トリンドル玲奈、“愛され力”の秘密 幼少期の生活環境がもたらした俯瞰力と柔軟性
俳優のトリンドル玲奈(34)が、6月19日から上演するKERA CROSS 第七弾『シャープさんフラットさん』で3度目となる舞台に挑戦する。31歳という決して早くはないタイミングで踏み入れた舞台の世界。以降はコンスタントに出演を続けている。2月には出産を経験し、母として心機一転の生活を送る彼女に仕事への向き合い方を聞いた。

31歳と遅咲きの舞台デビュー「とても勉強になります」
俳優のトリンドル玲奈(34)が、6月19日から上演するKERA CROSS 第七弾『シャープさんフラットさん』で3度目となる舞台に挑戦する。31歳という決して早くはないタイミングで踏み入れた舞台の世界。以降はコンスタントに出演を続けている。2月には出産を経験し、母として心機一転の生活を送る彼女に仕事への向き合い方を聞いた。(取材・文=中村彰洋)
トリンドルにとって、『シャープさんフラットさん』は3度目の舞台出演。今作は、2023年に出演した初舞台『OUT OF ORDER』と同じく、俳優のマギーが演出を務める。
「もともとKERAさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)の作品にすごく興味がありました。演出のマギーさんには、初めての舞台でもお世話になっているので、安心感があります。私にとってはこの上ない環境で、絶対にやりたいなと思ったので、出演させていただくことになり、うれしいです」
初舞台のきっかけを与えてくれたのもマギーだった。「ずっと出てみたいと思っていた時に、ドラマで共演したマギーさんから『舞台とかやらないの?』と聞かれて、『やってみたいです』と答えたら、その半年後くらいにオファーをいただきました」。
31歳と決して早くはないタイミングでの舞台デビューだったが、すぐさまその魅力に引き込まれていった。
「初めて舞台を経験してみて、すごく楽しかったんです。私は、バラエティーやドラマなど、その日その日が勝負みたいな仕事が多く、映画にもあまり出たことがなかったので、舞台のように1か月間みんなで稽古して、それをお客さまに届けるという体験が初めてでした。稽古中には、自分が自信満々にやったことでさえも『それは違う』と言われてしまうこともありますが、少しずつみんなで作って道のりがすごく好きです」
飽き性だというトリンドルにとって、同じ演目を繰り返す舞台に対して不安な思いもあったというが、その考えは簡単に覆された。「実際に舞台に立ってみると、お客さんのリアクションも毎回違い、それによって私たちも少なからず変化していくんです」。同じ舞台は1度たりともないと実感したという。
「1番感情が乗ったなと思える日があった時に、『それってどういうことなんだろう』と考えてみたんです。恐らく、自分の気持ちだけではなくて、お客さんの反応や共演者の方から受け取った気持ちでそう思えたのだなと感じました。自分だけではコントロールできることではないのですが、改めて面白いなと感じることができて、千秋楽が終わっても、『まだやりたいなぁ』と思える。そういうところにやりがいを感じています」
初舞台で「右も左も分からなかった」時期を見守っていたマギーからも、成長ぶりを褒められたという。「『頼れる存在』と言われてうれしかったです」と笑う。

現場ごとに意識する自分の役割「その現場に合わせて作り上げていく」
初舞台を踏んでからコンスタントに出演を続けているが、「舞台は本当に好きなので、できれば1年半に1作くらいのペースでやっていきたいです」と目標も明かす。「普段はアウトプットが多い仕事ですが、舞台はインプットする時間が多く、稽古場でもいろいろ教えていただけて、共演者の方の様子も近くで見られる。とても勉強になるので、これからも続けていきたいです」。
また、5月22日から公開された『ミステリー・アリーナ』では、約10年ぶりとなる映画出演も果たすなど、俳優としての幅を広げている。その一方で、モデルやコメンテーターなどさまざまな顔を見せてもいるが、全てに共通したやりがいは「人から評価してもらえること」。「それがあるから成長できる」と周囲の声が糧になっている。
「私はあまり自分の中で正解を見つけることが得意ではないので、それが良い言葉でも、悪い言葉でも、誰かに何かを言ってもらえることがうれしいんです。ネットでいろいろ言われた時は、『確かにそうだよなー』と思うこともあります。稽古場や現場でも、注意していただいた時には、もちろん落ち込みはしますが、自分でも思い当たる節があると、『そういうところを直そう』と素直に思います。大人になるとあまり怒られることも少なくなってくるので、そういう意味でも、このお仕事は自分に合っているなと思います。もちろん褒められた時は、素直にうれしいです。この仕事でなければ得られない満足感がありますね」
表現の場が広がっていくことで、それぞれの向き合い方も異なってきた。役者時は「役として生きること」を考えているというが、“トリンドル玲奈”として活動している時は「染まり切らない」ことを意識している。
「私自身としてテレビに出る時や、モデル活動をしている時は、環境によって『今日の自分の立ち位置はここだ』と考えるようにしています。なるべく自分はフラットな状態で現場に入り、その現場に合わせて作り上げていくことを意識しています」
自分を俯瞰で見ることができているからこそ、求められた役目を全うすることができる。これこそが幅広いジャンルで活躍ができている要因なのかもしれない。こういった意識も幼少期の生活環境がもたらしたものだった。
「幼い頃から、引っ越しや転校が多かったので、新しい環境になじむことに慣れていて、そこに対しての柔軟性が身についているのかもしれません。逆にずっと毎日同じところにいると飽きてしまうタイプで。その土地の言語も話せないまま、現地の学校に通った経験もあり、つねに転校生という感じだったので、初めての人と話すことや、初めての環境に身を置くことに違和感を抱くことがないです」
今回挑戦する『シャープさんフラットさん』の地方公演も含め、今後も仕事で丸1日、家を空ける日も出てくる。「子どもと長い時間離れるのは初めてで、その状況に自分自身が耐えれらるのかすごく不安です。でも、ビデオ電話や写真を通して娘の存在を感じることで自分を奮い立たせて、お仕事にも全力で取り組みたいです」と母としての顔をのぞかせる。
「ママは今日も全力を尽くしてくるね」。そう声を掛けて家を出る日々が、トリンドルの新たな原動力となっている。
□トリンドル玲奈(とりんどる・れいな)1992年1月23日、オーストリア出身。2009年にデビュー。『JJ』(光文社)や『ViVi』(講談社)の専属モデルを務めるなど、モデルやタレントとして活動。2012年に『黒の女教師』(TBS)で俳優デビュー。以降多数の作品に出演。26年5月22日公開の『ミステリー・アリーナ』に出演中。6月19日からは自身3度目となる舞台KERA CROSS 第七弾『シャープさんフラットさん』が上演スタートする。プライベートでは、24年1月に俳優の山本直寛と結婚。26年2月に長女の出産を発表した。
あなたの“気になる”を教えてください