「これ乗ってると女子大生が寄ってくる」 愛車はバブル期に大人気の“ナンパ車” 妻の説得「当時を思い出させて」
自動車愛好家にとって、大きな分岐点になるのが、結婚・出産だ。2ドアの車を手放し、4人乗りや5人乗りのファミリーカーを購入するというオーナーは珍しくない。一方で、子育て終了とともに、自分好みの車を迎えるオーナーもいる。埼玉県の50代男性、中川隆之さんが選んだのは、憧れのバブルカーだ。“青春時代の忘れ物”をようやく手にし、カーライフをおう歌している。
19歳の時に衝撃…魅了された純正フルエアロ
自動車愛好家にとって、大きな分岐点になるのが、結婚・出産だ。2ドアの車を手放し、4人乗りや5人乗りのファミリーカーを購入するというオーナーは珍しくない。一方で、子育て終了とともに、自分好みの車を迎えるオーナーもいる。埼玉県の50代男性、中川隆之さんが選んだのは、憧れのバブルカーだ。“青春時代の忘れ物”をようやく手にし、カーライフをおう歌している。
「クルマは人生のパートナー」 ポルシェにランドローバー…31歳人気女優の愛車遍歴(JAF Mate Onlineへ)
「旧車ブームというのと、ちょうど子どもが大きくなって最後乗りたい車に乗りたいなと」
愛車は元祖ハイソカーの異名を持つ1989年式のトヨタ・ソアラ。2年半前に200万円ほどで購入した。
車はこれまで10台ほど乗り、直近ではBMW・E46のハンドルを握っていた。
旧車を購入したのは初めてだった。
「なかなか古い車に手を出すって勇気が必要。BMWも古いんですけど、外車は部品がかなりある。お金さえ出せるなら維持も大丈夫なんですけど、これはお金あってもちょっと部品がないという話がよく出ていて。だから、なかなか手が出せなかったです」
悩みながらも決断したのは、憧れの車だったからだ。
最初にソアラと出会ったのは19歳の頃だった。
「たぶんこれが初めてだと思うんですよね。純正でフルエアロが出た車って。ソアラかミラかみたいな感じで。だからすごい欲しかったけど、買えなかったんですよ。今みたいにローンが組めれば良かったんだけど、昔ってあんまりローン組めなかったんじゃないですか」
当時エアロと言えばやんちゃな暴走族のイメージがあった。かっこよくてもまねすることはできなかったが、純正エアロ付きのソアラの登場が市場に新風を吹かせた。
さらに、ソアラはもう一つの顔を持っていた。
「なんだろうな、ナンパ車でした。そう、これ乗ってると女子大生が寄ってくるっていう、そういう車ですよ。今は全然違うんですけど(笑)」
時代はバブル絶頂期。東京・六本木では乗客が万札を掲げてタクシーを止めていた。日本が誇る高級車として六本木でも外車と肩を並べるほどの人気ぶりで、男女ともに世代には有名な車だった。
実際、当時を知る別のソアラオーナーは、「入れ食いです。信じられないでしょ」とニヤリ。「大卒の初任給がまだ12万とかだった時に、500万で売っていた。それでエアロとかつけて、乗り出しがもう700弱。今だと新車で500万、600万って結構当たり前になってきてるけど、当時で500万って半端じゃないですからね」と振り返った。
妻の反応は…説得できた最大の理由は“同世代”
ナンパはともかく、車の作り、ラグジュアリーな仕様は、今の時代でも十分通用する。それが購入のきっかけの一つになった。
「今ついてるものが昔からついてるから。唯一ついてないのはキーレスぐらいですかね。バブルの時ってすごいなと思いますよ」
希望の車を手にするために、車を探し回った。
「トータルだと2年半ぐらい、いろんな中古屋に見に行きました。ネットで探しても現車を見ないと分からない。遠いところだと仙台まで行きましたね」
10台ほど出会い、条件がはまったのが現在のソアラだった。
「旧車専門のお店で、そのお店の知り合いの人がソアラをずっと乗ってて、車検切れたからと言って、ちょうどお店に出したタイミングだった。じゃあ、そういう経緯だったら買おうと。なんか変なオークションから引っ張ってくるんじゃちょっと怪しいじゃないですか。だけど、出どころがちゃんとしているから」
エアロ付きではなく、ノーマルだった。そこは状態がよかった分、妥協ポイントになった。
「社外の純正エアロ風に作ったのが売ってて、それを買って、車来たと同時ぐらいに全部くっつけた」。19歳の頃の夢をかなえた瞬間だった。
家族に告げると、意外にも肯定的な反応だった。
「いや、結構ね、うちのカミさんも好きなんで。別にそう反対はしなかったです。ただ、BMも乗ってたから、『なんでBM売っちゃうの?』みたいなのはありましたね」
幸運だったのは妻も同世代だったこと。「何度も一緒にソアラを見に行って、当時を思い出させて、いいでしょと言って。元からカミさんも好きなんで、でなんとか、いいよって」と説得に成功した。
乗り心地は? 「カミさんのほうが気に入ってます」
若い頃、中古でも250万円ほどはしたというソアラ。35年たってもほとんど値段が変わっていないことには素直な驚きを口にする。
「35年たって、そう値段が変わらないからびっくりしちゃった。もっと100万とか、そのぐらいで買えるかなと思っていました」
200万円で入手しても、エアロなどパーツの取り付けや修理で別に100万弱ほどかかっている。早速、旧車の洗礼を受けるも、「逆にBMに比べると、ソアラのほうが修理代が安いんですよ。あんまり壊れないし、結構楽です」。勇気を出して飛び込んだ旧車の世界は、今のところ大きな不安もなく快適だ。
長時間乗ると疲労を感じるため、運転そのものはBMWに軍配を上げる。
一方で、「僕はBMWのほうがいいとは思ってるんですけど、うちのカミさんは、ソアラのほうが乗り心地はいい、腰に優しいって言います。カミさんのほうが気に入ってますね」。ハイソカーが魅了するところは今も昔も変わらないということか。トータルの満足度を聞くと、「90点」と高得点をはじき出した。
旧車オーナーとしてイベントに参加するようになり、仲間の輪も広がった。
「買うと決めてから、イベントを見に来たんだけど、あんまりソアラって並んでなかったんですよ。だから、ソアラ買って並べようと思って」
車1台で“あの頃”を知る同世代に出会えるのも旧車のだいご味だ。
「若い時乗らなくてよかったなと。たぶん、若い時乗ったらすぐ乗り換えちゃうかもしれない」
年を取った分、車への向き合い方にも落ち着きがにじみ出ている。
初の旧車にして、人生最後の車と決めている。
「今回は最後と思って買っている。あとは壊れなければ……。直せるだけ直します」と中川さんは結んだ。