンジャロは2型糖尿病の治療薬として承認されており、医療保険が適用されるのも、2型糖尿病の治療目的で使用する場合のみだ。一方、ダイエットや美容目的で使用する場合は自由診療となり、費用は全額自己負担となる。

 マンジャロが保険診療下で使用される場合には、まず糖尿病の診断が必要となる。

「糖尿病の診断は診断基準(空腹時血糖値126mg/dl以上または随時血糖値200mg/dl以上、HbA1c 6.5%以上を同時に満たすことが一般的)にのっとり行われます。診断基準を満たした場合には糖尿病という診断になり、その中でも2型糖尿病と診断された人のみマンジャロの適応があります」

 ただ、2型糖尿病と診断されたからといって、即座にマンジャロが処方されるわけではない。

 2型糖尿病は、過食や運動不足などの生活習慣の乱れが原因にあり、全糖尿病患者の90%以上を占めるが、その治療ステップは慎重に進む。

「2型糖尿病でも最初からマンジャロが使われることはあまり多くはなく、まずは内服薬で治療開始されることが通常です。一方で、高度の肥満や肥満による障害(重度の高血圧や脂質異常症、高度の脂肪肝や睡眠時無呼吸症候群など)を併発している場合には最初からマンジャロが処方されるケースもありえます。どの糖尿病治療薬から治療開始するかは処方する医師の判断によります」

 では、なぜ今回のSNS投稿のように、使用開始直後に重い症状が現れるケースが起きているのか。その背景には「投与量の問題」に加え、「適切な管理体制の不足」があると考えている。

 マンジャロに限らず、どの薬も使い始めに副作用が出やすい傾向がある。そのため、マンジャロは副作用リスクを抑えるため、通常は開始用量である2.5mgを週1回、4週間継続した後、維持用量と言われる5mgへ増量するのが一般的と言われている。

 保険診療で2型糖尿病を治療する場合、このステップは厳守される。しかし、一部の自由診療(自費診療)の現場では、こうしたルールが徹底されていないケースもあるという。

「マンジャロは用量に比例して値段(薬価)もあがりますが、マンジャロに関して無知な医者が自費診療で処方する場合には、『高用量の方が効果が高い』という口車に乗せて、より売り上げを出すために5mgやそれ以上の用量から開始してしまっているケースもあると耳にしております。医師の風上にも置けませんが、その様な使い方をしてしまうと副作用リスクも上がってしまうと考えられます」

 慣れない体にいきなり高用量を投与すれば、副作用のリスクが跳ね上がるのは明らか。マンジャロの副作用には、軽い胃もたれや吐き気など、体が慣れる過程で起こるものがある。

「救急車を呼ぶほどのケースは極めてまれではありますが、生活に支障が出るような強い症状(酷い腹痛、下痢、便秘、吐き気など)が出た場合には使用を中止し、医療機関を受診するべきでしょう。軽い胃もたれ、軽い嘔気くらいの副作用であれば、出ることも少なくなく、その場合は逆に投与を続けていくことで身体が慣れてくることも多いです」

 実際の(保険適用の)医療現場で高用量から始めるケースはありませんが、「少量からの開始が守られていても副作用の説明や定期チェックがしっかりと行われていないことが一番の問題と考えます」と続けた。

 また、美容目的での利用者に看過できないのが、「低血糖」のリスクだ。

「2型糖尿病の人にマンジャロを使用する場合は血糖測定器を渡して血糖値をモニタリングすることが多いですが、自費でマンジャロを使用される場合には血糖値をモニタリングされることがなく、低血糖症状に気づいていないケースもあると考えられます。低血糖の場合、冷や汗や動悸、体が熱くなるといった明らかに異常と考えられる症状が出る場合もあれば、空腹感や倦怠感、なんとなくボーっとする、といった症状で実は低血糖ということもあるため、低血糖症状に関しての説明を受けていないと患者さんも知らずのうちに低血糖になっている可能性もあります」

 既往歴にも注意が必要だ。特に過去に開腹手術を受けた経験がある人などは、理論上、腸閉塞などの消化器疾患リスクが高まる可能性があるという。投稿のような症状も、起こりうるというわけだ。

「急性膵炎や胆管炎、腸閉塞といった命に関わる副作用を生じることもある薬ですので、その危険性を理解し、適切な使い方をすべきであることを患者さんはもちろん、処方する医師も認識するべきです」

美容目的の場合、副作用の治療費も処方したクリニックや患者自身の負担

 現在、オンライン診療でスマホ一つでマンジャロが手に入る時代。しかし、そこに潜む「無責任さ」には危機感を抱いている。

「オンラインで自費で処方している医療機関では、電話やLINEのみの診察で、患者さん側からは本当に医師かもわからない相手から処方をされていたり、医師もマンジャロのことをよく理解していないケースもあります」

 また前述の通り、マンジャロは2型糖尿病の治療薬として承認されており、2型糖尿病の治療を目的として適切な使用がなされた際に重篤な副作用が生じた場合には医薬品副作用被害救済制度の対象になる。

 一方、ダイエットや美容目的でマンジャロを使用する場合は適用外使用となるため、万が一健康被害が生じても、同制度の救済対象外となり、原則、副作用の治療費も処方したクリニックや患者自身の負担となる。

「安さ」や「手軽さ」を売りにする広告は魅力的だが、副作用が起きた際にそのクリニックが責任を持って対応してくれる保証はない。

「安さに飛びつかず、適切な処方ができる医療機関で状態を逐一確認してもらいながら処方を受けるのが良いと思います」

 こうした事態を受け、厚生労働省も16日、医療機関に対し、添付文書に基づく適正使用や副作用発生時の対応体制の整備などを要請。製薬企業に対しても注意喚起を求めるなど、適応外使用(ダイエット目的など)による健康被害を防止するための異例の対策に乗り出した。

 美容目的の「痩せ薬」として大ブームを起こしているマンジャロだが、その使い方は本当に正しいのか。一度、立ち止まって考える必要がありそうだ。

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