難関大900人「エニー生」とは何か アマゾン・グーグルら外資に半数就職…「9割がスカウト」の謎
いよいよ始まった新学期。進学のため、地方から上京してきた大学生も多いだろう。大学生活といえば、サークルやアルバイト、ゼミ、インターンが定番だ。しかし今、そのいずれとも異なる“もう一つの選択肢”が、静かに広がっている。次世代人材の可能性を引き出すコミュニティー「プロジェクトエニー」だ。スカウトによって選ばれた学生たちは、国内外問わず幅広い分野で活躍し、半分以上が外資系企業に就職している。知られざるエニー生(プロジェクトエニーに所属する18~29歳)の活動について、取材した。

約900人の若者が所属「9割がヘッドハンティング」
いよいよ始まった新学期。進学のため、地方から上京してきた大学生も多いだろう。大学生活といえば、サークルやアルバイト、ゼミ、インターンが定番だ。しかし今、そのいずれとも異なる“もう一つの選択肢”が、静かに広がっている。次世代人材の可能性を引き出すコミュニティー「プロジェクトエニー」だ。スカウトによって選ばれた学生たちは、国内外問わず幅広い分野で活躍し、半分以上が外資系企業に就職している。知られざるエニー生(プロジェクトエニーに所属する18~29歳)の活動について、取材した。
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プロジェクトエニーを運営するのは、「OVER20&Company.」創業者の石堂里佳さんだ。2022年に事業を立ち上げ、26年3月時点で、約900人の若者が所属。その多くがスカウトによって集められている。
一般的な説明会は開かれず、紹介を含めて9割がヘッドハンティングというクローズドな仕組みだ。「ただ自分で検索して入られる方もまれにいます」。学生の最多は慶応大で、東京大、早稲田大、京都大、一橋大など国内難関大が続く。また、ケンブリッジ大、ワシントン大、上海財経大など、海外の名門大で学ぶ学生も参加している。
いったい、エニー生とは、何なのか。
石堂さんは、エニー生を「自分軸で未来を切り拓く次世代人材」と定義する。
背景にあるのは、先行きが見えないVUCA時代への問題意識だ。多くの若者が「自分は何者なのか」「どこへ向かうのか」を言語化できないまま社会に出ているという。
「よく例えるのは、ポケモンのRPGゲームですね。主人公が、火の特性なのか、水の特性なのか、電気の特性なのかも分からず、かつ、伝説のポケモンを捕まえるのか、ポケモンチャンピオンになりたいのかとか、そういったゴール環境も分からずに社会に出ていくというのは、非常に危険だし、もったいない」
そのためエニー生には、自己理解を深めるための「メンターワークアウト」プログラムを提供。マンツーマンの面談セッションを通じて、自分の価値や方向性を言語化する作業を始めていく。
特筆すべきは「教える」という発想がない点だ。若者を未熟な存在と見るのではなく、「すでに価値を持った存在」と捉え、その内側にあるものを引き出すことに重きを置く。
専用ポータルサイトには、高いポテンシャルを持つ仲間が集結する。国や地域を越えて互いに刺激し合い、ともに成長することを可能としている。多彩なミートアップやイベント、交流会も開かれている。今年4月には東京・銀座にエニー生が利用できるカフェラウンジも構えた。
そして、エニー生のもう一つの柱が、企業との共創プロジェクトへの参加だ。企業が抱える課題を、エニー生がタッグを組んで解決する仕組みを指す。
企業ごとのテーマや社会課題に応じ、3か月から1年の単位で携わり、選抜されたメンバーとともに最適解を導き出す。新商品開発や未来戦略の提案など、テーマは多岐にわたり、原則、報酬が発生しない有志のエニー生による企業課題解決プロジェクトだ。会社を学生に知ってもらうことを目的とする、一般的なインターンとは大きく異なり、学生たちがマーケティングや経営企画などの領域で、“即戦力の新人”、ビジネスリーダーとしての役割を担っていく。

アマゾンやグーグルへの入社実績 求められる資質とは
参加できるのは選抜された少人数のエニー生だ。1プロジェクト最大10人程度、場合によっては1人だけというケースもある。学生にとっては、貴重な学びの場となり、「自分に足りないものを的確に指摘してもらえる」「手厚い」との声が届いている。
参画するエニー生には、企業担当者やプロジェクトエニー運営、同社が提供するプロのメンターによる面談が毎月提供されるなど、通常のインターンでは考えられないほどの成長環境が提供されている。
企業側にも、思いがけない変化をもたらす。ある製造業のプロジェクトでは、特許技術を生かした新商品の開発をエニー生とともに推進した。国内トップシェアを持つ町工場だったが、技術の応用に行き詰まりを感じていた。エニー生は工場見学や市場調査を行い、解決方法を提案したが、それまで無口で同僚とほとんど会話のなかった60代の職人が、エニー生を自ら工場の外まで迎えに出るようになったという。「若い世代が自社の可能性を示してくれることで、社員自身が変わっていく。それがエニー生の力だと実感した」と石堂さんは振り返った。
現在、プロジェクトを提供する企業は20社に上り、エニー生の専門性を生かせる土壌が広がっている。プロジェクトへのかかわりを通じて、就職に際し、直接スカウトされることもある。
エニー生は、大学生か20代であることが条件だ。そのため、長いスパンで活動できるのも強み。卒業後、一般企業で正社員として働きながら、エニーのプロジェクトに参画することもできる。実際、そのようなケースも少なくないという。
では、エニー生に求められる資質とはどのようなものなのだろうか。
共通点として挙げられるのは、「好奇心旺盛」「未来志向」、そして「他者と何かを生み出したい」という意欲だという。
一方で、大学では一匹狼的な存在が多いと石堂さんは語る。友人同士で参加するケースはほぼなく、個人として参加の意思決定をしている。
ただし閉じた関係ではない。むしろ、自分を刺激してくれる相手とは積極的につながろうとするそうだ。
また、7割が留学や海外経験などグローバルなバックグラウンドを持つ。就職先も外資系企業が半数近くを占めている。アマゾンやグーグルへの入社実績もある。
エニー生は、徹底した自立主義で成り立っている。入会後に義務づけられるのは、自己理解プログラムのみ。それ以外は基本的に何をやるかは自由だ。運営側から指示が出ることもない。
「やりたいと言われたら『やればいい』と返すだけ。何をするかは本人次第です」
放置とも取れる環境だが、他の優秀なメンバーの存在が刺激となり、自発的な行動を促すという。

スカウトの方法 SNSでの発信がなければ接点は生まれない
石堂さんは、スカウトの方法については、オープンにしていない。
ただ、学生には、インプットだけでなく、アウトプットする力が求められる。エントリー資格は「プレ社会人」、つまり学生のうちに限られる。就職後は新規入会できない仕組みだ。年間の入会上限は200人だが、「条件に満たない場合は積極的に落とす」という姿勢を崩さず、質を最優先にしている。
コンテスト受賞などの実績は一つの指標にはなるものの、最も重視するのは「自分の可能性を信じ、それを社会に還元したいという意欲」だと説明する。
「自分の中にある可能性を外に出していきたいという意欲があるかどうかが一番大切。自己表現が得意かどうかは後から伸ばせるため、重視していません」
IQの高さや思考力も重要だが、それ以上に「気づいているか」が問われる。
「自分を言語化することの重要性に気づいているか。それが入り口になります」
SNSなどオンライン上での発信も重要になる。発信がなければ接点が生まれず、そもそも見つけることができないからだ。
石堂さんがこの事業を始めた原点は、20歳のころだった。マーク・ザッカーバーグのようなエグゼクティブたちがマンツーマンセッションを活用していることを知り、「これを20代全員に届けられれば生産性が上がるのでは」と考えた。
最初は若手社員への個別研修を提供していたが、企業で働く若手の多くが、「なぜ働くのか」「自分は何をしたいのか」を言語化できていない現実を目の当たりにした。そこで目指したのが、「20代に投資する文化」の創出だった。
当初は自社資金を投じて運営し、仕組み作りに奔走した。最初の2年間を計画的な先行投資として位置づけたが、「共感する企業のトップへの営業が最大の壁でした」と、困難に直面した。それでも諦めず、成長させることができたのは、身近な存在が原動力になったからだ。「エニー生の力で会社が大きくなった」。現在は企業とのプロジェクトを通じて事業として成り立たせている。
今後は、エニー生が特定の企業に縛られず、プロジェクト単位で人材が流動する新しい働き方を構想する。必要な場所に、必要な時に携わるイメージを見出している。
「優秀な人材を1社に閉じ込めるのではなく、必要な場所にシェアしていく。人材シェアリングエコノミーがこれからの形になると思います」
エニーという名称には「何にでもなれる」という意味が込められている。
定義を与えるのではなく、内側にある可能性を引き出す。その思想に共鳴した若者たちが、いま静かに集まり始めている。
ミッションは「20代から、世界を変える」。サークルでもインターンでもない、新たな選択肢。エニー生の存在は、これからの若者と企業の関係を大きく変えていくかもしれない。
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