歩きたばこは“マナー違反”で済まない 子を持つ眼科医が訴える危険性…問われる喫煙者の想像力

「これくらい守れませんか?」――。歩きたばこの危険性について警鐘を鳴らしたSNS投稿が大きな反響を呼んでいる。投稿したのは、Xで医療や健康に関する情報発信を行う現役の眼科医。2児の父でもある投稿者に詳しく話を聞いた。

失明の恐れも…周囲に危険を及ぼす歩きたばこ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
失明の恐れも…周囲に危険を及ぼす歩きたばこ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「相手を失明、火傷をさせてしまう恐れ」

「これくらい守れませんか?」――。歩きたばこの危険性について警鐘を鳴らしたSNS投稿が大きな反響を呼んでいる。投稿したのは、Xで医療や健康に関する情報発信を行う現役の眼科医。2児の父でもある投稿者に詳しく話を聞いた。

「これくらい守れませんか?目線の高さにタバコが来ると、身長が低い方、車椅子の方、ベビーカーの高さにタバコがきて非常に危険です。相手を失明、火傷をさせてしまう恐れがあり、怖い思いをしている人も何人も知っています。大事なことなのでもう一度言います。歩きタバコは絶対にやめてください!」

 5月10日、Xにこう投稿したのは、「ドクターK@眼科医パパ」(@doctorK1991)の名前で発信する男性。30代の眼科医で、家庭では小さな2人の子を持つ親でもあり、普段から子どもと一緒に外を歩く機会も多い。街中での危険な行動には以前から関心があり、歩きたばこに対して、医師としてだけでなく親としても「これは危ない」と感じる場面が少なくなかったという。

 この投稿には、「知り合いのお子さんがこの被害に遭いました、タバコが顔に……女の子なのに今も跡が残ってます」「以前遊園地で娘が突然泣いたので驚いて見てみると、歩きタバコの男性の手が娘の腕に当たっていた」「幼稚園児の時にやられてほっぺ火傷したことあるからやめてほしい」など、共感の声や被害の体験談が相次いだ。

 歩きたばこは副流煙や臭いの問題で語られることが多いが、ドクターKさんは「単に『煙が迷惑』という話にとどまりません」と指摘する。火のついたたばこは高温であり、接触すればやけどの原因になる。特に問題なのは、子どもや車いすの人、ベビーカーに乗っている幼児の顔や目の高さに、たばこの火が近づきやすいことだ。

 大人同士であれば、たばこを持つ手の位置は腰から胸のあたりでも、子どもにとっては顔や目の高さに近い。ドクターKさんは眼科医の立場から、「火のついたたばこが目の近くに来ることは非常に危険」とし、「まぶたや角膜のやけど、灰や異物による刺激、場合によっては視力に関わる外傷につながる可能性も否定できません」と説明する。

 歩きたばこは、吸っている本人が思っている以上に周囲との距離が近くなる。人混み、駅前、横断歩道、商店街などでは、すれ違う瞬間にたばこの火が子どもの顔の近くを通ることもある。親から見れば、ただのマナー違反では済まされない恐怖だ。ドクターKさんも「吸っている本人に悪意がなくても、周囲の人にとっては『火のついたものが顔の近くを通る』という危険な状況になりえます」と訴える。

過去には女児が搬送された「船橋駅事件」も

 実例として、歩きたばこが大きな問題になったこともある。1994年1月、JR船橋駅構内で、女児のまぶたに、前を歩いていた男性のたばこの火が当たり、救急車で搬送されたいわゆる「船橋駅事件」が起きた。眼球に異常はなかったものの、火の当たる場所などによっては「失明の可能性があった」と報じられた。

 都市部では条例などで路上喫煙が制限されている場所が多い。一方で、すべての地域で歩きたばこが明確に禁止されているわけではない。だからこそ、法律や条例以前に、周囲に危険を及ぼしていないかという想像力が問われる。自分にとっては何げない行動でも、子ども、車いすの人、ベビーカーの赤ちゃん、高齢者など、誰かにとっては取り返しのつかない被害になることがある。

 投稿への反響について、ドクターKさんは「同じように怖い思いをしたことがある方がたくさんいるのだと感じました」と話す。特に、子育て中の人やベビーカーを利用している人からの共感の声が多かったという。

 一方で、ドクターKさんは「喫煙される方すべてを否定したいわけではありません」とも強調する。問題にしたいのは、喫煙するかどうかではなく、「火のついたたばこを持ったまま歩くことが、周囲の人にとって危険になり得る」という点だ。

 歩きたばこは、吸う人にとっては単なる習慣かもしれない。しかし、火のついたたばこの先端は700~800度にもなるとされ、それを子どもの顔の高さで振り回していることの危険性を認識するべきだ。投稿が多くの人の体験談を呼び起こしたのは、同じ危険を感じながら声に出せなかった人が少なくなかったからだろう。

 ドクターKさんは、最後に「今回の投稿をきっかけに、歩きたばこについて少しでも考える人が増え、街中で安心して歩ける人が増えればよいと思っています」と思いを語った。

「歩きタバコは絶対にやめてください」。その言葉は、単なるマナーの呼びかけではなく、目を守る医師として、小さな子どもを育てる親としての、切実な警告である。

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