「燃料代が高いから…」ガソリン車→EVへの乗り換え急増 中東情勢直撃“EV後進国”に訪れた転換期

「また上がるのか……」。ガソリン価格の世界的な高騰が続く中、家計を直撃する不安が広がっている。中東情勢の緊迫化を背景に原油価格が高止まりし、正常化には相当の歳月が必要との見方も出ている。そんな中、日本の自動車市場では“脱ガソリン車”の流れが加速。EV(電気自動車)への関心が急速に高まっている。

電気自動車への需要が高まっている【写真:ENCOUNT編集部】
電気自動車への需要が高まっている【写真:ENCOUNT編集部】

「EVを検討したい」問い合わせ急増の背景

「また上がるのか……」。ガソリン価格の世界的な高騰が続く中、家計を直撃する不安が広がっている。中東情勢の緊迫化を背景に原油価格が高止まりし、正常化には相当の歳月が必要との見方も出ている。そんな中、日本の自動車市場では“脱ガソリン車”の流れが加速。EV(電気自動車)への関心が急速に高まっている。

「この機会にちょっとEVを検討したいなっていう声は販売店にも来ています」

 こう話すのは、大手自動車メーカーの関係者だ。2月28日のアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃から1か月半以上が経過。WTI原油先物は一時1バレル119ドルを突破するなど、不安定な状況が続いている。

 ここ数年、ロシア・ウクライナ情勢を皮切りに、ガソリン代は高止まりの状態だった。

「ずっと前から160円超え。当然、高いというのがある」

 車移動が欠かせない地方では、家計を直撃する。リッターあたり1~2円でも節約しようとガソリンスタンドを回るドライバーも多い。イランをめぐる軍事的緊張で将来不安はさらに増大し、補助金頼みの状態が続いている。

 米イランの停戦交渉は難航。仮に戦争終結となっても、ガソリン価格がすぐに下がる保証はない。中東の緊張が続く限り、リスクは消えない。

 世界有数の自動車大国である日本。だが、EVという点においては、世界の潮流から取り残された“ガラパゴス化”の状態が続く。国や都から多額の補助金が支給されているにもかかわらず、新車販売に占めるEVの割合は2%台にとどまり、2025年は前年からの伸びも1.6%増と小幅にとどまった。

 しかし、中東情勢の悪化と、それに伴うオイル危機により、風向きが変わりつつある。

 EVの新車価格は普通車で400~700万円ほどが相場。ただ、初期費用は高いものの、燃料代やメンテナンス費を含めた総コストでは有利になるケースもあるという。

「EVのほうがバッテリーを積んでいる分、初期コストは高く見えてしまうんですけど、ランニングコストでは有利です。エンジンオイル交換も不要で、メンテナンス面でも安い。深夜電力での充電なら日々の負担も抑えられます」

 中東情勢を受け、消費者のEVを求める動きは、他メーカーでも見られている。

 EV大手テスラの営業担当者は、「『燃料代が高いから乗り換えを検討した』という方が非常に増えています。短期間というより、将来を見据えて、この際シフトしようというお考えの方が多いです」と話す。

 ガソリン代の高止まりは、消費者マインドにそれだけ大きな影響を及ぼしている。

テスラの橋本理智社長【写真:ENCOUNT編集部】
テスラの橋本理智社長【写真:ENCOUNT編集部】

テスラ社長「ガソリンは有限。伸びるしかない」

 補助の縮小や原油高が重なれば、1リットル180円台も現実味を帯びる。一段の節約志向が、日本におけるEVへのイメージそのものを変えようとしている。

 テスラジャパン合同会社の橋本理智社長は今月3日に都内で行った会見で、中東情勢が与える販売への影響について「追い風というのは、基本的には僕はないと思っていて」と前置きしつつ、「ただ全体の世の中のトレンドとしてEVに思考が向かっていく。どちらかというと、そのマインドセットの部分が多いかなと思っています」との見方を示した。

 テスラでは4月から新車購入者を対象に、燃料代3年間無料のキャンペーンを開始。日本限定の施策といい、橋本社長は「ガソリンが高騰する中で、少しでもお客さんをハッピーにというか、助けてあげたいというところから始めました。我々としては予算としても結構大きな出費にはなるんですけど、それでもやってあげたいなと思っていました」と強調した。

 これまでEVに対する信頼が高まらない理由として、充電インフラの地域差や冬場の航続距離の低下などが課題として挙げられていた。ホンダのように、EV戦略の見直しを迫られるメーカーも出るなど、事業の難しさも浮き彫りになっている。

 しかし、橋本社長は、急速充電器の増設を着実に進めることを明かしつつ、こう力を込めた。

「中東の情勢を抜きにしても、いずれEVには移行していくはずなんですよね。2つ理由があって、もちろんガソリンは有限なので、いずれなくなる。2つ目が、例えば香港のEVの普及率って、本当に2年前まで40%だったのが、今74%です。例えば、寒冷地は難しいノルウェーとかでも96%じゃないですか。オーストラリアでもモデルYが一番売れています。タイや台湾でもそうです。韓国でもそうです。周りのアジアの国々では、思いきりEV市場が伸びているんですね。日本はまだ一歩も進んでなかった状況が、やっと一歩進み始めたという状況ですので、ここから先は伸びるしかない。移行していくしかないなと思っています」

 ガソリン価格に振り回される生活は、いつまで続くのか。

 中東情勢の不安定化は、日本のドライバーに「ガソリン車に乗り続けるのか、それともEVに移るのか」という現実的な選択を突きつけている。

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