コロナショックで転職し派遣で看護助手へ 大卒アラフィフ男性が語る率直な胸の内

新型コロナウイルス感染症の影響で職を失ったり、収入減少で苦しんだりしている人は少なくない。密かにアルバイトを始めた人もいれば、思い切って転職した人もいるだろう。誰しもひとごとではない。都内で母親と2人暮らしをするアラフィフの伊藤優樹さん(仮名)は、思い切って転職した1人。長年、慣れ親しんだ仕事を離れるのはさぞつらかったに違いない。どのように気持ちを切り替えたのか、そして、実際に転職した今の率直な心境を聞いてみた。

コロナショックで離職、転職した人は少なくない【写真:ENCOUNT編集部】
コロナショックで離職、転職した人は少なくない【写真:ENCOUNT編集部】

「辞める」は耐えがたいので「休業中」と考えることにした

 新型コロナウイルス感染症の影響で職を失ったり、収入減少で苦しんだりしている人は少なくない。密かにアルバイトを始めた人もいれば、思い切って転職した人もいるだろう。公務員でもないかぎり、誰しもひとごとではない。都内で母親と2人暮らしをするアラフィフの伊藤優樹さん(仮名)は、思い切って転職した1人。長年、慣れ親しんだ仕事を離れるのはさぞつらかったに違いない。どのように気持ちを切り替えたのか、そして、実際に転職した今の率直な心境を聞いてみた。

 8月の終わりに、都内の大学病院で看護助手の仕事を始めました。それまでは、フリーで建築模型――マンションのモデルルームに飾る模型を、模型会社から請け負って作っていました。ところが、コロナで緊急事態宣言が出て建築の現場も4月にストップし、私がこの冬に請け負っていた模型は、結局、納品することができませんでした。つまり、それによる報酬はゼロ。その後も収入が途絶えてしまいました。

 もともとフリーなので収入は不安定だったのですが、それでも大学を出てホテルやIT企業で働いた後、数年学んで20年ほど前にこの仕事を始めてから、わりと順調に仕事がありました。高給とはいえないものの、モノ作りが好きな私の性に合っている仕事でした。なので、2月頃から3~4か月の間、「ほかに仕事を探さなければいけないかも」と悩んでいたときは、さすがにとても寂しかったです。今でも私が模型を作っていたのと似たようなマンションを見かけると、じーっと見てしまいます。「辞めるんだ」と思うと耐えがたい。だから、「今は休業中でまた戻るんだ」と思うことにしました。逆に、サラリーマンじゃないから、また戻れる。そう考えられるのは救いですね。

 ただ現状、マンションは供給過剰なうえ、このコロナショックで収入が減った人が増え、今後、新築マンションを購入する人がどれだけ増えるのか、元のように模型の需要も戻るかどうか、非常に不透明だと考えています。それで、思い切って転職することにしたわけです。インターネットの求人情報サイトに登録して転職活動を始めたのは4月。最初は社員の仕事を探し、いくつか応募しましたが全てはねられてしまいました。たぶん年齢のせい。この年齢で社員の職を得るのは難しいですから。

派遣で月22~23万円の看護助手の仕事に

 4か月かけてたどり着いたのが、今の看護助手の仕事でした。仕事内容は看護師さんが仕事をしやすいようにするための雑用。大きく分けると5つあります。患者さんの食事の配膳、患者さんや患者さんのご家族の病院内の案内、輸血用の血液など物の運搬、点滴のチューブなどの備品や機材の補充、ナースステーション周りの消毒です。

 どれも難しい仕事ではありません。少しの思いやりがあればできる、単純な仕事です。難しい仕事を新しく覚えるストレスがなかったことは、とてもありがたかったですね。患者さんに対しては、気分が下がりがちな入院生活のなかで、一瞬でもホッとできる瞬間があればいいな、と思って接しています。

 勤務形態は派遣会社からの派遣で、勤務時間は午後3時45分から午後11時まで、休憩を除くと1日6時間半。時給1600円で、休みは月8~10日。この勤務で月に22~23万円になる。ありがたいですね。勤務時間中は目が回るような忙しさではなく、マイペースで仕事ができるのも、私には良かったです。

自分に合う仕事でラッキーだった! そのワケは…

 8月の終わりから働き始めて約2か月。結果的に、この仕事は私に合っていたな、ラッキーだったな、と思っています。というのは、私は夜型人間で、模型の仕事をしていた時は、明け方5時に寝て、お昼に起きる生活を送っていました。転職後もその生活リズムを崩したくなかったんです。今の仕事はその希望通り、それまでの生活リズムで生活し働くことができる。「病院で働き始めた」というとすごく立派な志だ、「素晴らしい!」と称賛されるのですが、実はそういうわけではなくて、この生活リズムを崩さないことが、私にとっては一番大事だったんです(笑)。

 看護師という“女の世界”で働く、というのも、私には合っていました。私は女ばかりの一族に生まれ育ったので、女性のほうが接しやすいんですよ。年齢は、看護師長をのぞいて私よりみんな年下。私は年下の男から「あれして」「これして」と命令されたらイラッときますが、年下の女性からは平気なんです(笑)。

 私はもともと人と話をするのがすごい苦手。だから、1人で模型を作る仕事が合っていたんですね。今の仕事も、実は、「病院の夜間の軽作業」と募集していたので、1人でやれる裏方仕事なのかな、と思って応募したんです。ところが、採用されて配属されてみると、看護士や患者さんとコミュニケーションを取りながらやる仕事とわかり、「とんでもないところにきちゃった」と最初は焦りました。

 でも、女性は細々した心遣いを積み重ねるので、ちょっとしたことでも「ありがとう」と言ってくれるので、ストレスなく仕事ができています。男手が少ないから、ベッドの運搬とかちょっとした力仕事が必要なときに重宝がってくれますし。だからといって、楽しんで働いているわけでもないですけどね。

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