新作映画『首』の公開を23日に控える北野武監督（76）が15日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見した。同協会が約20年間、オファーを続けての実現。1997年の『HANA-BI』でベネチア国際映画祭金獅子賞、2003年の『座頭市』で銀獅子賞（監督賞）を受賞するなどしている「世界のキタノ」に国内外の記者からさまざまな質問が飛んだ。北野監督はユーモアを入れて回答。笑いの絶えない会見になった。

　北野監督は白のジャケットを着て登場。フォトセッションに照れ笑いで応じた後、席に座った。そして、司会者から英語でキャリアを紹介され、「あっ、初めまして。ジャニー北野川です」とボケてみせた。その後、漫才、映画監督を重ねてきたことを振り返り、「自分の仕事には満足していない」などと語った。

　その後、学生時代を振り返り、「おふくろは教育ママでした。なぜか自分は数学だけはできて、おふくろも喜んでいました。大学も数学だけで受かったようなものです。エンジニア、技術者になって、車を作りたかったけど、学生運動で影響も受けるなどして、ドロップアウトしてしまいました」。

　そして、最初のボケに絡めて、司会者からジャニー喜多川氏が起こした問題について質問されると、こう答えた。

「芸能界で仕事してウワサを聞いてきたけど、そういう世界に行ったら『そういうこともあるだろうな』と思ったけど、最近になって大きな問題になったのも時代の流れかなと。昔は『サーカスに売るぞ』とか言われ、芸能の仕事は人を商品化する慣習が残っていて、自分も働いた10分の1ももらえない時代もありました。昔から『日本の芸能界はひどいもんだ』と思っていました」

　『首』は、北野監督が代表作『ソナチネ』（93年）と同時期に構想し、約30年間かけて実現した作品で戦国時代を舞台にしている。故黒澤明監督に「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と言わしめた野心作で、北野監督が自ら羽柴（豊臣）秀吉をひょうひょうと演じている。

　織田信長（加瀬亮）に複雑な感情を抱く明智光秀を西島秀俊が演じ、浅野忠信は軍師の黒田官兵衛、大森南朋は秀吉の弟・羽柴秀長をユーモアたっぷりに演じ切っている。さらには秀吉に憧れる百姓・難波茂助は、北野組に初参加の中村獅童。他にも木村祐一、遠藤憲一、桐谷健太、小林薫、岸部一徳らが歴史上の重要人物に独自のキャラでなりきっている。公開前から高い評価を得ている同作は、今年5月開催のカンヌ国際映画祭でカンヌ・プレミア部門に選出されている。