「2人は正当な評価を受けて欲しい」―行定勲監督が山崎賢人と松岡茉優を高評価するワケ

(c)2020「劇場」製作委員会
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演劇人の苦悩「絵空事ではない、虚構ではない姿が描かれている」

――コロナ禍で、小劇場の関係者も大きな打撃を受けています。

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「『劇場』は、下北沢で演劇をやっている人の苦悩が描かれているんだけど、演劇人は今、劇場で演劇ができない。彼らもいろんなことを考えながら、恋人を犠牲にしたりして、演劇にかけているけども、彼らの表現の場である劇場にお客さんを入れて、開くことができない。逆に言うと、今観るべき映画になっているかな。絵空事ではない、虚構ではない姿が描かれている部分があると思います」

――「窮鼠はチーズの夢を見る」(9月11日)の公開を控えています。大倉忠義さんと成田凌さんが共演した男同士のラブストーリーですね。

「『窮鼠はチーズの夢を見る』はセンセーショナルな話題をもたらす映画だと思います。絶対に映画館でやりたい作品だし、公開を待っている人たちも心待ちにしているというのが伝わってきます。こちらも当初の6月5日公開が延期されたんですけども、当初の館数よりも広がっている。期待して欲しいと思っています」

――映画界の今後はどうなると思いますか?

「何十年経っても、映画を撮り続けようと思っているんだけども、下手すると、客の入る映画しか作れない時代が来るんじゃないか、と危惧しています。『劇場』は、観客に迎合したり、エンターテインメント性を駆使した、みんながワクワクする映画では決してない。染みるっていうか、じんわりと届く人には届いていく映画だと認識しています。

 ですが、今後は極端に言えば5億円規模か5000万円の小規模しか作られないんじゃないかと心配しているんです。豪華キャストで海外ロケするような派手な作品で一気に集客するか、小規模なバジェットの作品だけになるんじゃないか、と。だけど、僕は、純文学を題材にした製作費2~3億円といった中規模の映画を作り続けたい。コロナで疲弊した映画界が、今まで通りに中規模の映画を作っていくためにも、『劇場』は絶対に赤字になってはいけない。どんな形であれ、ちゃんと(製作費や宣伝費を)回収して、結果を残さないといけない。だから、『劇場』が公開されたら、1人でも多くの人に見てもらうような活動を初心に戻って、やりたいと思っています」

□行定勲(ゆきさだ・いさお)1968年生まれ。熊本県出身。2000年、「ひまわり」で長編監督デビュー。01年、「GO」で第25回日本アカデミー賞最優秀監督賞をはじめ数々の賞に輝き、一躍脚光を浴びる。04年、「世界の中心で、愛をさけぶ」は興行収入85億円の大ヒットを記録し社会現象に。舞台「趣味の部屋」などの演出も手掛けた。16年、「タンゴ・冬の終わりに」「ブエノスアイレス午前零時」で毎日芸術賞演劇部門寄託賞の第18回千田是也賞を受賞。ほかに大倉忠義、成田凌主演の映画「窮鼠はチーズの夢を見る」(9月11日)の公開を控える。

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