『今すぐKiss Me』ヒット後の苦悩「他にもいい曲あるよって…」 LINDBERG、結成37周年も「変わる必要はない」

4人組バンド・LINDBERGが7日にデジタルシングル『Be Okey』を配信リリースした。聴く人の背中を押す、ド直球なメッセージとポップなサウンドを奏で、これぞLINDBERGという王道ナンバーに仕上がった。結成37周年を迎えてもなお、そのブレない音楽観はどこから生まれるのか。ボーカルの渡瀬マキとギターの平川達也のおしどり夫婦にインタビューし、音楽について多面的に語ってもらった。前後編の2回にわたってお届けし、前編は「新曲とバンド」。

渡瀬マキがLINDBERGの最新シングル『Be Okey』を紹介【写真:高田啓矢】
渡瀬マキがLINDBERGの最新シングル『Be Okey』を紹介【写真:高田啓矢】

渡瀬マキ&平川達也インタビュー・前編

 4人組バンド・LINDBERGが7日にデジタルシングル『Be Okey』を配信リリースした。聴く人の背中を押す、ド直球なメッセージとポップなサウンドを奏で、これぞLINDBERGという王道ナンバーに仕上がった。結成37周年を迎えてもなお、そのブレない音楽観はどこから生まれるのか。ボーカルの渡瀬マキとギターの平川達也のおしどり夫婦にインタビューし、音楽について多面的に語ってもらった。前後編の2回にわたってお届けし、前編は「新曲とバンド」。(取材・文=福嶋剛)

――始めに新曲『Be Okey』についてお聞きします。

渡瀬「今回は制作するにあたり、きっかけが2つあったんです。ひとつはスポーツ番組のテーマ曲にと依頼があったこと、もう一つは、『every little thing every precious thing』(1996年)という曲のリマスタリングエールバージョンを昨年出して、プロ野球の阪神タイガースのファンのみなさんに注目していただいたことでした」

――藤川球児監督が現役時代に登場曲として使っていた曲ですね。昨年のリーグ開幕試合で渡瀬さんが甲子園球場で歌い、またリーグ優勝を決めた試合では守護神の岩崎優投手が登場するときに、サプライズで流れたことで再び話題になりました。

渡瀬「そうなんです。それで、その曲のアンサーソングを作ってみたいと思いました」

平川「メンバーでいろいろと曲を持ち寄って、今回は僕が昔から温めていた曲を改めて手直しして完成させました」

――新曲は、「くじけそうな時こそ立ち上がって前を向こう」というストレートなメッセージが響きます。

渡瀬「いろんなことに頑張っている人に向けて書きたいというのが今作のテーマでした。『every little thing every precious thing』は、スタンドで応援する側に立って書いた曲ですが、今回は応援を受けてグラウンドで頑張っている立場になって歌詞を書きました」

――この2曲で物語が完成すると。

渡瀬「その通りです。やっぱり私たちだって、うまくいくことばかりじゃなくて、いろんなことを抱えながら日々生きているじゃないですか。そんな中で、他の誰とも比べないで『今日は昨日の自分よりちょっとだけ前に進めた』って思えたら、それでいいんだよというメッセージを込めました」

――ポップなメロディーとストレートで前向きな歌詞、そして渡瀬さんのパワフルな歌声という「これぞLINDBERG」というナンバーです。

渡瀬「うれしいです。たぶんLINDBERGが歌うテーマの一番は、“前向きさ”だと思うんです。今までいろんなタイプの曲を作ってきましたけど、そこからはブレてはいないというか、特に今回はストレートで分かりやすい曲を書きたいなと思いました」

――渡瀬さんが書くLINDBERGの歌詞には、飾らない等身大の言葉の中に、聴く人と同じ目線で人生を歩んでいるようなリアリティーを感じます。

渡瀬「そう感じてもらえたらとてもうれしいです。昔から一貫していることは、どんな主人公の歌詞を書いても最後は光が差し込むような、救われる歌詞にしたいなという意識があります」

――それは渡瀬さんご自身の希望でもあると。

渡瀬「そうですね。でも私は結構ネガティブなんです。だから歌詞の世界では、憧れの人物像や理想像を描いているというのが大きいかもしれないです」

――今でも渡瀬マキはスーパーポジティブな人だと思っている人も多いと思います。

渡瀬「昔はすごく前向きで元気な女の子みたいなイメージで思われていたんですよ。実は本当に後ろ向きで、なかなか自分を肯定できない人間なので、歌詞の主人公を理想像にしていたのかもしれないですね」

平川「でも年齢を重ねていくうちに、どんどん深みのある歌詞になってきていますよ」

渡瀬「それは音楽も演奏も一緒で深みがどんどん増していると思います」

平川「聴いてくれた方がいろんな想像ができる曲が一番いいので、そこは大事にしています」

――デビューの頃から変わらない良さをいつまでも持ち続けているところもLINDBERGだなと感じます。

渡瀬「最近特にたっちゃん(平川)と『変わる必要はないよね』って話をするんです」

平川「もちろん、いろんなチャレンジは今もやっていますよ。だけど、どんなタイプの曲をやってもLINDBERGの音になるので、自分たちの道をまっすぐ進んだ方が、今までのファンの皆さんも安心するだろうし、新たに聴いてくれる人たちにとっては逆に今まで僕たちがやってきたことが新鮮に感じてもらえるんじゃないかなって」

渡瀬「毎回アルバムを作るたびに遊んできたというか、挑戦はしたよね」

平川「その時代の最新のサウンドを取り入れて思い切り挑戦して遊んできたし、王道の曲は確実に王道になるように作ってきて、そんな感じでやってきました」

プライベートでは仲の良い夫婦の渡瀬マキ(右)と平川達也【写真:高田啓矢】
プライベートでは仲の良い夫婦の渡瀬マキ(右)と平川達也【写真:高田啓矢】

現在はライブツアーに充実「やっと周りの目を気にしなくなって」

――『今すぐKiss Me』(1990年)は世代を超え多くの人に愛されるLINDBERGの不動の名曲です。一方でアーティストの中には、どこでもヒット曲を求められることへの悩みや、これを越える曲を作らなければというプレッシャーに悩まされるという話も聞きます。LINDBERGはいかがでしたか。

平川「昔は、いつも『今すぐKiss Me』ばかりリクエストされるので『ライブでやらなくてもいいんじゃないか』と思った時もありました。でも僕たちは毎回演奏しているけれど、ファンの方にとっては『今すぐKiss Me』を聴きたくて足を運んでくれた方もたくさんいるんです。そう考えたら、この曲をやらないという選択肢はないなって思うようになりました」

渡瀬「昔ね、『今すぐKiss Me』をメドレーの中に入れちゃったこともあるんですよ。今考えたら、あれは絶対ガッカリしただろうなって思うんです。当時は『他にも良い曲があるよ』って若気の至りでしたね」

――次はライブについてお聞きします。今年も全国7会場でのライブツアー『Hello!New Days』が始まっています。特にここ数年は10代、20代の若いファンが増えているそうですね。

渡瀬「お子さんを連れて来てくださる方もすごく多くなって、いろんな世代の方に聴いてもらっているなと実感しています」

――リアルタイム世代が感じた刺激と同じものを、親子ほど年齢差のある若い世代も受け取っている状況というのはとても興味深い現象ですよね。

渡瀬「そうですよね。昨年のツアーに来てくれた10代の子が『曲が好き』って言ってくれて。昔からのファンの方が多感な時期に聴いてくれていたのと同じように、『今の若い子たちもそんな風に思ってくれているんや』って分かったら、すごくうれしくてね」

――やっぱりライブは今でも楽しいですか。

平川「今はすごく楽しいです。でも30代の頃はお客さんに見られているというのがすごくストレスで、常に緊張してしまいライブを楽しめなかったんです。ここ数年で、やっと周りの目を気にしなくなって、今は心から楽しめるようになりました」

渡瀬「たっちゃんは、突き抜けましたから(笑)。私は相変わらずネガティブ思考なのでいろんなことを気にし過ぎてしまい、反対に今のたっちゃんを見ていると本当にうらやましくなります」

平川「やっぱり長くやっていると、その時その時にいろんなことってありますよ」

――そんなお二人がLINDBERGとして今もステージに立ち続ける理由は何でしょう。

平川「やっぱり好きだからでしょうね。ファンのみなさんがいますから」

渡瀬「それに尽きますね。ファンの方が待ってくれているからですよ」

平川「だって、わざわざ時間と労力をかけて僕たちのライブに足を運んでくれるんですから」

渡瀬「みなさんに『本当にありがとう』ですよ」

――きっとファンの皆さんは、ステージに立ち続けるLINDBERGに「ありがとう」と言いたいんでしょうね。そういうお互いの気持ちが通い合う関係って最高ですね。

渡瀬「おっしゃる通り、本当にすごいことなんです」

――今も元気に活動を続ける同世代のバンドや先輩アーティストの活躍は励みになりますか。

平川「なりますね。それこそ先輩たちが頑張っているのを見て『まだまだ』って思いますよ」

渡瀬「先輩バンドと比べたら、私たちなんて“ひよっこ”ですから。私たちも負けないように1本1本のライブを大切に頑張ります」

□LINDBERG(リンドバーグ)ボーカル渡瀬マキ、ギター平川達也、ベース川添智久、ドラム小柳”cherry”昌法による4人組ロックバンド。1988年に結成、翌89年にアルバム『LINDBERG I』でメジャーデビューした。90年、ドラマ主題歌となった『今すぐKiss Me』がミリオンセラーを記録し一躍トップバンドへ。その後も『BELIEVE IN LOVE』(91年)、『every little thing every precious thing』(96年)など数々のヒットを連発した。2002年に解散後、結成20周年を機に09年に1年限定で再始動し、2014年に本格再結成を果たした。25年は全国6か所でツアーを開催。26年もライブツアー『Hello!New Days』を4月3日の新横浜を皮切りに、名古屋、大阪、福岡、札幌、仙台、そして4月26日の東京まで全国7会場で開催する。渡瀬と平川は1997年に結婚し、1男1女がいる。

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