2025年1月1日、東京女子プロレスに新戦力が加入した。アイスリボンで2023年にデビューした芦田美歩（みふ＝27）は、映画のオーディションをきっかけにプロレスに触れることになるが、いつの間にかプロレスの魅力に取りつかれていた。その彼女が、プロレスラーになるまでの軌跡を追った。

　芦田美歩は京都府福知山市出身。プロレスファンならばピンと来るだろう、福知山は鉄人・小橋建太さんの出身地。実は小橋さんと芦田は、福知山高等学校の同窓生だ。

「実は私の高校在学中に小橋さんがテレビの取材で来られたことがあるんです。当時は私とプロレスは無縁すぎて『すごい先輩が来ているんだな』というイメージだったんですが、実際に私がプロレスデビューすることになって小橋さんのことを改めて知ったときに『こんな偉大なプロレスラーが高校の先輩だったなんて！』と思いました」

　当時に芦田は、部活ではなく習い事でチアダンスに夢中だった。しかも世界大会に出場するほどのレベルの選手になり、『ミス・ティーン・ジャパン2013』のファイナリストとなる中学3年生の時から有名事務所に所属していた。

「もともとは、エアロビクスの体験に行ったのがきっかけで。その先生がチアダンスも面白そうじゃないかみたいな感じで、1回大会に出ることになったんです。そのチアダンスが楽しくて、いつの間にかエアロビクスからチアダンスに切り替わっていって……教室の皆で作り上げていって、日本全国やアメリカの大会にも出場できたんですよね。芸能活動の方は、事務所の方針が『学業優先でちゃんと勉強をして、地元で過ごしなさい』というものだったので、高校まで福知山にいて大学進学のタイミングで上京しました」

　その言葉通り、芦田は早稲田大学商学部に入学・卒業している。

「もともとお勉強はしっかりしなさい、という家庭で育ったので大学は行こうと思っていました。プラスして、事務所も大学からは東京で、という話もあったので。芸能活動はいつまで続けられるかわからないですし、両親が会社を経営していることもあって将来的には起業したいという気持ちもあって、コネクション作りもできる大学を選びました」

　大学卒業後、芸能活動を続けていた芦田だが2023年にアイスリボンで行われたプロレス映画オーディションの合格をきっかけに、大きく人生が変化していく。

「当時はプロレスのことを全く知らなかったんですが、唯一プロレスをテーマにした舞台に立ったことがあるんです。そのときには勉強のためにDDTを見に行ったことがあって、高木三四郎社長（当時）もご紹介いただいたんですが、本当に申し訳ないんですがどれくらい凄い方なのかわかっていなくて、Tシャツに『大社長』って書いてある方という認識で（苦笑）……ただただプロレスって面白いなという印象でした。オーディションを受けたのは、芸能人としてすごく売れていたわけでもないですし、自分が活躍できる場所を見つけるきっかけになればと思ったからです。しかもプロレスって誰もができるものではないですし、チアダンスという運動をしてきた土台があって、筋トレやスポーツはずっと続けていたので、ひょっとしたら可能性があるかなと思ってエントリーしました」

　無事プロレスラーとしてデビューした芦田のことを、ある試合をきっかけに知った方も多いはずだ。デビュー2か月で最高位王座に挑戦、しかしチョップで胸元をずたずたにされた写真が専門誌やSNSに掲載され大きな反響を呼んだ。

「あの試合は、私体張った甲斐、受けきった甲斐があったなと思いましたね。あの日をきっかけに、応援してくれる方が一気に増えましたし……めちゃくちゃ痛かったですけど、正直ポジティブにとらえています。やれるものなら、もう1回ああいう試合をやりたいと思うくらい楽しんでいた自分もいましたし。芸能から入ってきて、中途半端にプロレスをやっていると思われるのも嫌でしたし、何事も全身全霊でやりたいという私の姿勢を見せられたかなと思っています」

（9日掲載の後編へ続く）