教員志望から一転、芸能界へ 舞台『ハリポタ』に出演する西野遼の“人生を変えた瞬間”

ロングラン上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で舞台デビューを果たした23歳がいる。スコーピウス・マルフォイ役の西野遼だ。2023年8月に大役を担ってからはや半年。ただひたすらに場数を踏むことで着実に成長を遂げている。

舞台『ハリポタ』に出演中の西野遼【写真:ENCOUNT編集部】
舞台『ハリポタ』に出演中の西野遼【写真:ENCOUNT編集部】

ジュノン準グランプリから5年…初舞台で芽生えた“自覚と覚悟”

 ロングラン上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で舞台デビューを果たした23歳がいる。スコーピウス・マルフォイ役の西野遼だ。2023年8月に大役を担ってからはや半年。ただひたすらに場数を踏むことで着実に成長を遂げている。(取材・文=中村彰洋)

 22年7月からTBS赤坂ACTシアターで上演中の同舞台。西野はオーディションで今回の大役をつかんだ。前任の先輩から受け継いだバトン。大きなプレッシャーも背負った。

「受かったときはうれしかった同時に、あの役を自分がやれるのかという不安がありました。人気のキャラクターだったので、僕が演じることによってイメージを壊してしまうんじゃないかと不安もありました。1年目から出演されている方たちとは、役に対する解釈の深さなどで差を感じていたので、すごく焦りもありました。でも、すごくすてきなキャラクターで自分に合っているなと思いました」

 さまざまな演出が詰め込まれたハリー・ポッター。初舞台でありながら、一挙手一投足にスピード感と正確性が求められた。

「発声の仕方すらも分からないところから始まりました。今も日々試行錯誤です。誰かに訴えかけるようなシーンでは、初めは言葉を強く出すことしかできませんでした。今では少し違った形でアプローチができていると思います。ワンパターンにならずに演じることができるようになったなと思っています」

 2月3日には100公演目を迎えた。失敗しそうになったことは「たくさんあります」と照れ笑いを浮かべる。「詳しくは話せないので劇場でぜひ観てもらいたいんですが、うまく魔法が出せないときとか、『あ、やべっ!』となります。ちょっとでも気を抜くとすぐ失敗してしまうようなものばかりです」と常に緊張感を持って舞台に臨んでいる。

 同じ役を100回超も演じてきた。もちろん成長も実感している。「最初には感じられなかったことや見えなかったものが、だんだんと見えたり感じられるようになってきました。だからこそ、常に新鮮にやることが求められているなと感じています。慣れも大事ですが、今はその慣れの中で、より新しいものを模索しています」。

インタビューに応じた西野遼【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた西野遼【写真:ENCOUNT編集部】

大学卒業と同時期に出会った『ハリー・ポッター』で意識が変化「自分はこれで食べていく」

 西野の幼少期は極真空手に水泳、バスケットボールとスポーツに打ち込む日々だった。将来の夢は「教師」。地元の三重から大学進学を機に上京した。

 学生時代はクラス内でも明るいキャラクターでスポーツに熱中する日々。色恋沙汰とは無縁だったようで、「全くモテなかったので、掘り下げても何も出てこないと思います。将来も安心してくださって大丈夫だと思います」と無邪気に笑う。

 芸能界入りのきっかけは19年に挑戦した「第32回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」での準グランプリ受賞。先に俳優として活動していた姉が内緒で応募したことでその道は切り開かれた。

「姉の姿を見ていたので『こういう世界も面白そうだな』と思ってはいました。でも僕は普通の高校生だったので、縁のないものだと思っていました」

 ベスト1000に残ったという連絡が届いたことで、姉がコンテストに応募していたことを初めて知った。

「それまでは本当に知らなくて、高3で受験も終わって大学も決まっていたので、羽根を伸ばしていた時期でした。いざ東京に行くとなった日に、姉から『これ、あるんだけど』と渡された手紙に東京会場と書いてありました。今思うと姉は僕が上京するタイミングも考えた上で応募してくれていたんだと思います」

 コンテストが進むにつれて、現実味を帯びてきた華やかなステージ。「元々、学校の劇などで演じることは好きでした。ジュノンの活動をやっていく中で、人から応援されたり、それによって勇気づけられるということを経験してから、すてきな仕事だなと感じるようになって、本気で目指してみたいと思うようになりました」。

 大学1年生という忙しない時期とジュノン審査の両立。「SHOWROOM審査があって、大学に行く前の朝7時半ぐらいから1時間ぐらい配信して、学校に行って授業を受けて、帰ってきてからまた配信みたいな生活をしていましたね」と当時を思い返す。

 結果は準グランプリとQBナビゲーター賞を受賞。これを機に俳優活動をスタートさせた。映像作品に出演するなど、芸能活動を続けながらも大学は無事に卒業。その直後に『ハリー・ポッター』と出会えたことで俳優としての自覚がより一層強くなった。

「卒業のタイミングで意識が変化しました。周りが新卒で就職するタイミングで、僕は芸能1本で行くと覚悟を決めました。ありがたいことに卒業してすぐ『ハリー・ポッターと呪いの子』が決まったことで、『自分はこれで食べていくんだな』という意識を強く持つことができました」

今後の目標は「主演を張れるような俳優に」

 今後はこれまでに培ってきた運動センスを生かした「アクション」などにも興味があるという。また、舞台のみならず、映画やドラマ出演にも意欲的だ。

「今回、初めて舞台を踏ませてもらって生のヒリヒリ感や楽しさを感じることができたので、舞台は続けていきたいです。一方で映像作品だったら全国のいろんな方にも見てもらうことができるので、どちらでも活躍できるような俳優になりたいです。空手を4歳からやっていたので、体を動かすような役にも挑戦したいですね」

 23歳の抱負は“深化”。「スコーピウスという役を演じるにあたって、もっと深い解釈ができるようにブラッシュアップしていきたいです」と目標を語る。

「僕は割と消極的な人間なので、決まったもの、経験したことがあるものに対して安心感を覚えてしまって、新しいことが苦手なんです」と自身の性格を分析する。

 自身だったら絶対に応募していなかったジュノンコンテスト。「道を切り開くきっかけを作ってくれたのは姉ですね」と転機を与えてくれた姉には感謝してもしきれない。

 将来は「主演を張れるような俳優になりたい」と大きな夢を抱く。

「すてきな人間であり続けたいです。そのためにもいろんな経験を積んでいきたいです。『自分には無理なんじゃないか』と思ったことに対しても、『とりあえずやってみよう』と飛び込んでいきたいです。そういうことを繰り返して、新しい発見を積み重ねていきたいです」

□西野遼(にしの・りょう)2000年11月27日、三重県出身。19年に「第32回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で準グランプリを受賞。20年から俳優活動をスタート。23年には映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』に出演。同年8月から『ハリー・ポッターと呪いの子』で舞台デビューを果たした。特技は極真空手で師範は叔父。憧れの俳優は妻夫木聡。

ヘアメイク:赤塚修二
スタイリスト:永田哲也

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