遅咲きの歌姫・Ms.OOJA、40代でつかんだ歌の自由「結局、最後まで歌う人でありたい」 目標にした人物とは
今年デビュー15周年を迎えたMs.OOJAが4月22日に新作カバーアルバム『Ms.ENKA ~OOJAの演歌~』をリリースした。抜群の歌唱力を持ち、これまで数々のR&Bナンバーをリリースしてきた彼女だが、キャリアを語る上でカバー曲は切り離せない。もともとインディーズ時代からカバーを得意とし、2011年にメジャーデビュー後もシングルのカップリングには必ずカバーナンバーを収録してきた。ライブではファンの楽しみにもなっているが、なぜ今、演歌なのか。そこには40代を迎えた心境の変化があった。

Ms.OOJAがカバーアルバム『Ms.ENKA ~OOJAの演歌~』をリリース
今年デビュー15周年を迎えたMs.OOJAが4月22日に新作カバーアルバム『Ms.ENKA ~OOJAの演歌~』をリリースした。抜群の歌唱力を持ち、これまで数々のR&Bナンバーをリリースしてきた彼女だが、キャリアを語る上でカバー曲は切り離せない。もともとインディーズ時代からカバーを得意とし、2011年にメジャーデビュー後もシングルのカップリングには必ずカバーナンバーを収録してきた。ライブではファンの楽しみにもなっているが、なぜ今、演歌なのか。そこには40代を迎えた心境の変化があった。(取材・文=福嶋剛)
現在43歳の“ディーバ”は、不惑を過ぎてますます活動意欲も高まっているようで、「40代になって歌の面白さをより一層感じるようになりました」と話し、言葉を続けた。
「振り返ると28歳でデビューしてからの10年は、とにかくいろんなチャレンジをしながら自分に合うものを探し続けてきました。30代前半は、オリジナルでもカバーでも歌えるものは全部歌って『どこまでできるか試してみたい』という好奇心が強かったんです。30代後半になると『私らしさ』が少しずつ分かり始めて、今まで気にしていた歌の癖さえも肯定できるようになりました。さらに40代になると肩の力が抜けて『自分の好きなようにやればいい』と思えるようになり、今は歌うことがますます楽しくなってきています」
Ms.OOJAの魅力といえば何といっても類まれなその歌唱力だ。聴く人にヒーリング効果を与える「1/fのゆらぎ」と呼ばれる歌声の持ち主で、リズミカルなR&Bから歌謡曲、バラードまでどのタイプの曲を歌っても人を感動させる圧倒的な実力を兼ね備えている。自身もシンガー・ソングライターである前に、ボーカリストとしてのこだわりを常に持ち続けているという。
「デビューからR&Bの曲をたくさん歌ってきたので、R&Bシンガーというイメージが強いのですが、私自身はR&Bシンガーだと思ったことは一度もありません。今まで『どのように歌えばみんなに届けられるだろう』と歌への探求心だけで歌ってきました」
そんな彼女の歌唱力を堪能できるカバーシリーズは今やファンにとって楽しみの一つとなっている。本人もカバーソングの面白さを次のように語った。
「カバーの面白さって、『歌というお芝居』を楽しめるところだと思っています。例えば恋の歌をひとつ取っても、報われない恋や切ない恋など、いろんな種類の恋があるじゃないですか。私はお芝居の経験はありませんけど、歌詞という台本を深く読み取りながら、歌で主人公をどう演じるか、そんなところにやりがいを感じています。大切にしていることは決して自分の感情任せにはしないで、目の前のお客さんが主人公に感情移入できるような歌い方を心がけています」
これまでJ-POPから昭和歌謡までさまざまなジャンルをカバーしてきたが、今回初めて演歌のカバーに挑戦した。それも全曲演歌と聞いて正直驚いたファンも多いかもしれない。
「確かに驚きますよね。でも、私にとって演歌のカバーは、いつかチャレンジしてみたかったジャンルなんです」

シンガーとしても、私生活でも大きな変化「なんとお酒を…」
子どもの頃、母親が運転する車の中ではいつも音楽が流れていた。歌謡曲、ロック、演歌、J-POPなどいろんな曲に合わせ、まだ3歳だったものの自然と口ずさんでいたという。音楽好きな母から受け継いだDNAが、彼女のカバーシリーズ『流しのOOJA』(2020年に第1弾をリリース)に大きな影響を与えている。
「物心がついた頃に聴いていた曲は、いつまでも耳に残っているじゃないですか。それが私のカバーシリーズ『流しのOOJA』の元になっていて、さらに探求していって今回、演歌にたどり着きました。43歳という年齢になり、演歌の歌詞の世界観や主人公の思いを想像できるようになったこのタイミングで表現してみたいと思いました。ただ、演歌の歌唱で歌うのではなく、歌い手と楽曲へのリスペクトを込めて、私ならではの表現方法でその魅力を伝えたいと考えました」
選曲は思い入れのある曲や挑戦してみたい曲など、こだわり抜いて選んだ。そしていざ演歌をカバーしてみると想像以上の奥深さを目の当たりにしたという。
「演歌って、スナックやカラオケで誰もが歌える親しみがあるじゃないですか。だけど、それをちゃんとプロとして歌うとなると、めちゃくちゃ難しいんです」
そう心境を明かすと、演歌の魅力について『とても洗練されている音楽』と分析した。
「想像力をかき立てるようなドラマを必要最小限の言葉で歌詞として表現していますし、言葉の余白もいっぱいあって自由度がとても高いんです。それに、この一つの作品を表現するために歌手のみなさんの計り知れない鍛錬が裏側にあって、まさにお芝居を作り上げるように精巧に作られているんです。私はこの年齢になって演歌の世界観に魅了されて、今風に言うと『めちゃくちゃかっこいい音楽』だと思いました」
今作の中で最も歌に苦労した曲に、ちあきなおみの『冬隣』を挙げた。
「こんなに自分に落とし込むのが難しかった曲は初めてでした。この曲だけでどれだけ録り直しをしたことか」
ちあきへの敬意は深い。ものまね芸人でその存在を知り、大人になってちゃんと歌と向き合った。その時の衝撃は今も忘れないという。
「とんでもなく、すごい方だと思いました。それ以上の言葉が見つかりません。この歳になってこんなに大きな壁が目の前にあると分かった時、むしろ私の負けず嫌いが発動して、“『冬隣』を歌える歌手になりたい”という気持ちにさせてくれました。いわば、演歌カバーの制作に引き込んでくれた恩人です」
完成したカバーアルバムを引っ提げて6月7日に東京・明治座で、この新作カバーを披露する「Ms.OOJA 明治座公演2026」を開催する。そして10月18日には大阪城ホールでの15周年ライブも控えている。一方、私生活でも15周年を機に大きな決断をしたという。
「壮大な断捨離です(笑)。大きな目標を立てると、それを得るために何かを手放すという昔からの願掛けみたいなルーティンがあって、10周年の日本武道館公演では、みなさんにお酒好きとして知ってもらっていた私が、なんとお酒をスパッとやめてしまったんです。そのおかげで今はすごく健康的な毎日を送っていますが、今回は大阪城ホールに向けて、家の中の衣類、靴、小物類など、半分近く処分しました。あって当たり前だと思っていたものが、実は必要なかったと気づきましたし、家の中も心もスッキリしたことで、今は目標に向かって集中できています」
また、大の猫好きでもある彼女にとって、現在の癒やしは3匹の猫と明かし、笑顔を見せた。
「もう20年近く猫ちゃんたちと生活を共にしています。今は3匹いて、誰にでも人懐っこい黒猫のラキちゃん、甘えん坊でいつも私のベッドに潜り込んでくるルカちゃん、最年長だけどめちゃくちゃ人見知りで警戒心が強いモアちゃんの3匹です。全く性格の違う子たちですが、本能のまま、ありのままに生きているところが魅力で、家の中も断捨離してスッキリしたので、ますます外出することが、なくなりました(笑)」
最後に「いつまで歌を続けるか」という問いかけに印象的な言葉を残してくれた。
「先日、スターダストレビューの根本要さんと対談させていただき、『声が出なくなっても次は歌えるかもと思って結局、ずっと最後まで歌うと思う』って仰っていたんです。その考え方にすごく共感して、私も根本さんと同じように『結局、最後まで歌う人』でありたいと思っています」
□Ms.OOJA(ミス・オオジャ) シンガー・ソングライター。1982年10月28日、三重県四日市市生まれ。4人兄妹の長女。17歳から歌手を志し、名古屋のクラブシーンで約10年の下積みを経て2011年2月にメジャーデビュー。翌12年、ドラマ主題歌『Be…』が配信100万ダウンロードを突破し一躍注目を集める。以降、シンガー・ソングライターとしての活動と並行してカバー曲にも積極的に取り組み、『流しのOOJA ~VINTAGE SONG COVERS~』シリーズ(20年8月に第1弾リリース)が昭和歌謡・シティポップ愛好家から幅広く支持される。26年4月22日、演歌カバーアルバム『Ms.ENKA ~OOJAの演歌~』をリリース。6月7日には『Ms.OOJA 明治座公演2026』、10月18日『Ms.OOJA 15th Anniversary Live in 大阪城ホール』を開催予定。愛猫家。三重県観光大使・四日市市観光大使も務めている。
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