【私の宝物】雅楽師・東儀秀樹の宝物は思い出詰まったクラシックカーAC・ACE、ギブソンのギター、絵の具

雅楽師の東儀秀樹さん(61)は多趣味で知られる。車、バイク、乗馬、スキー、スキューバダイビングなどアクティブな趣味が多く、ギターや民族楽器、時計、ミニカーなどのコレクションも膨大だ。東儀さんにとって、そのすべてが宝物だろうが、中でも飛び切りの宝物は何なのか。東京都内にある東儀さんのミーティングルームで聞いた。

ミッレミリアの思い出を語る東儀秀樹さん【写真:乃木裕】
ミッレミリアの思い出を語る東儀秀樹さん【写真:乃木裕】

ミッレミリアに参戦したAC・ACEは特別な宝物

 雅楽師の東儀秀樹さん(61)は多趣味で知られる。車、バイク、乗馬、スキー、スキューバダイビングなどアクティブな趣味が多く、ギターや民族楽器、時計、ミニカーなどのコレクションも膨大だ。東儀さんにとって、そのすべてが宝物だろうが、中でも飛び切りの宝物は何なのか。東京都内にある東儀さんのミーティングルームで聞いた。(取材・文=中野裕子)

 ミーティングルームにはカーレースの優勝トロフィー、ギター、ペットボトルで作ったミニカー、長男が手作りした人型オブジェなど多くの宝物が置かれ、隣の車庫にはクラシックカーやバイクが収められていた。

「僕は物に対する執着が強く、また手作りも好きで、その一つ一つに思い入れが募り捨てられません。どれも大事な時間を共にしてきた物たちで、売り物じゃないぶん世界に一つだけの手放せない宝物。一番を選ぶのは難しい。高額な物もあれば、人から見たら何の価値もないような物まで幅広いんです。車はラリーに出場するほど好きでクラシックカーにハマっています。中でも2004年に英国レーサーの未亡人から購入した英国車のAC・ACEはメーカーがワークスカー(メーカー直属のチームが開発した車)として作った3台の内の1台という貴重な車で、どんなにお金を積まれても手放せません。“世界一美しいレース”と言われているイタリアのミッレミリアに参戦して、日本人トップの成績を収めた特別な思いのある宝物です」

 ミッレミリアはイタリア全土の公道1000マイル(1600キロ)を3日間で走り切るラリー。東儀さんは07年に初出場した。車を敬愛し、国を挙げてレースを盛り上げるイタリア人とイタリア文化に強いインパクトを受けたという。

「渋滞に巻き込まれると、白バイ警官が反対車線に誘導したり、信号で停車すると観衆が寄ってくるので自分の車をデザインしたピンバッチを投げてあげたりしたいい思い出があります。レース自体は早朝から深夜までそれなりのスピードで運転し、アクセルワークやハンドルワークの正確さを競うので過酷でした。クラシックカーはエンジン音、オイルの臭い、ハンドルの振動などに異常がないか、常に神経を使って緊張しながら運転しなければいけませんから。そのぶん、車との一体感があってロマンを感じ、完走したときはそれまで味わったことのない達成感がありましたね」

 取材日は残念ながら、修理工場で整備中。実物にお目にかかることはできなかったが、真っ赤なAC・ACEを操っている東儀さんの写真が飾られていた。

「1954年の車だけど、普段使いもしていますよ。たとえばコンビニにパンや牛乳を買いに行くときにも乗っています(笑)」

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