4時間かけた“入れ墨”メイク「落とすのがすごく嫌でした」 萩原聖人、15年ぶり単独主演で見せた覚悟の死闘
俳優、声優、プロ雀士としても第一線で活躍し続ける萩原聖人が、2010年の『BOX 袴田事件 命とは』以来、約15年ぶりの単独主演映画に挑んだ。映画『月の犬』(24日公開、横井健司監督)は、生きることに絶望した大人たちの挽歌を描き出したジャパニーズ・ノワール。萩原は15年ぶりの単独主演映画に、どんな思いを抱いたのか。

24日公開『月の犬』で東島役
俳優、声優、プロ雀士としても第一線で活躍し続ける萩原聖人が、2010年の『BOX 袴田事件 命とは』以来、約15年ぶりの単独主演映画に挑んだ。映画『月の犬』(24日公開、横井健司監督)は、生きることに絶望した大人たちの挽歌を描き出したジャパニーズ・ノワール。萩原は15年ぶりの単独主演映画に、どんな思いを抱いたのか。(取材・文=平辻哲也)
25年11月公開の『栄光のバックホーム』以降、今年は『ハローマイフレンド』、『君が最後に遺した歌』(公開中)、『2126年、海の星をさがして』(北海道・釧路で先行公開中、今秋全国公開)と出演作の公開が相次いでいる萩原だが、単独主演としては15年ぶり。萩原は本作のオファーを受けた際、「主演をやるっていう怖さはすごくありました」と率直に明かす。
本作は最愛の妻を亡くし、極道の世界から離れて見知らぬ街へ流れ着いた男・東島(萩原)の日常が少年(渋谷そらじ)との出会いをきっかけに揺れ動く様を描く。東島に影響を受ける組織の男、南は深水元基、東島と南を結びつけるバーの女主人を黒谷友香が演じた。
脚本を読んだ印象は「現代の匂いというよりかは昔の匂いがする本」と萩原。単なる古臭い作品にならず、現代の観客に違和感なく没入してもらうため、監督と深く話し合いを重ねたという。
東島の特異性が浮き彫りになるのが、序盤のバーでぼったくられるシーンだ。
「普通は払わないですよね。ただ、ぼったくられると思って選んできている気がするんです」と分析。守るものがなくなった人間が陥る状態について、「一生懸命を守る方に軌道修正していくからなかなかないけれど、その破滅願望みたいなものって多分おそらく誰しもある」と、極端な行動の裏にある人間の本質に理解を示す。

強烈インパクトの和彫り…示した絵師へのリスペクト
劇中のセリフは少ないが、その背中には強烈なインパクトを残す「和彫り」がびっしりと入っている。この特殊メイクには尋常ではない労力が割かれた。
「朝4時入りぐらいで、下書きして描いて色を入れるまで4時間ぐらい、明け方までかかりました。めちゃくちゃ大変でしたね。でも、今後こんな和彫りを入れる機会はないだろうなと思って、落とすのがすごく嫌でした。写真もいっぱい撮りました」と、役の象徴でもある入れ墨を担当した肌絵師へのリスペクトをのぞかせた。
そして物語は、深水元基演じる南との激しいアクションシーンへと雪崩れ込む。
監督の「いわゆるかっこいい立ち回りなんて見たくない、もうかっこ悪くていい」という強いこだわりのもと、2日間かけて撮影された。
「もう理屈じゃない、無言で切り合う。あっちこっち痛かったんですけど、深水君とやれたのが気持ちよかったですね。ある種のエクスタシーみたいなものが通る感覚がありました」と、充実した表情で死闘を振り返った。萩原が並々ならぬ覚悟で挑んだ本作は、観客の心に強烈なインパクトを残すことになりそうだ。
□萩原聖人(はぎわら・まさと)1971年8月21日、神奈川県出身。94年、映画『学校』、『月はどっちに出ている』、『教祖誕生』で日本アカデミー賞新人俳優賞、話題賞(俳優部門)を受賞。『マークスの山』(95)、『CURE』(97)で同賞優秀助演男優賞他を受賞。近年の主な出演作に、『島守の塔』(22)、『海の沈黙』(24)、『栄光のバックホーム』(25)、『ハローマイフレンド』『君が最後に遺した歌』『2126年、海の星をさがして』(26)など。
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