マクドナルドCMで再注目 怒髪天・増子直純、還暦で語る「オトナはサイコー!」の生き方

メンバー全員が還暦イヤーのロックバンド・怒髪天が、いま再び時代と“共鳴”している。看板曲『オトナノススメ』(2009年)が、俳優の堺雅人が出演し「オトナはサイコー!」と歌う日本マクドナルドのテレビCMに昨年から起用され注目。その“続編”として、22日に新曲『トカイテ』を配信リリースする。泥臭くもユーモアを交えて人生のリアルを歌い上げ、ファンらから熱い支持を得る。23日に還暦を迎えるボーカルの増子直純に、「大人」をテーマに話を聞いた。

マクドナルドCMソングで話題となった怒髪天・増子直純【写真:高田啓矢】
マクドナルドCMソングで話題となった怒髪天・増子直純【写真:高田啓矢】

新曲『トカイテ』を配信リリース

 メンバー全員が還暦イヤーのロックバンド・怒髪天が、いま再び時代と“共鳴”している。看板曲『オトナノススメ』(2009年)が、俳優の堺雅人が出演し「オトナはサイコー!」と歌う日本マクドナルドのテレビCMに昨年から起用され注目。その“続編”として、22日に新曲『トカイテ』を配信リリースする。泥臭くもユーモアを交えて人生のリアルを歌い上げ、ファンらから熱い支持を得る。23日に還暦を迎えるボーカルの増子直純に、「大人」をテーマに話を聞いた。(取材・文=福嶋剛)

――ここにきて『オトナノススメ』が再び脚光を浴びています。

「このCMで曲を使いたいというありがたいお話をいただいて。せっかくならこの機会に新バージョンを録り直すのもいいなと思って、ベースの寺岡信芳さん(亜無亜危異)とキーボードの奥野真哉さん(ソウルフラワーユニオン)に参加してもらい、昨年の12月に『オトナノススメ~還暦上等!~』を作り、デジタル・リリースしました」

――『オトナノススメ』は、増子さんが40代の時に書いた曲です。「大人を信じるな」と歌っていた若い頃とは対極の内容ですね。

「自分たちはもともとハードなパンクシーンから出てきて、『Don’t trust over thirty』(30歳以上の奴らは信じるな)というスローガンに感化されて活動してきたんですけど、いざ30歳を迎えたとき『あれ? 大人っていいじゃん!』って感じたんです。結局、今まで自分たちの生きざまや日常のリアルを歌ってきたバンドなので、今、自分がそう感じているんだったら、その正直な気持ちを曲にしないと、と思ったんです。それで若かりし頃の自分たちに対するアンサーソングとして書いたのが『オトナノススメ』でした」

――「大人っていいじゃん」と感じたのは、どんなところからでしたか。

「そうだなあ……。実際に大人になってみると、若い頃とは違う景色が見えてきたんです」

――どんな景色でしょう。

「ディズニーの映画を見て泣ける自分がいたんです」

――その答えは意外でした。

「今までは『柄じゃない』と言って、メジャーなものをあえて敬遠していたんだけど、『美女と野獣』を初めて見たとき、あまりの感動で思わず号泣してしまったんです。それからディズニーの作品を見まくって、音楽も最高だとわかってコンサートにも行きましたし、ディズニーランドにも行きました。アトラクションに乗ったとき『こんな素晴らしいものがあったんだ』って、そこでも泣いてしまいました(笑)。僕の人生の中でも衝撃的な出来事でしたね」

――今の話自体が衝撃です(笑)。

「自分でも驚いた(笑)。やっぱり若い頃って、好きか嫌いかを判断する前に食わず嫌いで最初から拒絶しちゃう。それがようやく、見落としてきた素晴らしいものに出会えているんです」

――それに気がついたのはいつ頃ですか。

「ここ15年くらいの話ですよ。だから『大人になったから分かったんだ』って、曲の中で言いたかったんです」

――歌詞を書く上で増子さんが大切にしていることは何でしょう。

「僕は映画とか物語みたいな歌詞は書けないから、日記みたいに全て自分が感じたことを書いています」

――怒髪天の曲に出てくる主人公は、不器用で哀愁があるんだけれど、前向きな生きざまを見せてくれるところが魅力の一つです。

「やっぱり夢や希望、理想を歌うのがロックバンドなんでね。でも、メッセージが強すぎると音楽自体を楽しめなくなるから、ユーモアが大切なんです。あとは世の中的に不安なことが多い時は、反対に楽しい曲を作りたくなるタイプなんで。地元の同級生とか同世代が聴いてくれたときに、『いいね』って言ってもらえるような曲を作っていきたいです」

――反対に、成功者について歌った曲というのがほとんどないですよね。

「それは今まで自分が成功した人じゃないからですよ。ロックバンドの成功者のイメージって、タワマン最上階に住んで高級車に乗って、みたいなセレブな生活を送っている人を想像するけれど、そのどれ一つも叶っていないから(笑)。そうなりたいわけでもないですし」

――音楽だけでなく、番組MCや役者など幅広く活躍されています。

「それはちょっとしたご褒美というか。僕の職業はバンドマンで、オンボロ車に乗って腰を痛めながら全国を回って、ステージで暴れて、終わったら飯を食ってというのが仕事なんでね。極端に言えば、その日のステージを終えて死ななければ今日という一日は成功みたいなもんですから、そのくらいにしか考えていないから、そういう歌は歌わないんでしょうね」

5月から全60公演の全国ツアーがスタートする【写真:高田啓矢】
5月から全60公演の全国ツアーがスタートする【写真:高田啓矢】

若い時はたくさん失敗すればいい

――ところで今やAIが瞬時に一つの答えを導き出してくれる、一見とても便利な時代になりました。その反面、世の中の人たちが抱える悩みは今も昔も全く変わっていないですよね。

「今と昔で使っているツールが違うだけで本質的には変わらないんでしょうね」

――そんな時代に、『人生○×絵かきうた』(2014年)という曲が心に響きました。「○×△□とあらゆる形や色を使って自分だけの絵(人生)を描いていこう」という内容で、ハッキリと答えを求められがちな今の時代を予言していたかのように「答えは一つじゃないんだよ」と歌っていて。

「以前、専門学校で音楽の講師をやっていたとき、生徒にいろんなことをやりながら自分の適性や才能を探していくことが大切だと教えていました。就職試験に落ちて悲しんでいた生徒には『会社が今回欲しかった人材が三角の人だっただけで、あなたの才能は四角だから、それを求めている会社なら大丈夫』と励ましていました。でも若い頃って、自分が丸なのか三角なのか、そう簡単には見つけられないじゃないですか。だから、若いときってもがき苦しみながら自分探しをする時間なんだと思います」

――増子さんは若い頃に自衛隊へ入隊し、包丁の実演販売や雑貨屋の店長、プロレスのリングアナウンサーなど職を転々として今があるとお聞きしました。そんな増子さんが、迷いの多い若者世代に何か伝えるとしたら。

「僕が言えることはシンプルで、『なんとかなるよ』ってことです。僕は破天荒な生き方をしてきたけれど何とかやってきたし、今もバンドを続けられている。答えなんてすぐに出るもんじゃないから、焦らず、ゆっくり考えて、たくさん失敗すればいいんですよ。死ぬこと以外、取り返しのつかないことなんてないですから。何でもやってみて、失敗したら『ごめんなさい』と言って、またやり直せばいいだけですよ」

――増子さんにとって50代はどんな10年でしたか。

「ちゃんと自分の生き方を考えてやってきた10年でしたね。それまでは勢いだけで生きてきたんだけど、50歳になってから環境も変わって、今の自分の土台になるものを作り上げることができた10年でした。それと共に、人生の余計な選択肢もどんどん減って、進むべき道がクリアになってくる。だからといって守りに入るわけじゃなくて、これからも攻め続けます。むしろ、どんどん老害になってやろうかと考えていますから(笑)。22日にリリースする新曲『トカイテ』は、『オトナノススメ』の続編的な曲なので、よかったら聴いてもらえるとうれしいです」

□怒髪天(どはつてん) 1984年、札幌で結成。メンバーは、増子直純(ボーカル)、上原子友康(ギター)、坂詰克彦(ドラム)。91年、クラウンレコードからアルバム『怒髪天』(タイトル題字/北島三郎氏)でメジャーデビュー。96年から約3年間は活動を休止し、99年に再始動。2004年にテイチクインペリアルレコードでメジャー復帰。14年1月には、初の日本武道館ワンマン公演を満員御礼にした。2026年5月から27年4月まで全60公演の全国ツアーが決定。増子の誕生日にあたる4月23日には東京キネマ倶楽部で『還暦上等!生涯スタミナ街道Just a Sixty“爆発だ!ズーミーマン”』を開催する。

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