三田佳子が語る終活への本音「八千草薫さんの死に焦りも」 認知症役を“妖精”のように演じた驚きの理由
女優・三田佳子が最新作『お終活3 幸春!人生メモリーズ』(5月29日公開、監督・香月秀之)で認知症を患う母親という難役に挑んだ。生涯現役を貫くプロとしての矜持や、現場でのスタッフとのやり取り、大好きな先輩俳優の死に触れて感じた自身の「終活」へのリアルな思いなど、老いをポジティブに受け入れる人生観に迫る。

最新作『お終活3 幸春!人生メモリーズ』で認知症患う母役
女優・三田佳子が最新作『お終活3 幸春!人生メモリーズ』(5月29日公開、監督・香月秀之)で認知症を患う母親という難役に挑んだ。生涯現役を貫くプロとしての矜持や、現場でのスタッフとのやり取り、大好きな先輩俳優の死に触れて感じた自身の「終活」へのリアルな思いなど、老いをポジティブに受け入れる人生観に迫る。(取材・文=平辻哲也)
本作は、終活をポジティブに描く人気シリーズの第3弾だ。結婚準備を進める大原真一(橋爪功)と千賀子(高畑淳子)夫妻の長女・亜矢(剛力彩芽)の騒動を軸に物語が展開する中、真一のかつての後輩である加藤博(小日向文世)と、認知症を患うその母・豊子(三田)が、転居先のトラブルから大原家に一時的に居候することになり、事態は大波乱へと発展していく。
演じた豊子は、認知症が進行し、新しい環境に戸惑い、息子を始め周囲に迷惑をかけてしまうというキャラクターだ。リアルに老いや認知症の苦しみを表現するのが普通かもしれないが、三田はあえて別の視点を持った。
「大きなスクリーンの中で、認知症のおばあちゃんをリアルに演じたら、お客さんが苦しくなってしまうでしょ、あんなふうに生きてみたいと思ってもらえるような、リアルさよりも夢の部分、可愛いおばあちゃんを作りたいと思って、妖精のように演じたんです」
このアイデアに制作陣も「面白い」と即座に賛同した。
「白髪のカツラを被ってリアルにするのはいくらでもやってるんですけど、あえて明るく見えるような作り方をさせてもらいました。調子に乗って可愛いおばあちゃんのままやりましたよ」といたずらっぽく微笑む。劇中で豊子が「この飴はね、魔法の飴なの。この飴を舐めるとね、幸せな気持ちになれるのよ」と語る台詞があるが、まさにその言葉を体現するような愛らしい姿を見事に作り上げた。
現場では、年齢が離れたスタッフへの気遣いも忘れない。
「私が現場の人との年齢差がすごいから、気を使って何も言ってくれなくなると寂しいんです。だから『何でも言ってください』とお願いしています」。少し動かないでほしいといった単純な指示でも、言ってもらえた方が映像とのバランスが良くなると語る姿勢に、生涯現役を貫くプロの矜持がのぞく。
本作は終活や介護に役立つノウハウもストーリーの中に盛り込まれているが、自身の終活はどうか。
「尊敬する八千草薫さんが88歳で亡くなられたと知って、私もあと3年ちょっとしかないのかと、少し焦ることもあります」と率直な思いを吐露する。
「いらなくなった立派な衣装や着物を少しずつ始末しようとは思いつつも、人に譲る難しさも感じています。あっちでもこっちでも人にあげているなんて言われても困るし、『あの人はもらったのに私はもらってない』と言われても困る。本当に理解してもらってくれる人にあげないといけないから、なかなか難しいんですよ」
それでも、老いに対して決して深刻にはなりすぎない。
「お仕事がないから、どうしようという域ではなくなっていますが、ご縁があってお仕事をすることで元気や活力が出ます。あまり『終活だから』と考えすぎず、こういう明るい作品に参加できたこと自体が認知症予防になり、とても良かったと感じています」
映画の終盤、認知症になっても環境や考え方が変われば良い方向へ行けるという希望が描かれる。暗いことを考えるのではなく、「外に出ていく自分というのは結構いいな」と語る三田の言葉には、“人生の秋”を軽やかに、そして力強く歩む大女優の輝きが満ちていた。
■三田佳子(みた・よしこ)1960年に映画『殺られてたまるか』でスクリーンデビュー。東映の看板女優として60本以上の作品に出演し、日本映画黄金期を支える存在となる。独立後は映画・テレビ・舞台へ活動の幅を広げ、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、田中絹代賞、旭日小綬章など受賞歴多数。これまでの主な出演作として、映画『Wの悲劇』、『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』、『極道の妻たち 三代目姐』、『天間荘の三姉妹』、『湖の女たち』をはじめ、ドラマ「いのち」、「花の乱」、「わが家は楽し」、「終りに見た街」、「ゆりあ先生の赤い糸」、舞台「人でなしの恋」、朗読劇「九十歳。何がめでたい」、シンフォニー朗読劇「ベートーヴェン~魂の交響曲~」など数々の話題作で存在感を発揮している。
スタイリスト:東知代子
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