「僕が輝くことが、彼が喜ぶこと」―江幡塁、三浦春馬さんに捧げる勝利の裏にあった思い

江幡塁は三浦春馬さんに勝利を捧げた【写真:(C)RIZIN FF】
江幡塁は三浦春馬さんに勝利を捧げた【写真:(C)RIZIN FF】

江幡が明かした親友・三浦春馬さんへの思い「小さい頃から夢を語ってきた親友が亡くなりました」

「僕が輝くことが、彼が喜ぶこと。しっかりぼくの生き様をRIZINで見せたい」

 試合前にはそう宣言していた江幡。

 結果的に江幡は、最終3Rに入ると、序盤に右ストレートでダウンを奪い、直後に激しいパンチの攻防で流血した。両者流血のためいったん試合は中断したものの、再開後も最後まで激しく打ち合い、判定勝利を引き寄せる結果となった。

 勝利した江幡はリング上で、「ご存知の方もいると思いますが、18日、試合間近でした。僕が茨城で小さい頃から夢を語ってきた親友が亡くなりました。本当につらくて、つらくて、前を見えないぐらい。でも僕の生きざまはリングで見せるしかない。どんなにつらいことがあっても、リングでメッセージを送り続けます。僕はこのリングに立てたことを感謝します」と、その思いを語った。

 もちろん、人は他人には言えないことが多い。それはファイターでも同じであって、誰もが何かを背負って生きている。ただし、それが隠しきれずに公になってしまってからが、実は表現者であるプロの世界ではないかと考える。

 その点で言えば、江幡が今回、失ったものの大きさを事前に「見る側」が知識として持っていることが、江幡にとって自然とこれまで以上の実力を引き出す結果につながっていることは想像に難くない。

「こんな切られた顔でファイティングポーズは初めて」

 試合後のインタビューを終えた江幡はそう言って笑顔をのぞかせた。

 今回の江幡は、親友の死を乗り越えて、言い換えればそれを背負ってリングに上がったことで個人の物語に厚みを増すことができた。そこで現在、RIZINのリングで試合をするファイターが考えなければならないことがある。

 それは、RIZINをどう生かすのか。

 クラウドファンディングまで持ち込んで幅広く支援を呼びかけたRIZIN。つまりいったい誰がこの瀕死のRIZINを背負っていくのか。それを知るための分かりやすい答えが公に導き出された時、そのファイターはこれ以上ない物語の厚みを手に入れる気がしてならない。

 いったいそれは誰なのか。それを知るためにもまた、RIZINの会場に足を運ぶ。狂気、非情さ、物語……。それが新型コロナウイルス禍だろうと、リング上を多角的に語るための本質的なキーワードは実は何も変わりがない。

次のページへ (4/4) 【写真】リング上で親友の三浦春馬さんについて語る江幡塁
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