千葉雄大、SNSは「本当は苦手」 発信直後に反応返ってくる構造に「生きづらい世の中」

俳優の千葉雄大がラジオ局での人間模様を描いた作品『あの夜であえたら』に出演する。10月14・15日に東京国際フォーラムホールAで上演する物語は、2022年3月に上演した、オールナイトニッポン55周年記念公演『あの夜を覚えてる』の続編。コロナ禍に披露された初舞台は、ラジオ局・ニッポン放送の社屋から生配信されたが、新作は会場と配信の2展開で公開される。ラジオが大好きで学生時代には、ハガキ職人としてラジオネームを持っていたと語る千葉に、開幕が迫る舞台について聞いた。

俳優の千葉雄大
俳優の千葉雄大

ラジオ局の人間模様を描いた作品に出演 東京・有楽町で10月14・15日に上演

 俳優の千葉雄大がラジオ局での人間模様を描いた作品『あの夜であえたら』に出演する。10月14・15日に東京国際フォーラムホールAで上演する物語は、2022年3月に上演した、オールナイトニッポン55周年記念公演『あの夜を覚えてる』の続編。コロナ禍に披露された初舞台は、ラジオ局・ニッポン放送の社屋から生配信されたが、新作は会場と配信の2展開で公開される。ラジオが大好きで学生時代には、ハガキ職人としてラジオネームを持っていたと語る千葉に、開幕が迫る舞台について聞いた。(取材・文=西村綾乃)

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 本作はニッポン放送と劇団ノーミーツが手がける舞台演劇番組イベント生配信ドラマ。俳優の高橋ひかるがディレクターを務める番組『綾川千歳のオールナイトニッポンN(ニュー)』が開催するイベントの表と裏をリアルタイムで追う物語で、千葉は昨年と同じく人気俳優の藤尾涼太として出演する。

「僕は元々ラジオが大好き。製作総指揮を務めている石井(玄)さんとはラジオで、監修をしている佐久間(宣行)さんには、テレビでお世話になっていたので、出演の依頼をいただいたときは、『ぜひ』と快諾していました。昨年配信した作品は、生放送を行っているニッポン放送から、生配信をするというもの。いろいろ説明されても、実際にどんな風になるのか手探りだったのですが、場所の力もあり2回あった本番はとても楽しくて、終わった後には充実感がありました」

 前作は、記念すべき100回目の放送で突如番組終了となった「藤尾涼太のオールナイトニッポン」から1年後に急きょ代打でパーソナリティーをつとめたラジオブースの中で、千葉演じる藤尾がある秘密を打ち明けるという内容だった。新作では番組を卒業した藤尾が、綾川の番組にゲストとして招かれた様子が描かれる。

「今回はサポート的な役どころ。前回同様、いま稽古していることが会場でどんな風に見えるのか楽しみです」

 高校時代は、ラジオ番組に投稿するほど魅了されていたという千葉。どんなところに惹かれたのだろう。

「僕は宮城県出身で仙台にある高校に通っていたのですが、無気力に過ごしていた時期もあったんです。当時、よく聴いていたのが、(TOKYO FMで放送中の)『SCHOOL OF LOCK!』。テレビだと情報量が多いけど、ちょっと寂しいときに寄り添ってくれる。距離感がちょうどいいのがラジオ。長い歴史を持つ『オールナイトニッポン』は、ジングルを聴くだけで心が躍る憧れの番組。誰かが辞めるときは、毎回(声がかからないかなと)そわそわします。深夜に放送があっても、翌朝は撮影に向かわなくてはいけないなど、ラジオを続けることは大変なこと。話すためには、日常に目を向けて引き出しも増やさなくてはいけないし、責務重大だと思います」

 2021年6月にはリニューアルしたファンクラブの有料会員に向け、ラジオ番組『千葉雄大のラジオプレイ』の配信(隔週金曜日)をYouTubeでスタートした。

「役を演じるときは、僕の人間味を前に出すことはないけれど、ラジオだと僕の考えなどが少しだけ出ているかな。例えば考えるときの『間』とかもそう。血が通っていることを感じられるのがラジオの良さです」

学生時代はラジオネームを持ち、投稿していたと明かした千葉
学生時代はラジオネームを持ち、投稿していたと明かした千葉

守りたい存在が僕を強くさせる

 ドラマ『いいね!光源氏くん』シリーズでは、現代へタイムスリップした平安貴族・光源氏を熱演。今年年明けに放送されたドラマ『星降る夜に』では手話にも挑戦した。CMなど姿を見ない日がないほどの売れっ子だが、舞台には特別な思いがある。

「年に1、2回は舞台に出たいと事務所の方にお願いをして、21年ごろから舞台で演技を見ていただく機会を増やしてきました。思いついたことを『やってみよう』とすぐに試すことができるのが舞台。テレビだとそれは難しいんですよね。僕は映像が好きでこの世界に入ったので、映画やドラマが好きだけど、その垣根を越えていきたいんです」

 取材場所にやってきた千葉は、ピンク色のニット帽をかぶっていた。世間が求める姿を体現しているように見えた。しかし耳を疑うような毒舌ぶりに、高い人間力を感じさせた。

「僕が良いと思うものが大事じゃないのが、僕が身を置いている世界。例えば写真を選んでと言われたとき、僕はこの僕の表情が好きだなと思っても、『世間が求めてる千葉雄大は、こっち』って希望が通らないことがあるんです。若いときは『なんでだよ』って、すごくイラついていましたが、『売れるものがいいもの』とされてしまうので、どんな風に思うのかは、全部相手に委ねようと考えられるようになったんです」

 名前の前に「あざとかわいい」と冠が付くようになり、肩の荷が降りた。ピリついていた表情も柔らかくなり、友だちから「最近生きやすくなったんじゃない?」と声を掛けられることが増えたという。

 しかし持ち前のサービス精神から、SNSでは大好きなディズニーリゾートではしゃぐ様子などを投稿している千葉。「でも、本当は苦手」と吐露した。

「不特定多数が見ることができるSNSは怖いなって。昔は発信してもその反応が戻ってくるまで時間があったけれど、今は発信した直後から感想が返って来るので、『生きづらい世の中だ』と感じます。ファンクラブの活動に力を入れているのは、この生きづらい日々の中で、僕のことを好きでいてくれる人のことぐらいは、幸せな気持ちにさせたいと思ったからです。

 僕は世界を一変させるような影響力はないけれど、自分の手が届く範囲の人たちを幸せな気持ちにすることはできる。そうやって平和が広がって行けば、ほっこりした社会になるんじゃないかって。僕自身は、僕に向けられた刃については論破できる自信があるけれど、ファンと言う守りたい存在ができたことで、忌憚(きたん)なき意見として受け入れられるようになりました。守りたい存在ができたことで強くなったと思います」

 柔和な雰囲気の中に、男気があふれ出した。「やると決めたことには、全力で。手を抜けば、お客さんにはそれが伝わってしまうから」と気を引き締める。「どんなことにも必ず、くだらないの先がある」と未来を見据えた。

□千葉雄大(ちば・ゆうだい) 1989年3月9日、宮城県出身。戦隊シリーズ『天装戦隊ゴセイジャー』(2010年)の主演に抜擢され役者デビュー。ドラマ『いいね!光源氏くん』シリーズ(NHK総合)、『星降る夜に』(テレビ朝日)。映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(20年)、『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』(21年)などに出演。映画『殿、利息でござる!』では「第40回日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞した。YouTubeでウェブラジオ『千葉雄大のラジオプレイ』を隔週金曜日に配信中。12月にはKAAT神奈川芸術劇場プロデュースの舞台『ジャズ大名』に藤井隆と共に主演する。

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