【スターダム】小学生でプロレス入門→中~高と学業と両立 女子大生になった18歳王者・妃南「思うほどすごい事ではない」

小学校から大学まで、自身が学業以外のカテゴリーで「プロ」として過ごすこと、皆さんは想像できるだろうか。この多感な時期をプロレスとともに過ごしてきたレスラーは、ほんのわずか。そのほんのわずかの中の一人、スターダムの妃南(ひな)は現役大学生(18歳)にしてフューチャー・オブ・スターダム王者として君臨中。姉・羽南(はなん)、双子の姉・吏南(りな)についで同王座に就いた妃南に話を聴いた。

学業と両立してきた日々を語った妃南【写真:橋場了吾】
学業と両立してきた日々を語った妃南【写真:橋場了吾】

宝城カイリを見て「こんな凄い人がいるのか」と思った

 小学校から大学まで、自身が学業以外のカテゴリーで「プロ」として過ごすこと、皆さんは想像できるだろうか。この多感な時期をプロレスとともに過ごしてきたレスラーは、ほんのわずか。そのほんのわずかの中の一人、スターダムの妃南(ひな)は現役大学生(18歳)にしてフューチャー・オブ・スターダム王者として君臨中。姉・羽南(はなん)、双子の姉・吏南(りな)についで同王座に就いた妃南に話を聴いた。(取材・文=橋場了吾)

 妃南は、父親の影響で幼稚園の年中の頃からプロレスを見始めた。羽南・吏南・妃南は栃木県出身で柔道経験のある三姉妹であることはスターダムファンには周知の事実だが、初めてプロレスを見たのは後楽園ホールだった。団体はもちろんスターダムだ。

「父がプロレスの大ファンで、特に新日本プロレスを中学生の時から追っていたそうです。その流れで、いきなり男子より女子の方がいいだろうということで、スターダムが初観戦の団体になりました。そのときは、私は『プロレス』というワードも初めて聞いたタイミングで、アイドルが歌うイベントなのかなくらいの気持ちで行ったんですけど、本当にKちゃんパンダというグループがリングの上で踊り始めて……でもそれは前説で、本編ではなかったんです。そこから選手が登場して、相手を殴り始めて痛めつけて……これがプロレスなのかと。その時に宝城カイリ(現カイリ・セイン)さんの試合を見て、一番印象に残ったんですよ。めちゃくちゃやられてしまうんですけど、そこから立ち上がる姿が凄いなと。私はその頃には柔道を始めていて、こんな凄い人がいるんだと思いました」

 妃南が羽南・吏南とともにプロレスの練習を始めたのは小学2年の時。それから4年後、2018年に吏南を相手にデビュー、見事勝利した。

「小学2年の時なので、(プロレスの練習に対して)ハードルが高いという感じはなくて、あまり気にしてなかったんですよ。当時、柔道の練習日が月曜日と金曜日でハンドボールの練習が土曜日だったんですが、ハンドボールをプロレスに入れ替える感じで。プロレスをやってみたいとスターダムに伝えたのは新木場(1st RING)だったんですが、数週間後には家族全員で道場に行って練習していましたから。柔道経験があったので、最初からリングの上で初歩的な受け身を取って。でもプロレスでは立った状態から勢いつけて後ろ受け身を取るんですが、それを初めて見たときは『これをやるのか……』とは思ったんですけど、気づいたらできるようになっていましたね。やっぱり柔道の経験は大きかったです」

必殺のマッドスプラッシュで防衛街道を驀進中【写真:(C)スターダム】
必殺のマッドスプラッシュで防衛街道を驀進中【写真:(C)スターダム】

羽南と吏南と一緒のリングで戦いたいという思いが強かった

 それから7年弱の月日が経過しているが、妃南は今も学業とプロレスを両立させてきている。本人はこの特別な経験をどう捉えているのか。

「小さい頃から普段の生活では出会わないような凄い方々と出会って来たので、違和感がないんですよね。例えば、学校を卒業してからプロレス界に入ったとしたら身構えてしまうような出会いに対しても、境目がないというか。プロレスも『日常』だったので。これが当たり前で生きてきたので、大変な部分もあったんですけど、皆さんが思うほどすごいことではないような気がしています」

 妃南がスターダムに所属している間、たくさんの事件が起きた。出会いもあれば、別れもあった。その中で妃南が印象に残っている出来事を問うと、ちょうど1年前の話になった。

「プロレスって、一瞬で人生が変わることがあるじゃないですか。私は、プロレスってリング上だけのことではないと思っているんですよ。もちろん、お客さんにはリング上のことしか見えていないと思うんですけど、会場の外で起こっていることだったり、SNSに投稿していることだったり、伝えようとしても伝えきれないことももちろんあります。やっぱり難しい世界だな、自分を偽って生きているんじゃないかなって思うときもあるんですよ。

 年齢のせいにするのはおかしいんですけど、場面場面で『この世界に入ったんだから子どもじゃないでしょ』と言われるときもあれば、『まだまだ子どもなんだから』と言われるときもあって……もっと早く生まれていたらよかったのにと思うときもありますよ(笑)。そんな中、去年一緒にやってきた人たちがいなくなって、団体が成り立つのかなという不安もありましたし、自分もどうしようか悩みましたし。でも、羽南と吏南と一緒のリングで戦いたいという思いが強かったというか、3人で一緒に戦える場所がスターダムだったということですね」

 その妃南が、プロレスをやめようかどうか悩んだことがあった。それは今年3月、高校を卒業し大学へ入学する時期のことだった。

(15日掲載の後編へ続く)

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