坂井真紀、『ZIP!』パーソナリティーの不安をほぐしたのは娘の言葉「このときばかりはうれしくなりました」

俳優の坂井真紀が八面六臂の活躍を見せている。ドラマや映画など出演作が続き、7月からは日本テレビの情報番組『ZIP!』(月~金曜午前5時50分)で金曜パーソナリティーに3か月の期間限定で就任。スポーツ好きの一面を見せるなど、新たな魅力を開花した。9月に立つ舞台では、海外の演出家が手がける作品に初挑戦。チャレンジし続ける原動力について、坂井に聞いた。

舞台、映画、番組パーソナリティーなど多方面に活躍する坂井真紀【写真:舛元清香】
舞台、映画、番組パーソナリティーなど多方面に活躍する坂井真紀【写真:舛元清香】

2日から舞台『橋からの眺め」に出演

 俳優の坂井真紀が八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せている。ドラマや映画など出演作が続き、7月からは日本テレビの情報番組『ZIP!』(月~金曜午前5時50分)で金曜パーソナリティーに3か月の期間限定で就任。スポーツ好きの一面を見せるなど、新たな魅力を開花した。9月に立つ舞台では、海外の演出家が手がける作品に初挑戦。チャレンジし続ける原動力について、坂井に聞いた。(取材・文=西村綾乃)

 米国の劇作家アーサー・ミラーが手がけた社会派ドラマ『橋からの眺め』は、ローレンス・オリビエ賞、トニー賞などに輝いた名作。坂井は13年ぶりに舞台出演する伊藤英明(主人公・エディ)の妻・ビアトリスを演じる。

 舞台は米ニューヨークの労働者階級が暮らす波止場。港湾労働者のエディと妻は、幼くして孤児になっためいのキャサリンを大切に育ててきたが、妻を頼り密入国してきたいとこ兄弟との間に恋愛感情が芽生えたことに気付いたエディが、一家を悲劇へと転落させる。

「本作は骨太な人間ドラマ。歴史ある戯曲は色あせることなく面白く、ぜひ演じて見たいと思いつつも、翻訳劇に出るのは今回が初めて、そして海外の演出家(イギリス人のジョー・ヒル=ギビンズ氏)とご一緒するのも初めて。初めての怖さはありましたが、チャレンジしたいという気持ちが、やってみたいという力に変わりました」

 本番を控え稽古真っ最中。「緊張感がある」というギビンズ氏の演出を、どのように感じているのだろうか。

「会話をすることを大切にして下さる方。これまでは感覚的に台本と向き合うことが多かったのですが、ジョーさんは感じたことを言葉にすることを求めます。例えば『役とあなたが似ているところは?』と聞かれます。『子どもがいるところ』『子どもへの母性があること』『人が好きだということ』など、役のことを深く考え口に出すことによって、その人生がより立体的になり、役が向かうべきゴールが見えてくる。対話を重ねることで、共演者が同じ方向を向いているとも思いますし、とてもいい経験だなと感じています」

 2023年は年明けから9月までの間に『春に散る』(瀬々敬久監督)など5作の劇場作品が公開中。ドラマは『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK BSプレミアム)、『だが、情熱はある』(日本テレビ)、『季節のない街』(Disney+)とひっきりなしに出演が続いている。

「私たち俳優は求めていただいて仕事があるので、声を掛けていただけるのはありがたいことです。これからも1つ1つ目の前のことを丁寧にやっていければと思っています」

 離婚後に娘と離れて暮らす母親、病魔に侵され突然車いす生活を余儀なくされる母親、敏腕マネジャーなど役どころはさまざま。その表現力に驚かされる。切り替えはどのようにしていたのだろうか。

「撮影現場に行くと自然にスイッチが切り替わります。同時期にいくつかの撮影に入っていたとしても、『今日は(横浜)流星くんのお母さんだ。明日は(仲野)太賀くんだ』と楽しんでいます(笑)。これまでの経験が自分を助けてくれていますし、与えられた場所に身を任せてできることを全うするという気持ちでいます」

「置かれた場所を大切に」という思いは、16年に89歳で亡くなった渡辺和子さんの『置かれた場所で咲きなさい』という言葉から学んだもの。「育てている子どもにいい背中を見せられるように、子どもが目指す先を照らせるように生きることが私の務め。そのためには、どんな場所でもいい。与えられた場所で満開に咲くことが大切」と力を込めた。

 7月からは日本テレビ系朝の情報番組『ZIP!』夏の金曜パーソナリティーに就任。9月末までの3か月、毎週金曜日の朝の顔として情報を発信している。

「役者として役としてセリフをいただき、カメラの前に立つのではなく、坂井真紀としてカメラの前に立つのはとても難しいこと。私のままで大丈夫なのかなと不安になります。子どもにその気持ちを打ち明けたら、『授業中に手を挙げて自分の意見を話すときは緊張するし、みんなになんて思われるか心配だからママの気持ち分かるよ』って言ってくれたんです。そして、その後に『自分らしくいればいいんじゃない。私もいつも自分にそう言い聞かせてるんだよ』って励ましてくれて。常々、『私は娘にいい背中を見せられているかな』と不安になることばかりですが、このときばかりは、『私の背中も少しは役に立っているかな』とうれしくなりました。子どもから教えてもらうことはたくさんあります。子育ての悩みは尽きませんが、それ以上に楽しいです。これからも自分が置かれた場所で精いっぱいの花を咲かせたいと思っています」

 舞台『橋からの眺め』は9月2日から、24日まで東京芸術劇場プレイハウスで上演。以降、福岡・北九州、広島、京都を巡る。

□坂井真紀(さかい・まき) 1970年5月17日、東京都生まれ。92年に俳優デビュー。映画、ドラマ、舞台、バラエティー番組と幅広く活躍。2023年の主な映画出演作に『銀河鉄道の父』(成島出監督)、『春に散る』(瀬々敬久監督)。10月に『アナログ』(タカハタ秀太監督)が、12月には『MY(K)NIGHT マイ・ナイト』(中川龍太郎監督)が公開待機中。

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