サトシ役卒業直後に届いた“運命のオファー” 松本梨香が明かす新境地への決意と「ゲットだぜ!」の失策

声優・歌手として国内外で絶大な支持を集める松本梨香が、人形劇映画『ヤマトタケル~白鳥伝説~』(監督・岡田有甲、5月22日から大阪・扇町キネマ、 29日からアップリンク京都ほか順次公開)で若き日の大和武尊(ヤマトタケル)の声を演じ、主題歌『白き翼のメッセージ』も担当した。松本が役に込めた思いとは?

『ヤマトタケル~白鳥伝説~』で若き日の大和武尊の声を演じた松本梨香
『ヤマトタケル~白鳥伝説~』で若き日の大和武尊の声を演じた松本梨香

人形劇映画『ヤマトタケル~白鳥伝説~』で若き日の大和武尊(ヤマトタケル)の声担当

 声優・歌手として国内外で絶大な支持を集める松本梨香が、人形劇映画『ヤマトタケル~白鳥伝説~』(監督・岡田有甲、5月22日から大阪・扇町キネマ、 29日からアップリンク京都ほか順次公開)で若き日の大和武尊(ヤマトタケル)の声を演じ、主題歌『白き翼のメッセージ』も担当した。松本が役に込めた思いとは?(取材・文=平辻哲也)

 本作は「古事記」や「日本書紀」に登場する古代の英雄・日本武尊を題材に描いたマペットエンターテインメントだ。大阪・羽曳野市を舞台に、小学4年生のユウヤ、ユリ、ジロウの3人が、白鳥に導かれるうちに、人形の姿になって、古代の国へとタイムスリップ、ヤマトタケル王子とともに冒険を繰り広げる。

 松本が演じるヤマトタケルは、強がりばかりで勇者とは呼べない少年だが、魔物退治の旅を通じて王子として心身ともに成長していく。その姿を見守る子どもたちもまた、「愛と知恵と勇気」で困難を克服していく。

「誰もが自分の『大和武尊像』を持っている中で、ヤマトタケルを演じられることはすごく光栄だなと思いました。オーディションではなくオファーをいただけたことも、今まで頑張ってきてよかったなと。ヤマトタケルはみんなの憧れであり、今の子どもたちに寄り添えるよう頑張るぞという気持ちでした」

 松本と言えば、2023年3月まで、26年間にわたりアニメ『ポケットモンスター』の主人公サトシを演じ続けたが、ヤマトタケル役との出会いも運命的だったという。

「ちょうど、サトシ役を離れたタイミングにお話をいただいたんです。サトシに会いたいと思ってくれている子どもたちが寂しくならないよう、『サトシみたいに身近に感じてもらえるヤマトタケルがここにいるよ、そばにいるよ』と思ってもらえたらいいなと思っています。サトシは分身ですね、今も染み付いていて、『ヤマトタケル』のポスターにサインをお願いされた時に、間違えて横に『ゲットだぜ!』って書いちゃって。『ごめんなさい、手が覚えてます』って(笑)」

 本作はプレスコ(先行音声収録)という手法で作られた。絵が完成していない状態での収録には、想像力と監督との入念なすり合わせが求められた。

「監督に『ここはどのような場所で、どこにいるのか、何人くらいいるのか』を聞きながら、夜だったり昼間だったりで声の出し方も変わるので、絵コンテを見ながら自分なりに想像をふくらませて演じました。出来上がってきた映像を見て『こういう動きの描写なら、違った表現の方がいい』と録り直した部分もあり、監督と一緒に意見やアイディアを出し合って歩み寄りながらのまさに『手作り』の作業でした」と振り返る。

 アニメやハリウッド映画の吹き替えなど幅広く活躍する松本だが、人形に声を吹き込むことについては「人形だから、アニメだからといって、違わない。実在する人間に吹き替える時と気持ちは全て同じだと思っています。ただのヒーローにはしたくなくて、今の子供たちと同じように人形であっても血が通っているように、生きて、そばにいると錯覚するくらい表現できたらいいなと思い、自分に嘘をつかない表現を心がけました」と語る。

「やるべくしていただいた役」だと語った松本梨香
「やるべくしていただいた役」だと語った松本梨香

スタッフの一声で主題歌も担当

 主題歌は自らの提案で担当することになった。

「うちのスタッフが『せっかく松本がいるんだから歌った方がいいんじゃないか』とお願いしたみたいです。監督による歌詞ですが、字余りを直す作業が大変でした(笑)。冗談はさておき、ものづくりが好きな私にとって歌詞まで意見を入れてもらえたりでとても楽しい現場でした」

 そんな松本には、中学生時代に自作の人形劇に熱中したという意外な過去がある。

「発泡スチロールででっかい宇宙船とか大きな人形を作って、主人公の女の子役を演じたことがあります。だから今回、プロの皆さんが作る人形劇に参加させてもらえたのは、当時の経験からの『赤い糸』なのかなと思いました。この1体を作るのもすごく大変なのも分かるし、棒で操るのもずっと持ってなきゃいけない。ヤマタノオロチが大きかったというのも、そういう大変さがすごくわかるんですよ」

 だからこそ、本作のアナログな温もりに特別な思いを抱いている。

「AI時代になりつつある今だからこそ、監督が絶対にCGは使わない!という拘りや手作りのあったかみというアナログの部分を絶対忘れちゃいけない。手作りの良さって今見直されてきてるじゃないですか。だから今、私がやるべくしていただいた役なんだなと思ってます」

 デジタルの波が押し寄せる現代において、あえて手間暇をかけたアナログな手法には、作り手の魂がダイレクトに宿る。松本梨香という表現者の「嘘のない声」と「手作りへの深いリスペクト」が掛け合わさることで、大和武尊という伝説の少年は、スクリーンの中で確かな体温を持って生き生きと息づいている。

■松本梨香(まつもと・りか) 神奈川県横浜市出身。クールジャパンエグゼクティブディレクター/高知県観光特使を務める。劇団の座長である父を持ち、舞台女優としてデビュー。数々のアニメ作品で主人公やヒロインを演じる。TVアニメ 「ポケットモンスター」 シリーズ主人公サトシ役を演じ、主題歌の『めざせポケモンマスター』はダブルミリオンを記録。『忍空』風助役や『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の獏良了役などがある。『仮面ライダー龍騎』ではシリーズ初の女性主題歌『Alive A Life』を歌唱し、『ウルトラマンネオス』でも女性初のエンディングテーマを歌唱。近年ではテレビ朝日系『爆上戦隊ブンブンジャー』にブンレッドの相棒ブンドリオ・ブンデラス役(ブンブン)で出演のほか、エンディングテーマ『コツコツ-PON-PON』を歌唱。また舞台の演出にとどまらず吹替作品の音響監督も務め、絵本やエッセイの執筆もしている。

次のページへ (2/2) 【写真】『ヤマトタケル~白鳥伝説~』アフレコ現場の様子
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