声帯手術乗り越え「今の声が大好き」 アニソン界の実力派・ASCA、10周年に向けて新境地

アニソン界をけん引する実力派シンガー・ASCA(アスカ)がニューシングル『Cusp』を27日にリリースする。TBS系テレビアニメ『黒猫と魔女の教室』(日曜午後11時30分)のオープニング主題歌として書き下ろされた本作は、迷いを振り切り、前へ進む力強さを真正面から歌い上げた1曲だ。パワフルさと繊細さを併せ持ったドラマチックな歌声で知られるASCAだが、声帯ポリープの手術などを経て、新たなステージに立っている。メジャーデビュー10周年を来年に控えた今、ターニングポイントについて語った。

来年メジャーデビュー10周年を迎えるASCA【写真:藤岡雅樹】
来年メジャーデビュー10周年を迎えるASCA【写真:藤岡雅樹】

通算14作目のシングル『Cusp』をリリース

 アニソン界をけん引する実力派シンガー・ASCA(アスカ)がニューシングル『Cusp』を27日にリリースする。TBS系テレビアニメ『黒猫と魔女の教室』(日曜午後11時30分)のオープニング主題歌として書き下ろされた本作は、迷いを振り切り、前へ進む力強さを真正面から歌い上げた1曲だ。パワフルさと繊細さを併せ持ったドラマチックな歌声で知られるASCAだが、声帯ポリープの手術などを経て、新たなステージに立っている。メジャーデビュー10周年を来年に控えた今、ターニングポイントについて語った。(取材・文=福嶋剛)

 シングルとしては通算14作目となる『Cusp』。制作過程を聞くと、アニメ好きな素顔を見せてくれた。

「私はアニメがとても大好きで、最近はXの音声機能(スペース)を使って作品の感想を話したり、毎回いろんな作品をチェックしています。今回、『黒猫と魔女の教室』のオープニングテーマのお話をいただき、どんな曲がいいのかなと原作を読み込み、音楽ディレクターさんと会話をしながら作っていきました。『黒猫と魔女の教室』は主人公のスピカが魔術師になるまでの成長物語ですが、同時にコミカル要素もたくさん散りばめられていて、笑いと感動のバランスが絶妙なんです。スピカの思いにフォーカスして、『周囲の余計な雑音を跳ね返して、大事な目標に向かってひたむきに進んでいく姿を言葉(歌詞)にしたい』とお伝えして、作詞家の辻井りとさんにお願いしました」

 辻井氏にお願いする上で、大切にしたテーマが「ブレない軸」だった。アニメの主人公・スピカのキャラクターでもあり、ASCA自身とも重なっている。

「私自身、歌やライブが好きだという気持ちだけは絶対にブレないように、デビューからやってきました。もちろん活動していく中で、悩みや迷いといった葛藤はたくさんありました。でも、そんな時に確固たる自分の軸を見つめ直すことで、前に進むことができたので、目標に向かって前に進むスピカに思いを重ねながら歌いました」

 冒頭では爽やかなロックギターのリフに合わせて力強くメッセージを歌う。Aメロでは、『黒猫と魔女の教室』の世界観とリンクする自然の情景が、サビでは自分を信じ切る強い決意や「ブレない軸」の大切さが描かれている。

「この楽曲には、『星座』というもう1つのテーマがあります。アニメに登場するキャラクターたちは、それぞれ自分の生まれた月の星座を持っていて、それによって使える魔法が変わってきます。主人公のスピカはおとめ座で、『植物魔法』を使えるのですが、私もおとめ座なんです。真面目で責任感が強い一面がおとめ座の共通している部分でありながら、隣り合う星座の影響も受けているとも聞いたことがあって。その境界線は曖昧なまま、矛盾を抱えたままで良いんだという思いを込めて『Cusp』という曲名になっています」

 ASCAといえば、唯一無二の表現力を持ったボーカリスト。抒情的で柔らかな表現と、劇的で力強い表現の境目を瞬時に行き来できるドラマチックな歌声が最大の武器になっている。楽曲ごとに、人格さえも変えているかのような迫力もASCAならではの魅力となっている。

「今回の曲は真っすぐメッセージを届ける曲だったので、最初から余計な味付けをしないと決めていました。声色を変えて歌うなどの癖のある表現は入れず、シンプルに自分の中から出てくるものを信じて歌いました。完成した曲を聴いた時、原点ともいえる“楽器としての自分”の歌声が出ているなという印象でした。これまで、『もっとうまく歌いたいという欲』が出過ぎて、表現がどんどん濃くなっていき、歌や言葉が素直に出ずらくなっていた時期もありました。今回は、余計なこだわりをそぎ落として、内面からにじみ出てくるものと向き合って、見つめ直した曲になっています」

「気持ちも軽やかになったし、歌うことがめちゃくちゃ楽しい」【写真:藤岡雅樹】
「気持ちも軽やかになったし、歌うことがめちゃくちゃ楽しい」【写真:藤岡雅樹】

「かわいい」を素直に受け入れられるようになった

 昨年9月にリリースしたオリジナルアルバム『28』から心境が変化していった。当時の年齢をそのままタイトルにした、アーティストとして大きな成長を遂げた作品でもある。そこに至るまでの葛藤についても振り返った。

「20代前半にのどの不調で、今まで何も考えずにできていたことができなくなってしまったんです。それで24歳の時にのどの手術を受けて、28歳になるくらいまで不調が続きました。もちろんその期間はとてもつらかったですが、反対に自分を見つめ直す大きなきっかけにもなったんです」

 もともと若い頃から、ずば抜けた才能の持ち主だった。“楽器としての自分”の歌声を器用に使いこなしてきたが、ここにきてもう一度、基礎に立ち返ったという。

「今までは未熟な自分を信じられず、『もっとやらなきゃ』『あれもこれも全部やりたい』と欲張りすぎて、本質を見失い、独りよがりなところがありました。でも、いざピンチになった時、スタッフさん、友人、家族、そしてファンの皆さん……。こんなにたくさんの方に支えられて、助けてもらってやってこれたんだって、やっと本当の意味で気付くことができました。余計な先入観を捨てて、自分を信じることでもう一歩前に進めたのが『28』というアルバムでした」

 大きな壁を乗り越えた先には、今まで見たことのない景色が広がっていた。

「そこには、私がやりたかった表現があったんです。『どうして歌えなくなってしまったのか』と自問自答を繰り返した先に待っていた答えは意外とシンプルでした。気持ちも軽やかになったし、歌うことがめちゃくちゃ楽しくなりました。苦しんでいた時期は全てむだではなかったです」

 アーティストとしての新たな一面も発見できたという。

「特に今作のビジュアルやMV(ミュージックビデオ)はイメージに変化がありました。長年ストレートヘアやクールさを貫いてきましたが、今回、すごくカラフルでしなやかなヘアスタイルに挑戦してみました。そしたら、周りから『かわいい』って声を掛けられて。私、今までかわいいなんて絶対に思われたくないって、抵抗してきたんですけど、素直に受け入れられるようになったんです(笑)」

 来年には、メジャーデビュー10周年を迎える。

「これから来年に向けた、いろんな発表をしていきたいと思っています。もちろんライブも予定しているので、ファンの皆さんはもちろん、初めての方も大歓迎です。こうやって気持ちの上でも、いい形で10周年を迎えられそうなので本当にうれしいです。もっともっと自分らしく、自由に可能性を広げていきたいと思います」

 喉の不調や試練を乗り越えた先に見つけた現在の歌声。「今の私の声が大好きです!」と笑顔を見せた。

「これからもその日、その時の声を好きでいられる私でいたいです」

□ASCA(アスカ)本名・大倉明日香。1996年9月5日、愛知県出身。2011年、中学生時代に第5回全日本アニソングランプリのファイナリストとなり、注目を集める。17年11月、SACRA MUSICよりASCAとして初のシングル『KOE』(TVアニメ『Fate/Apocrypha』2ndクールエンディングテーマ)をリリースし、メジャーデビュー。19年2月に4枚目のシングル『RESISTER』(TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』第2期オープニングテーマ)をリリースし、ゴールドディスクに認定されるヒットを記録。海外からの人気も高く、これまでアメリカ、サウジアラビア、ブラジル、ドイツなど国外のイベントにも多く出演している。2025年9月、ニューアルバム『28』をリリースし、アジア6か所を回る“ASCA ASIA TOUR 2025”を開催した。

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