BEGIN上地等、全員50代の新バンド結成「心は少年のように生きていたい」
「50を過ぎてベテランと呼ばれて、つい格好を付けたくなるけど俺はむしろその反対。素直になろうぜ!って、ありのままの自分で挑戦したい」……BEGINのピアノを担当する上地等が、どこか懐かしくて温もりのある音楽を奏でるブルースバンド「ビリケンブラザーズ」を結成し、ファーストアルバム「Trippin' Orchestra」を完成させた。メンバーの雰囲気が幸運の神様「ビリケンさん」に似ていることからビリー・ジュニアとケン・コテツ、上地改めブラザー・ヒトシの頭文字をバンド名にした新人バンド。50代を迎えた3人の今を詰め込んだ言葉の数々と時代に左右されない心地の良いメロディーが同世代のハートをガッチリとつかんでくれるだろう。そんな3人のインタビューの前に、今年も話題となったBEGIN主催の「うたの日コンサート」を終えた上地に感想を聞かせてもらった。
BEGIN「うたの日コンサート」でドラムを叩いた比嘉栄昇の長男を大絶賛
「50を過ぎてベテランと呼ばれて、つい格好を付けたくなるけど俺はむしろその反対。素直になろうぜ!って、ありのままの自分で挑戦したい」……BEGINのピアノを担当する上地等が、どこか懐かしくて温もりのある音楽を奏でるブルースバンド「ビリケンブラザーズ」を結成し、ファーストアルバム「Trippin’ Orchestra」を完成させた。メンバーの雰囲気が幸運の神様「ビリケンさん」に似ていることからビリー・ジュニアとケン・コテツ、上地改めブラザー・ヒトシの頭文字をバンド名にした新人バンド。50代を迎えた3人の今を詰め込んだ言葉の数々と時代に左右されない心地の良いメロディーが同世代のハートをガッチリとつかんでくれるだろう。そんな3人のインタビューの前に、今年も話題となったBEGIN主催の「うたの日コンサート」を終えた上地に感想を聞かせてもらった。(インタビュー・文=福嶋剛)
――まずは「うたの日コンサート 2021」お疲れ様でした。
上地「まさにさっき(取材日となった11月9日)飛行機に乗って帰ってきました。『うたの日』が終わって、スタッフの皆さんとゆっくり喜びを分かち合っていたから(笑)。今年は何より高校3年生ですよ」
――地元・石垣島の3つの高校から3年生を無料で招待されたんですよね。大きなニュースにもなっていましたね。
上地「やっぱりコロナ禍で高校3年生が2年間、何の行事もできなくて思い出が削られていますからね。初めは(比嘉)栄昇が『高校3年生を無料招待しようや。今(新型コロナが)落ち着いているうちに、できるんだったらやろうよ!』って言って。僕も(島袋)優もめっちゃいいアイデアだと思って、すぐ石垣市に相談したら『ぜひお願いします』と返事をいただいてね。本当に盛り上がりましたよ。やっぱりステージを見る高校生の瞳が輝いてましたから。それをステージから見ていて感動しちゃってね。彼らはこれから島を出て、いろんな場所に石垣出身という種を撒いて、新たな土地でそれぞれの花を咲かせていく訳じゃないですか。そんな彼らを見ていたら、30数年前の俺たちを見ているようでね。もう瞳は濁っちゃったけど(笑)。だから今年は高校3年生からパワーをたくさんもらった『うたの日』になりましたよ」
――YouTubeの中継を拝見しましたが最後までステージと観客席の高校生が一体となった、まるでスケールの大きい学園祭みたいな本当に楽しいライブでした。
上地「栄昇の息子の舜太朗(※)がずっとドラムを叩いてたんだけど、もう上手くて天才なわけ。これは俺たちも敵わんわってね。そんな舜太朗が今でも『ヒトシおじちゃーん!』てきてくれる感じがうれしいんですよ。若いバンドのステージを見ていても『お前たちすごいな!』って素直に思えるようになりましたね。30代のころは若くて上手いやつが出てきたら、『これはやばいな』って焦っていたけど。50を過ぎてちょっと変わってきたかな(笑)」
(※)比嘉舜太朗(ひが しゅんたろう)。比嘉栄昇の長男でロックバンド「HoRookies」のドラム&ボーカル。
――それでは、そんな50代の3人が組んだバンド「ビリケンブラザーズ」のお話にまいりましょう。
上地「ここからはブラザー・ヒトシって呼んでね(笑)」
――分かりました(笑)。早速3人をご紹介したいのですが、今回のアルバムの1曲目「Stay With Me」が、そのまま3人の自己紹介の歌になっているんですよね。まるで「かしまし娘」とか「玉川カルテット」のルーツにRCサクセションの「よぉーこそ!」が入っているような。説明するまでもなく聞けば分かるさという。
(ブラザー)ヒトシ「そうそう(笑)。これを聞いてもらえたら僕たちがどんな人物なのか良く分かる」
――歌の1番はヒトシさんのパートで、「18で上京して 未だに鍵盤弾き続け」説明するまでもなくBEGINの始まりですよね。
ビリー(ジュニア)「この曲は最初にヒトシが今までの彼の半生を書いてきたんで、じゃあみんなで生い立ちを歌おうじゃないかということで、2番はケン、3番は僕みたいな」
――ケン・コテツさんは、日本屈指のハーモニカ奏者、KOTEZ(コテツ)さんです。歌詞にも出てきますがブルースの本場シカゴで腕を磨いた経験もあると?
ケン(コテツ)「若いころにシカゴを旅行して、向こうのブルース・クラブを見つけてはカタコト英語で交渉して毎晩飛び込みでステージに上がっていたんです。ガキのころに読んだマディ・ウォーターズの自伝本に影響されてマディーと同じようにアポなしで『ハーモニカを吹かせてくれ』ってね」
――まるで道場破りですね。
ケン「そうそう(笑)。でもあんまり上手に演奏しすぎると主役を食っちゃうから2度と呼ばれないっていう世界を知りましたね。日本に帰ってもブルースをやっているライブハウスを見つけては、片っ端からハーモニカを持っていって『今夜吹かせてください』って。『お前、誰やねん?』て言われながら飛び込みましたよ。時にはコンテストの優勝トロフィーを持って行ってね(笑)。もうやり方が普通じゃないんだけど」
ヒトシ「ブルースっていうのはセッションの音楽だからね」
ケン「勝った人が生き残る世界だから。やりたいと思ったらプッシュすれば何かしらチャンスは生まれるっていうね。そんな昔の話を2番目に歌っていて、今は2人の父ちゃんをやってる50歳です(笑)」
――ビリー・ジュニアさんは、三宅伸治Bandをはじめ、ウルフルズ、夏木マリ、相川七瀬と数々のアーティストのバックでベースを弾いてきた高橋“Jr.”知治さんです。歌詞にありますがイタリアのミラノで生まれたというまたこちらも異色な経歴をお持ちで。
ビリー「意外と堅苦しい家で育ちまして……」
ケン「ビリーのファミリーヒストリーを聞いたら腰を抜かしますよ。あの高橋是清のひ孫ですから」
――え? 内閣総理大臣も経験して、二・二六事件で暗殺されたあの歴史的人物が曽祖父ですか? なんでこんなところでベース弾いてるんですか?
全員:(爆笑)
ビリー「今まであんまり公に言ってなかったんだけど、このバンドは格好付けないで自然体でやろうってところから始まっているから、今回オープンにしても良いのかなとね。僕は次男坊だったから意外と自由にやらせてもらっていたんです。僕もケンと同じくニューヨークでミュージシャンとセッションしていたこともありましたけど、実は本格的なスタートは松原みき(※)さんのバックバンドだったんです」
(※)歌手。1979年リリースの名曲「真夜中のドア~stay with me」が今も根強い人気を誇る。
――なるほど! 曲名の謎が解けました。歌詞にも松原さんのオマージュが入っているんですね?
ビリー「そういうことなんです。彼女がきっかけで今ここにいるので、そんな思いも込めてね」
――この分かりやすさが「ビリケンブラザーズ」なんですね?
ヒトシ「そう。ほんと今回の曲は全部分かりやすいでしょ?」
ケン「隠ぺいだらけの世の中でここまでさらけ出して良いのか?(笑)」
ビリー「完全なるドキュメンタリーでお届けしたいと思います(笑)」
全員:(爆笑)